『カーリングの神様』公開記念
本田望結インタビュー(前編)
カーリングを題材とした映画『カーリングの神様』(監督:本木克英)が11月8日に全国公開される。それに先立って今回、同作品の主演を務めた本田望結さんに、撮影での苦労話やエピソード、映画の見どころなどをうかがった――。
photo by Fujimaki Goh
――まず今回の映画での主演の話が来た時点で、カーリングというスポーツのことをどの程度認識していたのか、教えてください。
「日本は北米や欧州各国に比べると、スケートリンクが少ないんです。ですから、フィギュアスケート、アイスホッケー、スピードスケート、カーリングなど、多くの競技でひとつの施設を使うので、フィギュア以外で言えば、実はカーリングは一番身近なスポーツでした。フィギュアスケートの練習をしている隣でカーリングの練習が行なわれていたり、カーリングの選手と入れ替わりでリンクを使ったり、小さい頃からそういうのが当たり前でした」
――プレーした経験はあるのでしょうか。
「カーリングは身近に感じていたんですけど、身近すぎたこともあってか、ほとんどやったことはなかったです。ルールなどについても、カーリングをやっている友だちだったり、経験のある方に教えてもらったりして知ってはいましたが、実際にプレーしたのは今回が初めて。(映画の)撮影の際に(ストーンを)投げるとき、放すときの手がどうなっているかなど、細かいところまで教えてもらいました」
――同じ氷上のスポーツとはいえ、フィギュアスケートとはまったく違うと思うのですが、実際にカーリングをやってみての印象はいかがでしたか。
「全然違いました。フィギュアの感覚で(氷の上を)滑ろうとすると、やっぱり転んじゃうんです。まず、カーリングシューズに慣れることがすごく大変でした」
――それでも、作品のなかではスタントなしで、本田さんご自身がカーリングのデリバリーシーンを見事に演じていました。
「自分のなかでしっかり投げられているという手応えがあっても、技術指導のコーチから『さっきのほうがよかった』といったケースもありましたし、逆にコーチから『OK』と言ってもらっても、自分的には練習のときのほうがよかったなと思ったら『もう1回、チャレンジさせてください』と言って、お願いすることもありました。監督とコーチと私、それぞれの『OK』が出ないと次に進めない、厳密なミッションをこなしているような感じです。そういう意味では(撮影の)毎日、毎日が戦いでした」
――その"戦いの現場"は、精神的に厳しくなかったですか。
「もちろん大変な、厳しい現場なのですが、大変であればあるほど、(自分は)やっぱり燃えます」
――「燃える」というのは、本田さんご自身の性格的なものなのでしょうか。
「性格もありますが......。お芝居の現場において、もちろん簡単なものなどないんですけど、それでも自分に課されたミッションがあればあるほど、(それを果たしていくなかで)『生きているな』って感じます」
――映画が公開されると、実際にカーリングのプレー経験がある方、またトッププレーヤーたちも鑑賞されるのではないかと思います。今回のミッションの成果を見られることに、怖さであったり、不安を感じたり、ということはありますか。
「怖いと言えば怖いのですが、私はカーリングの選手のみなさんにこそ、ぜひこの映画をご覧になってほしいと思っています。カーリングの面白い部分はもちろん、難しいところ、悔しいところ、もしかしたらカーリングのことを嫌いになってしまうんじゃないか、っていうような場面もあったりするのですが、本当にリアルな"カーリングの映画"になっていますので。
(カーリングの)経験者や選手のみなさんがどこに共感してくれるのか、どう感じるのか。私たちの(デリバリー)フォームがどうだったか、そんな感想を聞けたらうれしいです」
――リアルなカーリング選手を演じることで、特に意識していたのはどういった部分でしょうか。
「専門的な技術を意識しながらお芝居するのは難しいかもしれない――(撮影に入る)事前にはそんなことも考えたのですが、やってみると"石を投げる"という動きにきちんと集中していれば、自然と真剣な表情になっていました。ひょっとして(フィギュアスケーターでもある)私にとってスポーツの映画は、お芝居しやすいのかもしれない、といったことを感じました」
――チームスポーツのなかでも、特に4選手の連携が重要なカーリングですが、本田さんはチームの司令塔である清水香澄役を演じました。
「彼女のポジションはスキップで、一応チームのリーダー的な立場ではあるのですが、あまりリーダー感を出したくなかったんです。誰かに引っ張ってもらう場面もありますし、ほかのチームメイトの意見にも耳を傾ける役割もありました。どこでも輝ける女の子にしたかったので、"リーダー感"はあまり出さないように、というのはすごく意識していました」
――確かに自らが先頭に立って「私がチームを強くする!」というよりも、チームメイトをケアしたり、相手チームの選手に声をかけたり、バランサー的な存在でした。本田さんご自身と、今回のキャラクターと似ている感じだったのでしょうか。
「どうなんでしょう......。私の場合はどちらかと言うと、スポーツの会場に入ると、勝ちたい気持ちや引っ張っていきたい気持ちが強くて、どうしてもリーダー感が出てしまうかもしれません。だから今回は、自分に毎回『落ち着こう、落ち着こう』と言い聞かせて、強い感情を抑えることを意識していました」
――カーリングの試合ではスキップがあらゆる情報を集め、二手、三手先を読んで作戦を決定します。本田さんが実際にカーリングの選手として試合をするとしたら、そのポジションが合っていると思いますか。
「スキップとして何カ月か過ごしてきたので、スキップの役割を知ることはできました。ただ、自分が香澄のようにプレーできるかどうかは、ちょっとわからないです」
(つづく)◆本田望結が明かす、主演映画『カーリングの神様』の舞台裏>>
本田望結(ほんだ・みゆ)
2004年6月1日生まれ。京都府出身。3歳から芸能活動を始め、ドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ)への出演が話題になり、その後、数多くの映画、ドラマに出演。近年の出演作はドラマ『らんまん』(NHK)、映画『きさらぎ駅』、『それいけ!ゲートボールさくら組』など。フィギュアスケーターとしても活躍中。
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