11月6日(水) 10:00
ゴルフはスコアを競うスポーツ。でも、「ゴルフの醍醐味は?」との問いには、多くのゴルファーが「飛距離」と答えます。プロのように300ヤードとはいきませんが、自分の打ったボールが空に向かって飛んでいくのは、本当に気持ちのいいものです。その一方で、初心者の中には、「ドライバーが当たらない」という悩みを抱えている人が多いのも事実。そんな人のために、ドライバーショットの基本を分かりやすく解説します。
岸部華子のドライバーお手本スイングを連続写真でチェックする!
ゴルフではボールを打とうとして構えることをアドレスといいます。
アマチュアゴルファーの中には、アドレスに無頓着な人も多いようですが、200~300ヤード先にボールを運ぶゴルフでは、少しのアドレスの狂いが大きなズレにつながってしまいます。
また、アドレスが正しくないと、スイングそのものがおかしくなることもあります。上達するためにも、遠くへ飛ばすためにも、正しいアドレスを身に付けましょう。
ゴルフでは、上体を少し前に傾けて構えます。これを前傾姿勢といいます。まずはその姿勢の作り方から紹介しましょう。
真っ直ぐ立った状態で、股関節(足の付け根辺り)から上体を前に倒します。これが正しい前傾姿勢です。スイングでは、股関節に力が入っていなければいけないのですが、このようにして構えると股関節に力が入ります。最初は、股関節にクラブを当てがい、“股関節から上体を傾ける”ことを覚えましょう。
このとき、背中を真っすぐにしておくことも大事です。丸まったり、反るような形になるとケガをしやすくなるので注意しましょう。
なお前傾の深さは、両手が鉛直方向に下りる深さが基準となります。ドライバーの場合は、クラブが長いので、前傾角度はそれほど深くなりません。ゴルファーによっては、直立した状態とあまり変わらないという人もいます。
また、前傾姿勢を作ったあと、お尻が後ろに落ちないように、お尻を少し持ち上げるようにするのも大事なポイントです。そのためにも、体重を母指球辺りにかけるといいでしょう。前のめりになり過ぎるのは良くありませんが、カカト体重になるのは絶対に避けましょう。
グリップとは、両手でクラブを握ること。ちなみにクラブを握る部分もグリップといいます。
グリップにはいろんな種類があって、両手で握ったとき、右手の小指を左手の人差し指と中指の間に乗せる「オーバラッピング」と、右手の小指と左手の人差し指を絡める「インターロッキング」がその代表格です。
どちらで握るかはそれぞれの好みですが、最初は力が伝わりやすいインターロッキングで握ることをオススメします。ドライバーショットの場合も、インターロッキングの方が飛距離が出る可能性が高くなります。
前傾姿勢を作ったら、上体の力を抜いて両腕をダランと垂らします。そうすると、両ヒジが外側を向き、両手の手のひらが向き合う形になります。その向きをキープしたまま、まず左手でクラブを横から握ります。
握ったとき、左手の親指と人差し指とでできる「V」が右肩を向いていれば正しく握れている証拠。「V」の向きはしっかりチェックしてください。
そしてこのとき、正面から見て、左手の人差し指と中指のナックル(手の付け根の関節)が見えているのが理想です。左を深めに握ることを“フックグリップ”といいますが、ドライバーは少しフックグリップを強めにするのもいいでしょう。
また、左手は中指、薬指、小指を強めに握ることが大事です。インターロッキングでは、人差し指は浮いた状態になりますが、親指もあまり強く握らず、中指からの3本でしっかり握るようにしましょう。
一方、右手も左手同様、ダランとした状態から、横から握ります。そして、親指、人差し指でできる「V」が右肩を向くように。つまり両手とも「V」が右肩を向いていればOKです。右手で強く握るのは、中指、薬指。親指、人差し指は引っかける程度にします。
グリップの握りが強くなり過ぎないというのも大きなポイントです。強く握り過ぎると体に力が入り、スムーズにスイングできなくなるからです。特にドライバーは、「飛ばしたい」という気持ちから、握る強さが強くなりがちなので注意しましょう。
力加減としては、ギュッと握るのが100%だとしたら、30%前後。ただ、左手はやや強めに(50%)握り、右手は左手よりも弱めに握りましょう。
握る位置はグリップの間で、長過ぎず、短過ぎない長さで握りましょう。ドライバーはそもそも長めなので、長く握り過ぎるとクラブを操作しにくくなります。
