スマホの機種変を望んでいた妻を、乗り換えキャンペーンに誘ったら不機嫌に…何が悪かったのか?苦悩する夫の弁

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スマホの機種変を望んでいた妻を、乗り換えキャンペーンに誘ったら不機嫌に…何が悪かったのか?苦悩する夫の弁

11月5日(火) 8:52

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DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。コミュニティではさまざまなグチや悩みなども共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。

「以前、パートナーが『スマホが古くなってきたから、機種変更したい』とぼやいていたんです。偶然お得な乗り換えキャンペーンを見つけたから、パートナーにも喜んでもらおうと思い、一緒に手続きしに行ってきたんです。なのに、パートナーからは感謝どころか不満ばかり……。一体、何様のつもりなんですかね……」(相談者のAさん)

今回はこのセリフの背景に迫りたいと思います。

パートナーとの関係危機をきっかけにGADHAに参加したAさん。すきま時間にコミュニティのSlackを読んでいるうちに、職場での人間関係の悩みにも通じるところがあると感じたそうです。そこで思い切って当事者会にも参加してみたところ、自分と同様、知らないうちにパートナーに加害してしまっている人や、人間関係に悩みを感じている人が少なくないことを知り、同時にそうした人たちが「変わりたい!」と懸命に取り組む姿に勇気をもらっていると言います。

そして、Aさんは「自分も変わりたい!」と、パートナーへのケアを意識するようになった矢先に起きた出来事についてこう語りました。

「ここのところ、パートナーが『スマホのバッテリーの持ちが悪いから、そろそろ機種変更したい』って、よくぼやいていたんです。それで先日買物に行ったら、偶然、携帯電話の乗り換えキャンペーンをしていて、お得に機種変更できる絶好の機会だった。子どもにも、進学に伴い、新たにスマホを持たせたかったので、この際、思い切って手続きをすることにしたんです。

手続きには、どうしても本人の同席が必要でしたが、キャンペーン終了までに家族全員で行けそうな時は、その日以外にはもうなかったんです。だから、パートナーが仕事から帰宅するのを待って、その日のうちに急いで手続きしに行きました。新しい機種にも変更できるし、スマホのデータ通信量も増やせるし、月々の利用料も安くなり良いことづくめでした。しかし、パートナーは『今日じゃなきゃダメなの?』とか文句ばかり……。

確かに、自分の予想以上に手続きに時間はかかりました。もちろん、パートナーも自分も翌日は仕事でしたし、子どもが疲れているのもわかっていたので、少しでも早く帰宅できるようにと自分も精一杯努力しました。それなのに、パートナーは料金プランの詳細確認など、余計な口出しをするので、さらに時間がかかってしまって……。

長くても2時間くらいかなと予想していましたが、結局なんだかんだで3時間以上。早く帰りたいんだったらパートナーも協力してくれたって良さそうなのに。パートナーは子どもに当たり散らし始めるし、その日は本当に疲れました」

この話だけを聞けば、Aさん(加害者)のパートナー(被害者)こそが自分勝手なモラハラ人間なのではと思う人も多いでしょう。DV・モラハラを知らない人が素直に聞けば、そう思うのも自然な内容です。

パートナーを喜ばせたかったAさんの誤算とは

しかし、加害者自身からは見えていない視点があるかもしれません。そこで、僕はAさんに質問してみました。

「Aさんのパートナーのニーズは何だと思いますか?」

すると、Aさんは次のように答えてくれました。

「やっぱり『スマホの機種変更をしたい』じゃないですか?自分で『バッテリーの持ちが悪い』『機種変更したい』って、よくぼやいていたんですから」

「なるほど。では、ニーズが満たされるはずのパートナーが喜んでいないのは、どうしてだと思いますか?」と僕は聞いてみました。

「え?あ、確かに。うーん……」Aさんは沈黙してしまいました。

僕は質問を変えてみました。

「では、この時のAさんのニーズは何でしたか?」

するとAさんは「それはやっぱり『パートナーを喜ばせたい』ですね。あと、『お得なこの機会を逃したくない』という気持ちもあったと思います」とすぐに答えてくれました。

そこで、重ねて聞いてみました。

「では今回、乗り換えキャンペーンの手続きでAさんが満たそうとしていたのは、誰の、どんなニーズですか?せっかくパートナーのためを思ってやっているのに、パートナーがさっさと喜ばなくてがっかりしたり、イライラしたりしていませんでしたか?『俺がお得って言ってるんだから、あれこれ確認しなくてもお得なんだよ』みたいな」

Aさんは、ハッとした様子で答えてくれました。

「あ……パートナーのニーズではなく、自分のニーズを満たすための行動になってしまっていますね……。しかも、『パートナーを喜ばせたい』ではなく、『パートナーから認められたい』にすり替わっています」

今回も、以前の記事に書いたケースと同様に、Aさんの行動の目的は残念ながら「パートナーに喜んでもらうこと」から、「パートナーから自分が認められること」になってしまっていました。もっと言えば「(自分の勝手な)計画を達成すること」へと、いつの間にかすり変わってしまっています。

Aさんはどうしたら良かったのか?

Aさんは、目先のキャンペーンのお得さにつられて、「これならきっとパートナーも喜んでくれるはず」と早合点してしまい、パートナーへの確認・相談をしないまま、独りよがりに行動を始めてしまいました。今回の件は、そのことに端を発していると考えられます。

また、手続きにかかる時間や、パートナーの反応など、自分の想定外・予想外の事態に対して、自分の至らなさや相手のニーズを読み間違えてしまった事実を認め学び直すどころか、「悪い/間違っているのは、自分ではなく相手だ」「喜ぶと思ってしてやったのに」と自分勝手に決めつけ、押し付け、そして、相手を自分の思い通りに支配・コントロールしようとしてしまっています。

その結果、Aさんは、パートナーから「子どもをケアする余裕を奪う」という重大な加害も行ってしまいました。

では、Aさんはどうしたら良かったのでしょうか?

