「いままでと違う綾瀬はるか」ファンの声と共に探る不思議なロードムービー『ルート29』に惹かれる理由

綾瀬はるか主演の不思議なロードムービー『ルート29』の魅力をひも解く/[c]2024「ルート29」製作委員会

「いままでと違う綾瀬はるか」ファンの声と共に探る不思議なロードムービー『ルート29』に惹かれる理由

11月7日(木) 12:30

長編デビュー作『こちらあみ子』(22)で第27回新藤兼人賞金賞を受賞した森井勇佑監督が、詩人、中尾太一の詩集「ルート29、解放」にインスピレーションを受けて手掛けた『ルート29』(11月8日公開)。姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を舞台にしたロードムービーで、主演に綾瀬はるかを迎え、彼女と旅をする少女を『こちらあみ子』の大沢一菜が演じる。旅先で様々な人と出会い、絆を深めていく2人の物語を描く本作の試写会をMOVIE WALKER PRESSが公開に先駆けて実施。参加者へ行ったアンケートには、「不思議だった」や「癒された」、「旅に出たくなった」という感想が集まった。印象的なコメントと共にその要因をひも解きたい。
【写真を見る】綾瀬はるかの新境地!表情変化に乏しく、他人と関わらずに生きる孤独な主人公、のり子を演じる

■孤独に生きてきた女性が他人の娘を捜して旅を始める

鳥取で清掃員として働くのり子(綾瀬)は、他者と必要以上のコミュニケーションを取ることをしない。ある日、仕事で訪れた病院で、入院患者の理映子(市川実日子)から「姫路にいる私の娘をここに連れてきてほしい」と頼まれる。彼女はその依頼を受け入れ、会社のワゴン車を盗み単身で姫路へ向かう。渡されていた写真を頼りに見つけた目的の少女ハル(大沢)は、林の中で秘密基地を作って遊ぶ風変わりな子どもだった。初対面ののり子の顔を見て、「トンボ」というあだ名をつけるハル。車に乗り込み、国道29号線を走りながら鳥取へ向かう2人の旅路には、2匹の犬を連れた赤い服の女、ひっくり返った車の中に座っているおじいさん、「人間社会から逃れるために旅をしている」と語る父子、久しぶりに会った姉など、不思議な人たちだった。

ハルを捜して旅を始めたのり子

■「ファンだけど初めて見た気分」物語に感動した綾瀬はるかが見せる新境地

主演の綾瀬は本作のオファーを受けるまで、映画やドラマの撮影が1年間ぐらい空いている時期だった。そこへ飛び込んで来たのが、『ルート29』。「次の作品は縁を感じるものに」と考えており、脚本を読んで、もともと『こちらあみ子』のファンであみ子を演じた大沢に会ってみたいという思いから出演を決意した。

綾瀬といえば、『海街diary』(15)に『レジェンド&バタフライ』(23)、『リボルバー・リリー』(23)、ドラマ「義母と娘のブルース」、「奥様は、取り扱い注意」とヒューマンドラマからアクション、コメディとジャンルを問わずに活躍してきた国民的な人気俳優。そんな彼女が本作では、清掃服と大きな丸フレームの眼鏡を着用し、表情の変化に乏しく、他人とも必要以上に関わらずに生きてきた孤独な主人公、のり子という新境地に挑んでいる。本作を鑑賞した人たちからも、特に綾瀬の演技が印象的だったという声がいくつも上がっていた。

「綾瀬はるかさんは、凍っていたのり子の心が溶けていくのをとてもうまく演じていたと思います。のり子が白色からピンク色になるように見えました」(60代・女性)
「いままでと違う綾瀬はるかさんが見られてよかった!彼女の新しい一面が楽しめる作品です」(40代・女性)
「綾瀬はるかさんのファンだけど、綾瀬はるかさんを初めて見た気分」(60代・女性)
「綾瀬はるかは『無』の演技をさせたら一番かもしれないと思った」(30代・男性)
「のり子がなにを考えていて、次になにをするのかまったく想像できなくて印象に残りました」(60代・女性)

