本大会出場チームが32から36に増え、スケールアップした2024-25シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。今週、11月5日、6日(現地時間)の戦いで、6試合から8試合に増加したリーグ戦(リーグフェーズ)の半分の日程が終了した。
16チームで争われる決勝トーナメントにストレートインできるのは上位8チーム。9位から24位までの16チームは、ホーム&アウェーで行なわれるプレーオフに回り、勝った方がベスト16以降を戦う。
1位から36位までの現在の順位は以下のようになった。
1/リバプール(勝ち点12、以下同)、2/スポルティング(10)、3/モナコ(10)、4/スタッド・ブレスト(10)、5/インテル(10)、6/バルセロナ(9)、7/ドルトムント(9)、8/アストン・ビラ(9)、9/アタランタ(8)、10/マンチェスター・シティ(7)、11/ユベントス(7)、12/アーセナル(7)、13/レバークーゼン(7)、14/リール(7)、15/セルティック(7)、16/ディナモ・ザブレブ(7)、17/バイエルン(6)、18/レアル・マドリード(6)、19/ベンフィカ(6)、20/ミラン(6)、21/フェイエノールト(6)、22/クラブ・ブルージュ(6)、23/アトレティコ・マドリード(6)、24/PSV(5)、25/パリ・サンジェルマン(4)、26/スパルタ・プラハ(4)、27/シュツットガルト(4)、28/シャフタール・ドネツク(4)、29/ジローナ(3)、30/ザルツブルク(3)、31/ボローニャ(1)、32/ライプツィヒ(0)、33/シュトルム・グラーツ(0)、34/ヤングボーイズ(0)、35/ツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード、0)、36/スロヴァン・ブラチスラヴァ(0)
第3節、バイエルンに4-1で快勝したバルセロナ photo by Nakashima Daisuke
際立つのは、唯一、4連勝を記録しているリバプールだ。プレミアリーグでも先週、マンチェスター・シティを抜き首位に浮上。欧州サッカーのシーズン序盤を席巻している。
【出遅れたレアル・マドリード】2015-16シーズンから9シーズン監督を務めたユルゲン・クロップから、アルネ・スロットへの監督の引き継ぎ作業がスムーズに行なわれたことがなにより大きい。2018-19シーズンのCLや2019-20シーズンのプレミアリーグで優勝を飾るなど、一時代を築いたクロップ監督の後任となれば、かかるプレッシャーは大変なものだ。だが、成績のみならず、サッカーそのものまでクロップ時代より見栄えのよいものになっている。
ジョゼップ・グアルディオラ的。母国オランダ的でもある。直近の4シーズン、スロット監督はフェイエノールトで采配を振っている。昨季はチームを久方ぶりにCL本大会へと導き、グループリーグで3位の成績を収めていた。決勝トーナメント進出は逃したが、好チーム度が際立つ出色の出来だった。そこに目をつけたのがリバプール。慧眼と言うほかない。
一方で目につくのは、昨季、通算15度目の優勝を飾ったレアル・マドリードの出遅れだ。リールとミランに敗れ、現在2勝2敗。18位に低迷する。キリアン・エムバペを迎え、大会前は大本命に挙げられていた。国内リーグでも、マドリードホームでのクラシコでバルセロナに0-4で大敗。円滑なスタートとはいかなかった。
レアル・マドリードはクリスティアーノ・ロナウド退団後、強チームというより、好チームに変貌を遂げていた。戦力的に見て必ずしも欧州一ではなかったが、しぶとさ、勝負勘、試合運びのうまさで接戦をものにしながら、トーナメントを勝ち上がっていった。
そこにエムバペという超大物が加入した。ヴィニシウス・ジュニオール、昨季加わったジュード・ベリンガムと、スター選手の数は確実に増えている。その分、好チーム度が失われている印象だ。それが行きすぎてしまうと、銀河系軍団と言われたかつてがそうだったように、勝てないサッカーに陥る。今季これから、好チーム度をどこまで回復することができるか。