今回のケースの場合、大きく2つの分岐点があったと考えられます。

一つ目は、行動に移す前の時点です。Aさんは、このキャンペーンについて、パートナーに具体的な情報や自分自身のニーズを共有するとともに、現時点でのパートナーのニーズを確認することができました。
・スマホのお得な乗り換えキャンペーンを見つけたんだ。【事実】
・以前から、『バッテリーの持ちが悪い』『機種変更したい』って、よくぼやいていたし、子どもにも、進学に伴い、新たにスマホを持たせたいって話をしていたよね。【前提共有】
・もし良ければ、せっかくの機会に手続きをしたいと考えているんだけど、どうかな?【依頼・提案】

この段階で、パートナーから「明日も仕事だから、今日は行きたくない」と言われた時に、「そうだったのか。気づいていなくてごめんね」等、相手の今のニーズを尊重する言葉を言えたなら、Aさんは、本当の意味で、Aさんのパートナーを喜ばせることができたかもしれません。

二つ目は、行動に移した後の時点です。経済的なメリットを優先する等、互いに合意の上で手続きに行くとした場合でも、予想以上に手続きに時間がかかってしまった際に、自分を正当化したり、相手のせいにしたりせずに、
「確認不足で、ごめんね。もっと早く手続きが終わるものだとばかり思い込んでいたよ」
「仕事で疲れているのに申し訳ない。手続きに付き合ってくれて、ありがとう」等、
自分の至らなさを率直に認めた上で、疲れているパートナーや子どもへの認識的共感(情動調律)、感謝を具体的な言動で示すことができていれば、Aさんは、パートナーから、子どもにケアする余裕を奪うという重大な加害は何とか食い止めることができたかもしれません。

パートナーに謝罪した結果

後日、Aさんは、改めてパートナーに謝罪した結果を教えてくれました。

「パートナーには、先日のキャンペーンについて、詳しい内容を事前に情報共有しなかったこと、仕事で疲れているのに長時間拘束し子どもをケアする余裕を奪ってしまったこと等について、自分の責任を認めて謝罪しました。
パートナーは、やはり仕事で疲れて帰ってきているのに、よくわからないまま連れていかれ、長時間拘束されたことがかなりしんどかったと教えてくれました。
自分としては、当初そこまで時間がかかるとは思っていなかったこと、パートナーや子どもが疲れているのはわかっていたので、少しでも早く帰ろうと気持ちばかり焦っていたことなど、その時に感じていたことや考えていたこと等を改めて二人で共有し、お互いのもやもやを少しでも解消することができました。
自分の中では、何となく『謝罪する→負け、終わり(自分には価値がない)』と勝手に思い込んでいたので、今までは、正当化や弁解ばかりしていました。よくてせいぜい『お互い様』と責任逃れするのが関の山でした。
あの一件から時間も経っていましたし、パートナーのために良かれと思って始めた行動だったので、自分の非や責任を認めて謝罪することには、正直、ものすごく抵抗がありましたが、今は思い切ってパートナーに伝えてみて良かったと思います」

Aさんは、どこかすっきりした表情で教えてくれました。

人は誰しも加害してしまわずにはいられない存在です。なぜなら、自分のことも他者のことも、完璧には分からないから。分からないということは、的外れなことをしたり、傷つけたり、押し付けになってしまったりする可能性があるということです。そして、それらをしてしまった時というのは、加害をしてしまった時です。
GADHAは、そうしたお互いの不完全さや弱さを認めあいながら、大切な人を大切にできるようになるために試行錯誤する場所、即ち失敗も学びに変えられる場所です。自分の加害性を自覚し、不安を抱える人や変わりたいと願う人は、GADHAを始めとするコミュニティに参加し、自分や大切な人を適切にケアしていくことをぜひ始めてみてください。

(被害者かもしれないあなたへ)
あなたの協力に対して、何の感謝も労いも示さないのは、典型的なモラハラです。
いくら相手にも事情があるとは言え、相手は、職場や家族間でそうしたコミュニケーションをすることが当たり前になっている可能性があります。そうした相手と持続可能な人間関係を築いていくことは極めて困難です。
様々な専門機関や相談窓口がありますので、ぜひ「パワハラ被害」「モラハラ 被害」などで検索してみてください。あなたの愛が搾取され尽くし枯渇してしまう前に、(できれば身近な常識人よりも)まずは専門家へ相談してみることをおすすめします。

(加害者かもしれないあなたへ)
「相手のため」「良かれと思って」と口にする加害者は、非常に多いです。あなたがどんなに相手のことを思って行動しているとしても、それは相手が感じ考えていることを蔑ろにしていい理由にはなりません。
自分と相手とはそもそも違う人間なのですから、感じ考えることが異なり、大切にすることも違い、よって言動することも違います。だからこそ、そんな相手と一緒に生きていくためには、相手の価値観や気持ち・考えなどを知ろうとし、尊重しようとし続けていくことが何より重要になります。
もちろん、自分の居心地が悪くなるほど何もかも相手に合わせようとする必要はありませんが、自分の勝手な理想や基準等を一方的に相手に押し付けてばかりいるのであれば、最後は孤独になるしかありません。相手のニーズを全ては満たせなくとも、満たせるものについては積極的に尊重するといった「お互いにとって居心地のよい場所」を作ろうとする営みこそが、相手と持続可能な人間関係を築いていくことにつながるのです。

【えいなか】
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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