歩くだけで体幹と足裏を鍛える「ベアフットシューズ」3選。靴を“ハダシ”に近づける

ナイキ「フリーランNN」。1万1330円。写真は公式HPより

歩くだけで体幹と足裏を鍛える「ベアフットシューズ」3選。靴を“ハダシ”に近づける

11月6日(水) 15:53

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こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。

薄底ベアフットがケガを防ぐ秘密

自然に体を鍛えるための靴「ベアフットシューズ」をご存じでしょうか?靴底は最小限の薄さしかなく、裸足に限りなく近い状態で、地面からの衝撃を体全体で吸収することで、体幹が自ずと鍛えられてケガが減ると言われています。地面がつかみやすく、体のコントロールが効くことは、地下足袋を連想するとよくわかるはず。その昔、東京タワーを建てたとび職の方たちが、命綱もなしにひょいひょい数100メートルの高さの上で作業をして、外国人の方たちの度肝を抜いたそうです。足裏の神経や筋肉、全身の体幹のバランス感がなければ、到底不可能な技術です。こうしたいわば「裸足の力」を呼び覚ますための靴が「ベアフット(裸足)シューズ」というわけです。健康意識への高まりからにブームが静かに再燃しています。

アスリートをはじめ、ケガに悩まされている方はぜひ知っておいてもらいたい靴です。最近は、HOKAのように厚底で究極のクッションを使って膝を守るという考え方が流行っていますが、ベアフットシューズはその対極で「攻め」に特化したスタイルと言えます。

ベアフットの元祖は20年続くナイキ「フリー」

ベアフットシューズを語るうえで欠かせないのが、ナイキの「フリー」シリーズ。ハイテクの最先端のナイキが20年以上もつくり続けているシリーズです。

底の厚みはほとんどなく、エアが入っているわけでもありません。まさにスパルタ。こちらは開発当初の設計図ですが、足の動きをこれでもかと研究しています。

さわると底がグネグネと自由自在に動きます。靴というよりは、ソックスに薄い底がついているという表現が近いでしょう。ナイキも開発当初は製品化を考えていなかった、とのちに発表しています。もともとナイキはマラソン選手のスポンサーとして、当時ケニアをはじめとするアフリカ勢を育てていたのですが、まずケガが極端に少ないことに驚きます。選手をスカウトし、アメリカでランニングシューズを履いてトレーニングしても、練習後のクールダウンには靴を脱いでしまうという事実を無視できなかったナイキが、うっすら「そんなバカな」と思いつつも出来上がったのが「フリー」シリーズなのです。

履いたときの第一印象は「心もとない」です。本当にこれで歩いていいんだろうかとやや不安になります。アッパーと呼ばれる足を覆う部分も、カカトの芯も入っておらず、甲もピタピタでまるでボクシングシューズかマリンシューズを履いているかのような感触です。

「フリー」を履くと、はじめの数日は筋肉痛を起こします。指先から体幹まで、普段使わない筋肉を強制的に使う好転反応です。フリーは20年以上の歴史があるとは言っても、実はいい意味でほとんど進化はしていません。裸足に近ければそれで良いのでアップデートの必要がないのです。

靴底メーカーの底力。ビブラムの5本指シューズ

一目瞭然、これが究極のベアフットシューズです。マリンシューズではなく、れっきとしたガチンコのランニングシューズです。ビブラムといえば靴の底材を連想しますが、底材メーカーだからこそ実現できたのがファイブフィンガーズ。こちらも「5本指ソックス」に最低限の厚みがついているモデル。しかしそこはさすがのビブラム社なので、これで走ってもアスファルトでもオフロードでも、足裏にケガをさせません。実際皇居ランナーの方や河川敷でもこのシリーズで走っている方は見かけます。ただの奇をてらったアイデア商品ではなく、シリーズが始まったのは2004年。以来ずっと売れている、ビブラム社の看板商品です。

ナイキとはまたちがった着眼点で、人類は裸足で生活してきたんだから裸足の方がラクでしょ?というあっけらかんとした着想。個人的に好きです。しかしデータをとってみれば足の前方からつま先にパワーがきちんと連動することがわかり、今ではジムの筋トレで使う方も増えてきています。

ランからジムへ進化。ニューバランス「ミニマス」

ニューバランスも2011年から地味にベアフットシューズをつくり続けています。「ミニマス」シリーズは一時期はランニング専用でしたが、ふんばり力により注力してできたのがジム用のトレーニングシューズです。ニューバランスはおしゃれ履きのイメージが強いのですが、実はアメリカ軍の正式なトレーニングシューズのメーカーとしても指定されています。貴重な人材にケガはさせたくありませんし、実際アメリカ軍の2012年の調査では裸足よりもトレーニングシューズを履いたほうがケガは3倍以上多かった、というデータがあるほど。このモデルも底は極限まで薄く、カカトとつま先の落差もほぼありません。自然にアキレス腱も伸び、体全体のエネルギーロスがなく、パワーは出しつつもケガは防ぐのがコンセプトです。

ランニングシューズやトレーニングシューズはまさにテクノロジーの結晶なのですが、行き着いた先が「裸足」というのは興味深い結果です。しかもけっしてアイデア商品ではなく、どのブランドもまず事実を直視し「ケガを防ぐためには裸足が一番」という結論にたどりついたことが重要です。日本人も「はだしにワラジ」の期間が千数百年と圧倒的に長く、歩行距離も現代人の数倍がザラでした。ファッションとは対極の存在ですが、ストイックにウォーキングやトレーニングに振り切るなら、ベアフットシューズは欠かせない存在です。

【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」

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