チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第4節。11月5日(現地時間)に行なわれた試合には、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央(以上セルティック)、荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)、守田英正(スポルティング)と、5人の日本人選手が先発出場した。南野拓実(モナコ)はボローニャ戦の後半26分から途中出場。遠藤航(リバプール)には出場機会がなかった。
セルティックはホームでライプツィヒと対戦。3-1で勝利を飾り、旗手は3点目のゴールを決めた。右からアリスター・ジョンストン(カナダ代表)が送り込んだマイナスの折り返しをゴール前に走り込みプッシュ。CLで日本人15人目の得点者としてその名を刻むことになった。
ディナモ・ザグレブはアウェーでスロヴァン・ブラティスラヴァと対戦。4-1で逆転勝利を収めた。前節に続いて先発を飾った荻原は後半30分までプレー。この日はウイングバックではなく4バックの左SBとして、頻繁にボールに絡んでいた。採点するなら7点台は十分に出せる出来映えだった。
そしてこの日、最も世を驚かせたチームは、マンチェスター・シティをホームに迎えたスポルティングだった。結果は4-1。一昨季のCL覇者に対し、大逆転勝利を飾った。
マンチェスター・シティ戦に先発、後半30分までプレーした守田英正(スポルティング)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA
スポルティングの失点は開始早々の4分。GKフランコ・イスラエル(ウルグアイ代表)が、守田にボールを預けた瞬間だった。守田のポジションは5-2-3の2。マイボールに転じると最終ラインに下がり、4バックの一角のように構えながら、ビルドアップの中心としてボールを操作する。
この時もそうだった。スポルティングの攻撃が守田を起点に始まろうとしていた。その出鼻をマンチェスター・シティのMF、フィル・フォーデン(イングランド代表)に狙われた。身体を寄せられ、ボールを奪われ、そのまま先制ゴールを蹴り込まれた。
ビックリするような凡プレーだった。開始直後ということで、身体がほぐれていなかったのだろうか。フォーデンが寄せてきたことさえ、守田は気づけずにいた。この時点で、4-1という最終スコアを予想することはまったくできなかった。
【マンチェスター・シティに出た綻び】
マンチェスター・シティはその後も、遠慮なく攻勢を仕掛ける。ボールを支配してスポルティングゴールに迫った。前半30分、フォーデンの左からの折り返しをアーリング・ハーランド(ノルウェー代表)がボレーで枠内に飛ばせば、前半36分にはMFベルナルド・シウバ(ポルトガル代表)が左足で際どいシュートを放っていた。
その一方でスポルティングも前半8分、1トップのビクトル・ギェケレシュ(スウェーデン代表)が、相手GKエデルソンと1対1になるチャンスを掴んでいた。ループシュートはやすやすとキャッチされたが、そのボールをグイグイと運ぶ力は圧巻だった。
知名度で勝るのはノルウェー代表の1トップ(ハーランド)だが、隣国スウェーデン代表のCFギェケレシュも負けてはいなかった。前半38分には、欧州のビッグクラブにアピールするようなビッグプレーを再び見せつけることになった。
17歳の右ウイングバック、ジオバニー・クエンダ(ポルトガル代表)の縦パスを受けると、マークに来た19歳の相手CB、ジャフマイ・シンプソン・ピュゼー(イングランド)の圧力をはね除けるような力強いアクションから、試合を振り出しに戻す同点弾を決めたのだった。
4-3-3を敷くマンチェスター・シティは、相手ボールに転じると、右SBの19歳、リコ・ルイス(イングランド代表)が中盤に上がる3-4-3に変化する。ジョゼップ・グアルディオラがバルサ監督時代にたびたび使用した、中盤ダイヤモンド型の3バックだ。
この布陣を用いてアヤックス監督時代、欧州一に輝いたルイス・ファン・ハールは、「あらゆる布陣のなかで、最もパスコースが多い布陣だ」と筆者がインタビューした際、力説したものだ。日本代表の森保式のように、3バックは8割方守備的サッカーで締められるが、このアヤックススタイルは例外に属する。むしろあらゆる布陣のなかで最も攻撃的と言ってもいいくらいだ。
対するスポルティングは5-2-3ながら、3FWは「1トップ、2シャドー」というより「1トップ、2ウイング」に近い並びだ。サイドアタッカーを両サイドに各ふたりずつを擁する5バック。前半の前半は、マイボールに転じると中盤ダイヤモンド型を敷くマンチェスター・シティの攻勢が目立ったが、ほどなくすると形勢に変化が起きた。
マンチェスター・シティがボールを失った時、右SBリコ・ルイスが戻りきれないので、その最終ラインの枚数は3となる。これに対し、1トップ両ウイングで構成されるスポルティングのアタッカーも3人だ。それぞれは1対1の関係にある。
なかでも注目すべきは中央のギェケレシュ対マヌエル・アカンジ(スイス代表)の関係だった。アカンジが悪かったと言うより、ギェケレシェがよかった。すると、その関係が心配になるのだろう、その両側に位置するシンプソン・ピュゼーとヨシュコ・グバルディオル(クロアチア代表)の間隔は狭まった。マンチェスター・シティは5バックにはならないので、左右には広大なスペースが生まれることになる。そこに綻びが出た。
マンチェスター・シティは後半、3点を献上。ハーランドのPK失敗なども手伝い、得点は開始直後、守田のミスで得たフォーデンのゴールだけに終わった。
守田は後半30分に、ダニエル・ブラガンサ(元U-21ポルトガル代表)と交代でピッチをあとにした。失点を献上したシーン以外はそつなくプレーしたが、CL第2節のPSV戦で披露したようなゲームメーカー然とした冴えたパスは拝めずじまい。目をひくプレーはなかった。採点をするならば6には届かず。大逆転勝利から、ひとり蚊帳の外という印象だった。
スポルティングのルベン・アモリム監督は、CLではこの試合を最後にチームを去り、マンチェスター・ユナイテッドの監督に就くことが決まっている。マンチェスター・シティに対する今回の勝利は、その挨拶代わりと言えそうである。
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