幕張メッセで開催されたジャパンモビリティショービズウィーク2024
ジャパンモビリティショービズウィーク2024で見つけた珠玉にも程がある10台のやりすぎカーを勝手にカウントダウン!足を棒にして現地を徹底取材したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する!
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■牛の糞尿や藻でクルマが走る!?
渡辺
10月15~18日、幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された自工会(日本自動車工業会)主催のジャパンモビリティショービズウィーク2024に行ってきました。昨年のジャパンモビリティショー2023は一般ユーザーが対象でしたが、今年はビジネスイベントとして開催されました。
――どういうイベントなの?
渡辺
自動車産業、スタートアップ(新興企業)、異業種の交流を活発化させるのが狙いです。事実、会場には広い商談スペースが!
――参加企業の規模は?
渡辺
自工会によると、203の企業・団体が出展したそうです。今回は地球温暖化を抑える脱炭素に向けた取り組みを積極的に示していました。
【第1位】スズキワゴンR CBG車スズキは、すでにインドで販売している牛の糞尿で走るワゴンRを出展。ニッポンでもこの手のクルマの実証実験を計画中とか
――というわけで、渡辺さんが現地を駆け回り見つけてきた珠玉のやりすぎ脱炭素カー10台を発表します。それでは1位からお願いします!
渡辺
スズキのワゴンR CBG(圧縮バイオメタンガス)車です。牛の糞尿から精製された燃料を使って走ります。
――牛の糞尿!
渡辺
スズキ車が多く販売されるインドでは、大量の牛が飼育されている。その糞尿は、温室効果が二酸化炭素の28倍とされるメタンガスを含んでいます。そこで糞尿からバイオメタンガスを発生させ、精製してクルマの燃料に利用することで、メタンガスが大気に放出されるのを防ぐ。
牛の糞尿から精製したバイオメタンガスをタンクに充填。このワゴンRはインド仕様
――いくらバイオガスでも、内燃機関のエンジンを搭載して燃焼させれば、二酸化炭素は発生しますよね?
渡辺
ご存じのように牛のエサは牧草です。この牧草は光合成により二酸化炭素を吸収して育つ。つまり、牛の糞尿からバイオガスを作れば相殺となり脱炭素につながる。
――糞尿から作った燃料で、どの程度の距離を走れるの?
渡辺
スズキによると、10頭の牛が排泄する1日の糞尿で、クルマ1台が1日走るそうです。これまで無用の長物だった牛の糞尿から燃料を作りクルマを走らせる技術や発想は脱炭素カーの第1位にふさわしいと思います!
【第2位】三菱ふそうトラック・バスeキャンター センサーコレクトこのEVトラックは外で作業中のドライバーを認識し、無人で追尾する機能を備える。もちろん、周辺の障害物や歩行者なども検知!!
――続いて第2位は?
渡辺
三菱ふそうトラック・バスによるeキャンター センサーコレクトです。
――どんなクルマ?
渡辺
三菱ふそうトラック・バスは、すでにEVトラックのeキャンターを市販していますが、冷凍車、ダンプカーと併せ、実はゴミ収集車も用意しています。
今回展示されたeキャンター センサーコレクトは、eキャンターのゴミ収集車に、自動追尾システムを装着したモデルで、ゴミの収集中はドライバーが運転する必要がありません。
――要するに無人走行が可能な自動運転車であると?
渡辺
そうです。ゴミ収集車に誰も乗っていなくても、作業する作業員を徐行しながらクルマが自動追尾します。つまり、作業中に乗り降りする手間が省けるわけです。
カメラ、超音波センサーなども搭載するハイテク車。デザインもカッケー
――どう追尾を可能にした?
渡辺
一般的な自動運転技術と同様に、高精度GPS、360度カメラ、超音波センサーなどを使って安全で正確な追尾を実現しました。
――実用化のめどは?
渡辺
すでに神奈川県川崎市でゴミ収集作業に伴う実証実験を行なっています。自動運転には、車内で映画を楽しんでいる間に目的地まで移動できるようなイメージもありますが、本来の目的は安全性の向上や人手不足の解消などですから、このクルマは最適解だと思います。
加えてeキャンター センサーコレクトはEVなので、走行中は排出ガスを発生させずノイズも小さい。住宅街でゴミ収集を行なうクルマとしての機能も備えている。ゴミ収集車の課題を合理的に解決したクルマといえるでしょう。
【第3位】マツダCX-80バイオフューエル次世代バイオディーゼル燃料を使用して走ることが可能。早く公道試乗してみたいぞ!!
――そして第3位は?
渡辺
マツダCX-80バイオフューエルです。このクルマの特徴は、〝藻〟から作ったバイオ燃料を使用します。具体的には藻を培養して分離回収させ、精製・改質によりバイオ燃料に。藻は育つ段階で二酸化炭素を吸収するため、そこから生まれた燃料を燃焼させても相殺となり温室効果は生じません。
――藻から取れる燃料の量は?
渡辺
開発者いわく、「2tの藻から精製できる燃料は約200㏄」とのこと。
――実用化するには大量の藻が必要ですね?
