自転車競技を引退しガールズケイリン専念へ梅川風子は「命を削って走った」経験を糧にGⅠ開催「競輪祭」連覇を狙う

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自転車競技を引退しガールズケイリン専念へ梅川風子は「命を削って走った」経験を糧にGⅠ開催「競輪祭」連覇を狙う

11月8日(金) 9:45

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ガールズケイリンへの専念を決断した梅川風子photo by Takahashi Manabu

ガールズケイリンへの専念を決断した梅川風子photo by Takahashi Manabu





【自転車競技引退の心境を吐露】ガールズケイリンのGⅠ開催「第2回競輪祭女子王座戦」が、11月19日(火)から21日(木)にかけて小倉競輪場で行なわれる。

優勝者には年末のガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ」への出場権が与えられるGⅠ開催。昨年は梅川風子(東京・112期)が、自転車競技のナショナルチームとの両立のなかで限られたチャンスを掴みとり、3年ぶりのグランプリへと出場した。

そんな梅川は2024年シーズンに入ってからは特に、パリ五輪出場を目指すため自転車競技に注力。しかしリザーブメンバーとなり本戦への出場は叶わなかった。

それでも悔しさと向き合いながらひたむきに己を磨き続け、9月に行なわれた全日本選手権トラックの女子ケイリンで優勝を果たすと、10月にはデンマークで行なわれた世界選手権のケイリンで決勝に進出。見事5位入着を果たした。そしてこのレースを区切りに自転車競技を引退し、これからはガールズケイリン一本で戦っていくことを決めた。

「ひとつの舞台に向かって注力し続けるのはすごくパワーが必要で、そこに向き合う勇気がなくなってきているという怖さ。(代表選手に)選ばれる、選ばれないというシビアな世界で続けていく大変さ。そして自分の成長の幅。そうした複数の要素があって、どうしても『次のオリンピックまで』という考えに至れなかったので、自転車競技からは引退を決断しました」

引退を決めた心境をそう話した梅川。目標に向かって文字どおり走り続けたここまでを振り返って「やり切ったとは言えない」と悔しさもにじませた。一方で、これからも続く競輪選手としてのキャリアを見据えると、「ひとつの大会(パり五輪)のためにここまで仕上げた経験は初めてで、これから先に生きるいい一年になっているのかな」と前を向いた。



自転車競技からの引退を決断した梅川風子。今後、ガールズケイリン一本で戦っていく

自転車競技からの引退を決断した梅川風子。今後、ガールズケイリン一本で戦っていく





【「死に向かって」走った世界選手権の舞台】梅川の自転車競技生活の集大成とも言える舞台となった世界選手権では、世界トップレベルの争いのなかで、見事に決勝まで勝ち進んだことが自らの成長と課題を同時に感じるかつてない大きな経験値となったと明かす。

「決勝に辿り着くまで、1日でかなりの数のレースを走りますが、ひとつも取りこぼせない、ギリギリすぎる戦いのなかで、自分の成長を感じられました。終わってみてもまだヒリヒリ感が残っているくらいで、本当に最高峰の戦いでした。正直に言えばメダルが欲しかったですが、そこまでの脚(力)がなかった。あそこでひと踏ん張りできるかが、メダルを獲れる人とそうでない人の違いなんだと痛感しましたね」

着順によっては即敗退、しかし勝ち上がればさらにハイレベルなメンバーでの戦いとなる。常に限界以上のパフォーマンスを求められる環境下での戦いでしか味わえない過酷さを、梅川は次のように表現した。

「命がなくなっていくというか、もう『死に向かっているんじゃないかな』というくらいの気持ちでした。今振り返ってみるとあれは充実感とも言えるものだったのかも知れませんし、決してそれが楽しいとは思えないんですが、勝負の世界でそれを感じられるのは幸せなのかなと思うようにしています」

そんな経験を武器に、これからはガールズケイリンを盛り上げていく立場となる梅川。早速の大舞台となる競輪祭を目前に控え、また違ったヒリヒリ感を味わえる舞台だという。

「競輪祭はGⅠになってからは2回目ですが、大会としては長い歴史があって、かなり独特な雰囲気があるので簡単に言うとすごくやりづらいですね。その場でグランプリ(出場権争い)から落ちる人がいれば、その場で、逆転でグランプリが決まる人も出る。それが勝負の世界だなと思うし、グランプリ当落線上の人の気持ちもわかるので、狙いが複雑に絡み合う大勝負になると思います」

昨年はコンディション不良でも強さを発揮し優勝photo by Takahashi Manabu

昨年はコンディション不良でも強さを発揮し優勝photo by Takahashi Manabu





【カギを握る予選順位】昨年の競輪祭では、「ミラクルが起きた」と表現するほどのコンディション不良に悩まされながらの優勝だった。今年はコンディションを整えて臨める状況にあり、現状についても冷静に自己分析できている。

「昨年の自分と比べると一段階成長できているのかなとは思いますが、ガールズケイリンと自転車競技の世界はまた別という感覚も自分のなかにはあって、今はそこをマッチさせている段階です。特にギア比の部分ではギャップがあるので自転車競技の踏み方をするとガールズケイリンでは通用しません。自分が苦手な『軽いギアを回す能力』を磨いていかないといけないと思います」

そして連覇に向けて大きな壁になるのが、ナショナルチームでともに活動した佐藤水菜(神奈川・114期)の存在だ。

佐藤は、梅川も走った世界選手権の女子ケイリンで日本勢として初となる金メダルに輝いただけでなく、パリ五輪の帰国直後に参戦した「女子オールスター競輪」で優勝するなど確かな実力を誇示している。

「今はサトミナ(佐藤水菜)の一強という感じもあるので、彼女をどう倒すかも自分のなかでは大切な争点になってきます。レースは7人で行なうものなので、その時の空気感に合わせた判断力を磨いていく必要があります。競技をやるようになって『勝つことがすべて』と特に思うようになりましたし、負けてよしではなく勝負にこだわったレースをしたいです」

間近でその走りを見続けてきた梅川は、佐藤のずば抜けた強さをはっきりと認めたうえで勝負を挑んでいく。昨年の決勝戦では、ゴール直前で猛然と佐藤を差し切ってみせた梅川。今回はどんな展開になるのだろうか。最後に、連覇を手繰り寄せるためのポイントを聞いた。

「予選の2日間を1着1着で勝ち上がることが大事で、サトミナが同じように勝ち上がると1番車と2番車で並んでスタートできるんです。隣だからと言って後ろが取れる(佐藤の後ろを走れる)とは限りませんが、ギリギリで勝ち上がって車番が外(6番車や7番車など)になってしまうとかなり難しい。そこが初日からのキーポイントになると思います」

残されたガールズグランプリへの直通チケットは、競輪祭優勝者用の1枚のみ。賞金ランキング争い当落線上のメンバーも出場リストに名を連ね、ベストメンバーが揃った感のある今開催。初日からヒリヒリ感あふれるレース展開に期待したい。

【Profile】

梅川風子(うめかわ・ふうこ)

1991年3月1日生まれ、長野県出身。4歳の頃からスケートを始め、スピードスケートの選手として全日本学生スピードスケート選手権500mで優勝を飾る。24歳でスピードスケートを引退して日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)へ入学。26歳でデビューし、翌年にはガールズグランプリに初出場する。2023年11月のGⅠ開催「競輪祭女子王座戦」で優勝してガールズグランプリに出場し2着に。ナショナルチームにも所属し、2024年10月の世界選手権の女子ケイリンで5着となる。同年11月に自転車競技から引退した。

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