11月5日(火) 4:50
日本で民宿や旅館など宿泊業は「旅館業法」により区分が定められています。
まず大きく「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」「下宿営業」と3種類にわけられます。旅館は「ホテル・旅館営業」、民宿は「簡易宿所営業」の基準にそれぞれ沿った宿泊施設です。
「旅館・ホテル営業」のホテルや旅館は、フロントや玄関帳場の設備や男子・女子で区分された共同トイレの設置が条件になっています。
また、ホテルは客室のメインが洋式で、1室の床面積が9平方メートル以上かつ10室以上、旅館は客室のメインが和式となり、1室の床面積が7平方メートル以上かつ5室以上が必要です。
「簡易宿所営業」は、設備や客室数は問われません。ただし、客室全体の床面積が33平方メートル以上である、または、宿泊者数が10人未満の場合は宿泊者の人数あたり3.3平方メートル以上の広さが必要です。
日本初の「宿」が誕生したのは奈良時代で、「布施屋」という宿泊施設が起源とされています。交通網が未発達だった当時、飢えに耐えながら旅する者が多かったため、食料を施す宿舎としてスタートしたようです。
その後、江戸時代には現在の「旅館」にあたる凝った料理を提供する宿泊施設が増えました。一方、民宿が発祥したのは長野県白馬といわれています。
登山者は行程の打ち合わせや食材の仕入れをしながらガイドや案内人の家で一泊し、翌朝登山へ出かけるのが一般的でした。1937年に案内人をしていた16軒が警察から許可を得て、民宿として営業をスタートしたのです。
旅館に泊まるメリットはおもてなしのサービスを受けながら、露天風呂などの温泉施設や豪華な盛り付けの食事を楽しみ、贅沢な時間を過ごせる点です。宿泊料金は高めに設定されています。
大阪府が2024年に実施した「令和6年度大阪府宿泊実態に関する調査」によると、宿泊単価は旅館が平均7159円、民宿である「簡易宿所」は平均4175円でした。
おもてなしや豪華な夕食を求めるのであれば旅館ですが、宿泊料金が高くなってしまいます。一方、民宿は個人または家族経営が多く、家庭料理やアットホームな雰囲気が特徴で比較的手頃に泊まれます。
コストをかけずに旅行を楽しみたいのであれば民宿、贅沢な旅行を楽しみたいのであれば旅館がおすすめです。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2024年4~6月の国内旅行の1回あたりの宿泊旅行支出額の平均は6万8202円でした。前年同期比で+11.3%、2019年同期比で25.3%上昇しています。
宿泊旅行支出額の内訳を見ると、宿泊費の平均が1万5969円であるのに対し、交通費の平均は1万7569円です。宿泊にかける金額のほうが安価であることから、宿泊費を抑えた旅行を楽しむ方が増えているといえるでしょう。
株式会社マネーフォワードが2024年に実施した「2024年のゴールデンウィーク(GW)の旅行とお金についてアンケート調査」では、予算を抑えたい費目の第1位は宿泊費(34.7%)でした。
予算を気にせず特に楽しみたい項目では、第1位は食費(27.3%)、第2位は旅先での体験(25.3%)など、宿泊費用を抑えて旅の体験を重視する傾向が強いようです。
温泉や豪華な食事を旅行の目的としている方には旅館が選ばれていますが、宿泊コストを下げてアクティビティに予算を使いたい人には民宿が選ばれています。何を重視して旅行をするかによって民宿や旅館を使い分け、充実した旅行を楽しみましょう。
厚生労働省旅館業法の概要等について
旅館業法
観光庁旅行・観光消費動向調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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