CLでは次戦、リバプールとアウェーで対戦する。まさにシーズン前半の大一番である。18位に低迷するレアル・マドリードにとって負けられない試合になる。
【低迷期を脱したバルサ】プレーオフに進む24位以内に入るためには、おそらく勝ち点10~11が必要になる。さらにベスト16にストレートインするためには勝ち点16~17が必要になると言われるが、優勝を狙う強者にとって8位以内はマストな成績なのか、24位で十分なのか。つまり、このリーグフェーズにどこまで力を注ぐことが得策なのか。
プレーオフに進出し、そこで勝利すれば問題ないと割りきるならば、マンチェスター・シティ(10位)、アーセナル(12位)、バイエルン(17位)、レアル・マドリードの現在の成績はさして気にならない。CLの優勝はピークを決勝トーナメントの終盤に持っていかないと狙えないとの通例に従えば、現在、リーグフェーズで首位を走るリバプールのほうが危なっかしく見える。いかんせん新レギュレーションで行なわれる最初のシーズンなので、今後の展望は難しいものがある。
ただし、「今季はいける!」と、上昇ムードを感じさせるチームは存在する。第3節でバイエルンにホームで4-1と大勝したバルサだ。2014-15シーズン、ベルリンで行なわれた決勝でユベントスを破って以来、今季で10年が経過する。その間、ベスト4に進んだのはわずかに1度(2018-19シーズン)。2021-22、2022-23シーズンはグループステージ敗退という、過去の栄光からはほど遠い成績が続いている。好チームへとモデルチェンジした宿敵レアル・マドリードと比較すると、凋落ぶりはいっそう鮮明になった。
初優勝した1991-92シーズンから2度目の優勝を飾った2005-06シーズンまでも、間は空いていた。しかし、勝てなかったが、高い好チーム度を誇った。サッカーはいかに面白くて美しくても、勝たなければどうしようもないという勝利至上主義者は、そのサッカーを揶揄したが、その間にバルサファンは世界的に広がっていった。一番応援しているのは地元のクラブだが、2番目はバルサ。世界各地でそんな言い回しを筆者はよく耳にした。勝利至上主義者が多いイタリア人でさえ例外ではなかった。
だが、ここ10年のバルサは違った。勝てないうえに魅力的でなかった。好チーム度の低いサッカーが続いた。かつてを知る者にとっては嘆かわしい、低迷期にあたる。しかし、ハンジ・フリックに監督が代わった今季、その流れに歯止めがかかるのではないかと見る。サッカーはひと味違うものに変身した。スペイン代表的。ひと言で言えばそうなる。
スペイン代表のウイングが右のラミン・ヤマルに対し、左はニコ・ウイリアムズ(アスレティック・ビルバオ)であったのに対し、バルサでは左にラフィーニャが入る。このブラジル代表選手のウイングプレーがバルサの好チーム度を大きく高めている。左右のウイングが固まると、ペドリ、フレンキー・デヨング、ダニ・オルモ、ガビ、フェルミン・ロペスらによる、小技を絡めた変幻自在なパスワークがより際立って見える。CLを戦うバルサには、スペインのユーロ優勝、五輪優勝の流れを感じることができる。レアル・マドリードより断然スペイン的だ。
イングランドもフランスも、ユーロではスペインを止めることができなかった。ユーロ明けのCLではどうなのか。今季はスペイン代表に似たバルサに風が吹いているような気がしてならない。
日本人選手が所属するクラブでは守田英正のスポルティングが2位、南野拓実のモナコが3位と大健闘している。古橋亨梧、前田大然、旗手怜央が所属するセルティック、荻原拓也がスタメンを張るディナモ・ザグレブも15位、16位と善戦している。決勝トーナメントに何人の日本人選手が進出できるか。ケガの上田綺世(フェイエノールト)、冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(バイエルン)に出場機会は訪れるのか。シュツットガルトでスタメンを確保しつつあるチェイス・アンリにも目を凝らしたい。
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