渡辺
その点を開発者に質問すると、「輸入に頼らず、日本で燃料を作れる地産地消の価値に注目してほしい」と述べていました。確かに太陽光と二酸化炭素さえあれば藻はできる。しかも、藻由来のバイオ燃料は融通が利く。
例えばバイオ燃料20%、軽油80%といった比率で混ぜて使用できる。この藻に由来したバイオ燃料は、日本で作り消費できる有望な燃料だと思ます。車両価格もディーゼル車と同等なのもいい。
■EVバイクにバギーも登場!
【第4位】いすゞ自動車・UDトラックス エルガEVEV化により国内初となる車内の段差をなくし、床をフルフラット化。高齢者や体の不自由な人に配慮した設計になっている
――第4位は?
渡辺
いすゞのエルガEVです。全長が10m超、全幅も約2.5mに達する巨漢ですが、国内大手初のEVバスです。
――エルガEVの特徴は?
渡辺
EVのメカニズムをボディの後部に搭載するため、床が低く乗降性や居住性を向上させました。床が平らで車内の移動もしやすい。ちなみにフル充電で走行できる距離は開発者いわく「平均150㎞程度」とのこと。街中を中心にした走行距離の少ない路線であれば問題ありません。
【第5位】ホンダCR-V e:FCEV今年7月19日に発売開始。価格は809万4900円でリース販売のみ。ボディサイズは全長4805㎜×全幅1865㎜×全高1690㎜
――第5位はホンダ!
渡辺
CR-V e:FCEVです。水素充填と併せて充電、つまりプラグインハイブリッドのような機能を備えています。水素を充填する水素ステーションは給油所に比べると圧倒的に少ないため、日常的には自宅で充電した電気で走り、遠出だけ水素を使うイメージですね。
――走行距離は?
渡辺
1回の水素充填に要する時間は約3分で約621㎞。加えて、フル充電で走行できる距離は約61㎞です。
【第6位】三菱アウトランダーPHEV三菱は10月31日発売の新型を展示。この2025年モデルはEVの走行距離が100㎞超に磨き抜かれ、内外装の質感も大幅にアップ
――第6位は三菱です。
渡辺
今年10月のマイナーチェンジで性能を向上させたアウトランダーPHEVを選びました。前後に搭載するモーターの最高出力を20%向上させ、サスペンションやタイヤの変更もあり、従来以上に安定して良く曲がるSUVに進化。1回の充電で走行できる距離も83㎞から106㎞に。ただ、そのぶん価格も高く、一番安いグレードでも520万円以上ですが......。
【第7位】カワサキニンジャ e-1今年1月に発売。区分的には第二種原付モデル。気になるお値段は106万7000円。関係者によると走りは110㏄のスクーターと同等とか
展示場では着脱式バッテリーの乗せ換えを実演。バッテリーの交換時間は1分程度
――第7位はバイク!
渡辺
カワサキのニンジャe-1です。一般的に電気で走るモーターサイクルはスクーターを連想しますが、ニンジャ e-1は珍しいフルカウル付きモデルなので、単純にカッコいい!
【第8位】ダイハツユニフォーム トラックボディサイズは全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1885㎜とコンパクト。デザインも秀逸で、マジでこのまま発売してほしい!!
――第8位はダイハツです。
渡辺
ユニフォーム トラックは軽自動車サイズの商用EVで、近未来感抜群!
【第9位】ヤマハ発動機ディアパソン C580ヤマハが研究開発を進めるふたり乗りのEVバギー。ヤマハによると畑や不整地などでの活用を視野に入れているという
――第9位はどれです?
渡辺
ヤマハ発動機のディアパソン C580です。バギー風のEVで、ホンダの着脱式「モバイルパワーパックe:」を搭載して走ります。ディアパソンC580のような車両は農場などで使われますが、給油へ行くのが面倒です。その点で着脱式バッテリーパックで走行できるのはメリットが大きいと思いますね。
【第10位】ICOMAタタメルバイク手前が折り畳んだ状態。奥が第2形態の走行モード。分類的には原付一種。自宅のコンセントからも充電可能というから激熱!!
――第10位に選んだのは?
渡辺
ICOMAのタタメルバイクです。いわゆるEVバイクですが、畳むと全長69㎝×全幅26㎝×全高69㎝になる。重量は63㎏ですから、クルマの荷室に積んで出かけることも可能なので、目的地でゆったりツーリングを楽しむなんて遊び方も!
■トヨタ「持ち運べる水素」がマジで超スゲェー!!
トヨタが展示し、来場者の注目を集めていたのが、人の手で簡単に水素を持ち運べるよう小型&軽量化された「ポータブル水素カートリッジ」。
カートリッジの重量は約8.5㎏。実際に手にしてみたが、「重っ」という声は漏れなかった。ちなみに専用の装置を使用すれば発電や、水素ガスを使用した調理も可能。すでに量産化も視野にあるというから注目だ!!
トヨタが展示したポータブル水素カートリッジ。ありとあらゆる可能性を秘めた逸品
撮影/山本佳吾
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