11月8日(金) 8:00
長かったシーズンも残り3試合。いよいよ最後の直線に差し掛かる国内女子ツアーは今週、千葉県で「伊藤園レディス」が開催される。女王争い、シード争いとランキングにも注目が集まるが、青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務める大西翔太氏は、その展開をどう占うのか? 話を聞くと、“惜別”の熱い思いを聞くことができた。
◇
■グリーンは軟らかいけどワナも…
40回目を迎える老舗大会は、今年も1994年から使用される恒例のグレートアイランド倶楽部で開催される。コンディションについて、大西氏は「グリーンが軟らかい。どれだけピンをデッドに狙えるか」と話すだけに、伸ばしあいの展開も想像できる。
ただし、すんなりとはいかない。「OBが近かったり、池があったり、(ティショットを)全部ドライバーで打とうとすると大きなワナも多いです」。ドッグレッグや、タイトなホールも点在するため、「飛ばし屋が有利に働かないコースですね」とも。確かに最近の優勝者を見ると西郷真央(2023年)、山下美夢有(22年)、稲見萌寧(21年)、古江彩佳(20年)と、ツアー屈指のショットメーカーが名を連ねている。
「ちょっと曲がっただけでOBもあります。ショットメーカーに加えパター巧者が上位に来ますね」。大西氏は、今年も例年の流れが引き継がれることを予感。そして「青木瀬令奈さん、菊地絵理香さん、木戸愛さんもショットがいい。ベテランに有利に働くコースでもあります」と付け加える。
■ぜひグレートアイランドへお越しを!
そんななか、ひと際、熱っぽく語ったのが「上田桃子さん」。3日にSNSでツアー休止を発表し、世間を驚かせたが、現時点では残り2試合で20年にわたるツアー生活を一区切りする。
「桃子さんの雄姿が見たいですね。桃子さんの背中を追いかけてプロになった人や、練習をマネしたりする人もいる。残り2試合で優勝する可能性があると思っています。とにかくサムライのような人。優勝が見たいです」。ひとりのゴルフ人として、その門出に花を添えることを願っている。
上田を指導している辻村明志コーチとの話で、試合のなかった先週、これまでと変わらずトレーニングで自らを追い込む様子も伝わってきたという。「練習場でもキレイで力強いドローボールを打っていました。桃子さん一択ですね。そして今週は、他の選手が大きな存在の“上田桃子”にどう挑むのか? そんな雰囲気も見てみたいですね」。期待感は高まるばかりだ。
実際に上田は、今大会で優勝こそないが、過去16度の出場でトップ10入りが8度と好相性ぶりを発揮してきた。さらに同じコースが舞台になった05年の新人戦では、優勝も遂げている。本人も「イメージはいい」と明るい声。そして上田といえば、ツアー屈指のショットメーカーとしても知られる。
大西氏のトーンが下がることはない。「桃子さん以上に、気持ちでゴルフをする人はいません。“ボールに魂を乗せる”と言うと、それはどういうことだと言う人がいるかもしれないし、科学的根拠もないですが、魂を乗せたショットがピンに寄るというシーンを何度も見てきました。そんなショットをぜひ、近くで見てもらいたい。みなさんグレートアイランドに来てください! 後悔しますよ」。今週決まるかもしれない女王争いも過熱するが、それにも勝る“一打入魂”へ、期待を込める。
解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。21年には澁澤莉絵留ともコーチ契約を結んだ。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。