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■「『こちらあみ子』を観た人全員に勧めたい」大沢一菜がまとう自由な空気感

のり子と一緒に旅をするハル役には、『こちらあみ子』でスクリーンデビューを飾り、純粋すぎるがゆえにその言動が周囲の人々を混乱させてしまうあみ子役を好演した大沢をキャスティング。本作でもなにものにも縛られない自由な空気をまとい、印象的な眼差しで思わず観る側がドキッとしてしまうキャラクターを体現する。

「『こちらあみ子』を観た人全員に勧めたいです。大沢一菜さんがさらにすごくなっているから」(30代・男性)
「大沢一菜さんと(ひっくり返った車に乗っていたおじいさん役の)大西力さんの求心力がすごくて驚きました」(40代・女性)
「大沢一菜さんの前の作品が気になるので、『こちらあみ子』もすぐ観ます!」(50代・女性)
「ハルちゃんは自然体ですごく映画の雰囲気に合っていました。のり子はハルに出会って、徐々に感情が出てきて、表情も豊かになった気がして微笑ましく思いました」(30代・女性)

『こちらあみ子』で大勢に強い印象を残した大沢一菜がハルを演じる

綾瀬と大沢に加え、ハルの母親役で市川実日子、犬を連れた赤い服の婦人役で伊佐山ひろ子、息子を連れて森を旅している父親役で高良健吾、国道29号線にある小学校で教師をしているのり子の姉役で河井青葉、時計屋のおばあさん役で渡辺美佐子と個性あふれる実力派キャストが集結。「お姉さんの長台詞のシーンは圧巻でした」(50代・女性)、「外の顔と妹であるのり子に見せる顔が違って、抱えているものがちょっと深刻で、姉も孤独なんだなと感じた」(20代・女性)といったコメントから、のり子、ハルを取り巻く人たちもまた心惹かれるキャラクターだったことが伺える。

2匹の犬を連れた赤い服の女を車に乗せるが

■「原風景のような不思議な世界を体験」ノスタルジックな気分に浸れるのり子とハルの旅路

物語の舞台となる国道29号線は、山陽地方と山陰地方を縦につなぐ“陰陽連絡”の重要な街道で、兵庫県姫路市から鳥取県鳥取市まで総延長118.6kmの美しい道が続く。撮影は2023年7月下旬から約1か月間、オールロケによって敢行されている。劇中には、姫路城のお堀、のり子とハルが立ち寄るドライブイン、いくつものトンネル、緑深い森に神秘的な音水湖、そして鳥取砂丘と日本の原風景が映しだされ、どこかノスタルジックな気分に浸らせてくれる。このような自然の数々、地方都市の街並みが心に響いたという声も多い。

「森に光りが差し込むところで自分もそこにいるような感覚になったり、雨のシーンで自然のすばらしさや怖さを感じました。映画に出てきたような山奥、大きな木、川、湖のあるところに出かけたくなりました」(50代・女性)
「いい意味で日本らしくない、でもみんな知っている原風景のような不思議な世界を体験できて、鳥取ってすてきだと思いました」(50代・女性)
「2人が山奥の、谷間の道を歩くシーンの絵が美しすぎてびっくりした。現実的なファンタジーを見た」(30代・男性)
「知らない人と行ったことのないところに行ってみたくなった。国道29号線を歩いてみたくなったし、きっと旅に出たくなるから、旅や自然が好きな友だちにこの映画を勧めたい」(30代・女性)
「故郷を思いだす風景が出てくるので、観てよかったと思える作品でした」(20代・女性)

また、「鳥取や姫路は行ったことがないので、行きたくなりました」(60代・女性)や「家族や友人と旅に出たくなりました。旅のなかでいままで知らなかった部分も発見できると思います」(30代・女性)、「過去の自分と記憶から抜け落ちている、なんでもない場所を旅したくなった。いまの自分がなにを思うのかが楽しみだから」(30代・男性)といったコメントも見られ、本作をきっかけに「旅がしたい」、「どこかへ出かけたい」という思いに駆られた人も多いようだ。