理屈としては、長く握った方が遠心力は大きくなり、クラブを速く振れるようになりますが、芯に当てることも大事。グリップエンドから指2本分くらい離して握るがちょうどいいでしょう。
足幅(スタンス幅)は、肩幅よりも一足分広めがオススメです。長いクラブを思い切り振るので、下半身がドッシリ安定する広さで構えましょう。
ツマ先は、右足はほぼ真っすぐ。左足は体が回転しやすいように、少しだけ開きましょう。ただし開き過ぎないように。なお、体が硬くて、バックスイングで体が回らない人は、右ツマ先も少し開いても構いません。
アドレスでは、ターゲット(目標)ライン(ボールを打ち出す方向の線)と平行に立つことが大事です。構えたら、肩、腰、足のラインがターゲットラインと平行になっているかどうかを必ずチェックするようにしましょう。
また、ボールが飛び出す方向はフェースの向きによって決まるので、フェース面が目標を向くように構えます。意外とこれができていない人が多いので、特に注意してください。
ドライバーはティの上にボールを乗せて(ティアップ)打ちます。
ティの高さは、地面に置いたヘッドからボールが半分程度見えるのが基本。スイング軌道のどこでボールを捉えるかによってその高さは変わってきますが、まずは基本の高さから始めましょう。
ティアップしたボールを打つドライバーでは、ボールは左足カカトの延長線上に置くというのが基本です。ティアップした分、スイング軌道の最下点から少し上がったところでボールを捉えることになるので、ボールは左足寄りになるのです。
左寄りに置いたボールは、右から覗く感じで構えましょう。その分、右肩が少し下がるというのもドライバーの構えの特徴です。
ボールとの距離はクラブを握る位置で確認します。基本的に、グリップエンドと体との間に握りこぶしが1個入るくらい。
クラブを握るとき、「両手をダラリと下ろしましょう」といいましたが、そうするとほぼこの位置になります。ここが最も力が伝わる位置なので、手元が体に近づき過ぎたり、離れ過ぎたりしないようにしましょう。
左右の体重配分は、構えたときはほぼ左右均等で、右肩が下がっている分、気持ち右寄りになります。数字で表すと右5.5対左4.5になります。
ここからクラブを振り上げます(バックスイング)が、振り上げた最終地点(トップ)では右7対3になり、クラブを振り終わった時点(フィニッシュ)では右1対左9になります。
初心者には、最初から右足体重になっている人が多いのですが、そうするとバックスイングで右足に体重が乗り過ぎ、ヘッドがボールに当たるとき(インパクト)、ヘッドの向きがターゲットに対して真っすぐになりにくくなります。まずは5.5対4.5で立つことを覚えましょう。
スイングは、大きく「テークバック(バックスイング)」「トップ」「切り返し」「ダウンスイング」「インパクト」「フォロースルー」「フィニッシュ」という動きに分かれます。
すべて一連の流れの中で行われ、一つ一つの動きが止まることはありませんが、各ポイントでどのような動きになっているのがいいかということをチェックしておきましょう。
スイングを行う上で最も意識して欲しいのは、体と手の動きを合わせることです。ゴルフではこのことを「同調」といいますが、最初にこの動きを身につけておけば、上達が早くなります。それに対し、最初にバラバラのスイングが身に付いてしまうと、正しい動きに戻すのが難しくなります。
特にドライバーは他のクラブに比べて長いので、同調させていないと体とクラブの動きがバラバラになってしまいます。スイング中は常に、同調を意識しながら体と手を動かすようにしてください。
アドレスの静止状態からクラブを動かし始める動きで、その初期段階を、「テークバックの始動」といいます。
テークバックの始動で大事なのは、先ほどもいった同調です。始動の時点で体の動きが先行したり、手だけが先に上がって体と手の動きがバラバラになると、最後まで同調が生まれず、クラブの動きが安定しなくなります。少なくともクラブが時計の針で8時くらいになるまでは、体と手の動きがズレないように意識しましょう。
それを実現するためには、体幹でクラブを上げることが大事です。お腹に力を入れて始動すれば、それぞれが勝手な動きをしなくなります。
なお、ドライバーの場合、大きく振ろうと考え過ぎて、始動のときからヘッドを遠くに動かそうとする人がいますが、そうすると同調が崩れます。