ひっくり返った車の中で座っているおじいさん

■「素直な心に触れると心の扉って開いていくんだ」のり子とハルの心の機微を繊細に表現

のり子やハルたちは、いまの日本の社会ではどこか異質な存在としてみなされるかもしれない。一方で、それぞれが悩みや葛藤を持ち、時に生き方を変えてみようとする姿が観客になにか気づきのようなものを与えてくれる。そのような繊細な心の機微を捉える作風は、森井監督ならではとも言える。

「世の中の人が実はみんな少数派なんだ、みたいなところにスポットを当てる、すばらしい監督だと思います」(60代・女性)
「俳優の表情や演技だけでなく、風景や音楽で演出されているのがよかった」(20代・女性)
「ここはこう動くだろうと予想した動きが全部逆に行っていて、蔦を絡ませた植物の蔦をかき分けて素の状態にしたような感じがよかった」(30代・男性)
「『こちらあみ子』に通ずる生命力を感じる演出がすごく好きでした」(30代・男性)

ハルと交流する時計屋のおばあさん

クライマックスに登場する鳥取砂丘では、のり子とハルが並んで座り、海を眺めながらこの旅を通して得られた人とつながることの大切さを確かめ合う。このシーンに言及する感想も数多く見られた。

「最後の砂丘で2人が会話するシーンで、すっかり打ち解け合い、心を許したとわかり、涙が止まりませんでした」(60代・女性)
「自分の幼少時代を思いだしました。人とつながることがすてきだなと思えました」(30代・男性)
「素直な心に触れると心の扉って開いていくんだと思った」(20代・女性)
「セリフを最小限にすることで、間や表情によって心情を描いていると思った」(40代・男性)

クライマックスに登場する鳥取砂丘が印象的

■「自分の見えている世界の外にもたくさん世界がある」神秘的でファンタジーのような趣も

ハルをはじめ、旅路で次々と現れる人たちは誰もが不思議な空気感を放っており、ある意味では、生きている人ではない?この世のものではない?といった感覚にさせられる。また、車を盗まれたのり子とハルがさまよい歩く森林、カヌーに乗って進む湖はどこか神秘的で現実を描いたロードムービーでありながらファンタジーのような趣もある。そんな世界観も本作の魅力となっている。

「不思議だけど、なぜかほっこりして泣ける映画です。息子や友人に、『いつもは会えない誰かに会いたくなる作品だよ』と、おすすめしたいです」(60代・女性)
「とても不思議で絵画的。静かなのに、次になにが起こるのかというワクワクが止まらなかった。現実なのか夢なのか、わからなくなる心地よさ」(30代・女性)
「子どものころに見ていた視界(だんご虫とか、空想の世界とか)を思いだしました」(20代・女性)
「川のせせらぎ、森のささやき。主人公が森を、道を、土を踏みしめる音。主人公が立ち止まると、私も一緒に立ち止まる、そういう印象の、音のする作品でした」(30代・女性)
「終始、不思議な印象でした。初めての体験でした。詩が原作ということで、とても興味が湧きました。読んでみます」(30代・女性)
「普段の生活や自分の見えている世界の外にもたくさん世界があることを感じられる」(20代・女性)
「最初はすごく不思議でした。ただ、忘れかけている自分の感覚を信じて進めと言われている気がしました」(50代・女性)

カヌーに乗って湖を渡る

綾瀬はるかの新境地に大沢一菜の唯一無二の存在感、原作の世界を見事に表現したノスタルジックでせつない、不思議な味わいのロードムービーとなった『ルート29』。日々の喧騒のなかで生きづらさを抱え、他者との関係に疑問を感じているならば、本作から生きることの気づきが得られるかもしれない。

構成・文/平尾嘉浩


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