また、手でヒョイと上げるのもNG。ヘッドをヒョイと上げる動きが身に付いてしまうと、なかなか直りにくくなるので注意してください。
さらに、始動の時点でフェースを開かないようにすることも大事です。できるだけフェース面をボールに向けたままクラブを上げていきましょう。
スイング中、クラブが最も高く上がったときのことをトップといいます。
トップで大事なのは、無理に上げ過ぎないことです。「バックスイングは大きければ大きいほど飛ぶ」と考えて、深いトップを作ろうとする人がいますが、ほとんどの人は体の限界点を超えてから、手の動きだけでクラブを上げています。
クラブを振り上げるのは、体の限界点まで。もうこれ以上肩が回らないというところまでいったら、手元の動きもそこで止めましょう。それ以上振り回しても、飛距離は伸びないし、それどころか芯に当たる確率が低くなって飛距離が落ちてしまいます。
トップからクラブを振り下ろす瞬間の動きを切り返しといいます。
切り返しで大事なのは、右ワキが空かないようにすることと、右手首の角度をキープすること。トップでの右手首の角度を保ったまま、右ヒジを右ワキ腹に付けるようなイメージで振り下ろします。
切り返し~インパクトまでの動きをダウンスイングといいます。
切り返しで、右ワキの締めと右手首の角度のキープが大事だといいましたが、ダウンスイングでも意識するポイントは同じ。手首が早めに解けないように(早めに解けることを「アーリーリリース」といいます)意識しながら、右ヒジを右ワキ腹に付けたままクラブを振り下ろします。
フェース面をボールに対して真っすぐに当てようとすると、アーリーリリースになりやすいので注意してください。
ヘッドがボールに当たる瞬間のことをインパクトといいます。
インパクトは、ボールの飛び出す方向が決まる大事なポイントです。フェースが右を向いていたら(フェースが開く)、ボールは右に飛び出し、左を向いていたら(フェースが閉じる)、ボールは左に飛び出します。特にドライバーは距離が出るクラブなので、微妙な向きの狂いで飛び出す方向が大きく変わってきます。
しかし、だからといってフェース面を真っすぐに当てようとする必要はありません。そもそもこの時点で、ヘッドのスピードも最高潮に達しているので、フェースの向きを操作するのは不可能です。
それよりも、ターゲットを意識して、体の回転とともに左側に振り抜くようにしましょう。その方が、ボールが真っすぐ飛ぶ確率は高くなります。
また、ドライバーショットでは、インパクトの前後(インパクトゾーン)を“低く長く”するのも重要なポイントです。そうすることで、エネルギー効率も上がるし、方向性も安定するからです。
アイアンの場合はどちらかというとボールを点で捉えるイメージですが、ドライバーでは“線”で捉えるようなイメージでスイングしましょう。
インパクト以降の動きをフォロースルーといいます。
ここではインパクトの流れから、ターゲットに向かってボールを飛ばす意識で振り抜きましょう。
フォロースルーが小さいと飛距離が落ちるし、早めに手首を折ることによってフェースがかぶって左に曲がる危険性も出てきます。飛ばしたいドライバーは、とにかく大きく振り抜くことが大事です。
スイングの最後の形をフィニッシュといいます。
フィニッシュで大事なのは、体重が右に残らないことです。しっかり下半身を使って体重移動を行いましょう。フィニッシュでは右足の裏が見えるのが正しい形。左足1本で立てるくらい、左足に重心を移しましょう。
ドライバーは飛ばすためのクラブですが、単にクラブを振る速さを上げるだけでは遠くに飛びません。クラブを振る速さを上げると同時に、芯で当てることも大事になってきます。芯に当てた方が、力がしっかり伝わるし、曲がりも少なくなるからです。芯に当てるためにも、そしてスピードを上げるためにも、正しい構えと、正しいスイングをしっかり覚えてください。
指導・岸部華子
きしべ・はなこ/1995年生まれ、福島県出身。姉はツアープロの岸部桃子(2歳上)。6歳からゴルフを始め、07年に『東北ジュニアゴルフ選手権 女子11歳以下の部』で優勝。高校時代は、東日本国際大学付属昌平高ゴルフ部に所属。21年にLPGAティーチングA級を取得した。現在は、横田英治が主宰する『クラブハウス』に所属して、アマチュアゴルファーを指導。ときどき姉のツアーキャディも務める。