愛され続ける『SR サイタマノラッパー』舞台挨拶は通算1000回超え!?入江悠監督、みひろは「当て書き」とキャスティング秘話を公開

『SR サイタマノラッパー』、笑顔いっぱいのイベントとなった

愛され続ける『SR サイタマノラッパー』舞台挨拶は通算1000回超え!?入江悠監督、みひろは「当て書き」とキャスティング秘話を公開

11月4日(月) 17:26

現在開催中の第37回東京国際映画祭(TIFF)Nippon Cinema Now部門「監督特集:入江悠」にて11月4日、2009年の映画『SR サイタマノラッパー』がTOHOシネマズ シャンテで上映され、入江悠監督、みひろ、水澤紳吾が出席した。
【写真を見る】みひろ、ボタニカル柄の白のワンピース姿で登場!

第37回東京国際映画祭で『SR サイタマノラッパー』の上映が行われ、観客の質問にも回答!

本作は地方都市の青年たちの姿をヒップホップ音楽にのせてシニカルかつ温かく描いた青春映画。第19回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得。2009年3月に公開されるやいなや、自主映画として異例のヒットを記録した。

「この映画がダメだったら、映画監督を辞めようと思っていた」と告白した入江悠監督

上映後の会場から大きな拍手を浴びて登場した入江監督は、「2007年に撮影をして17年が経ちます。こうやって映画祭で特集していただけるのがうれしいです」と笑顔。「いまは俳優としてやる時は金子みひろと名乗っております」と自己紹介したみひろは、「まさか17年経ってもこうやって映画館で上映して、舞台挨拶でお話しできる日がくるなんて思ってもみなかった」と感激しきりで、「MC TOMです。48歳になりました」と役名を名乗って会場の笑いを誘った水澤は、劇中に登場するヒップホップ・グループ「SHO-GUNG」にちなみ「将軍」と書いたTシャツ姿を披露。会場を沸かせていた。

千夏役を演じたみひろ

田舎町から世界を目指すニートラッパー・IKKU(駒木根隆介)がバイトや農作業に忙しい仲間たちと曲作りに励みつつも、ある日AV女優になった同級生の千夏(みひろ)が故郷に戻り、彼女をめぐって次第にラッパーたちの夢がバラバラになっていく姿をつづっている。全編ほぼワンシーンワンカットによって撮られている本作だが、入江監督によるとその手法にすることは当初から「決めていた」という。「当時は20代の終わりくらい。この映画がダメだったら、あまり評価をされなかったら、映画監督を辞めようと思っていたので、最後に挑戦したいなと思っていた。ワンシーンワンカットであることを決め事にして撮影していました」と覚悟して挑んだと話した。水澤は「妙なグルーブ感があった。撮影も少人数でしたし、みんなで頑張ろうという空気があった」と熱気を回想。みひろは「ここで私が噛んじゃったりしたら、全部いちからになるので覚悟してやりました」とプレッシャーがあったと告白していた。

MC TOM役を演じた水澤紳吾

会場からの質問にも答えたこの日。「千夏が『二度と帰ってこない』と言い放つシーンが印象深い」という感想も上がっていたが、みひろは「入江監督が(千夏役を)私に当て書きをしてくださったと聞いた」と吐露。撮影当時はセクシー女優として現役だったと振り返り、「自分自身、これから芸能の生活を頑張って行くぞという気持ちがあるなかで、地元に帰ると偏見と言いますか、悔しい想いをしていた。そういう意味では、『二度と帰ってこない』というのは私自身もリンクして言えた言葉です。地元の方たちに『すごい頑張っているな』と思わせたくて、感情を乗せることができた」と千夏と自分自身が重なることもあったという。

「Vシネマでご一緒してすばらしいなと思っていた」とみひろを絶賛

キャスティングに話が及ぶと、「みひろさんは、Vシネマでご一緒してすばらしいなと思って。当て書きでお願いをしました。水澤さんは、水戸の映画祭で自主映画のコンクールがあって。僕も出品していたんですが、その時に上映された沖田修一監督の自主映画に水澤さんが出ていた。それがすごくおもしろくて、水澤さんにお声がけした」と秘話を公開。「あとのメンバーはただの大学の友だちです」と目尻を下げながら、「(MC MIGHTY役の)奥野瑛太に至っては、演技も見ずに決めました。『活きのいいヤツがいる』ということで、電話でしゃべって決めました。それがいま俳優として立派にやっていますからね」と感慨深げに語っていた。

水澤紳吾、魂のラップを披露!

入江監督が「数えたら、この映画は日本映画史に残るくらい舞台挨拶をしていると思う。1000回を超えていると思う」と話すように、年月を経ても各地で上映や観客との出会いを重ね、熱気と共に迎えられている本作。水澤も「劇場に行って、勝手に出口挨拶をやったり。そういったものを含めると1000回を超えていると思う。ゆうばりで初めてお客さんに観てもらって、ものすごい熱量を感じた。それが相当心に響いてしまって、動きたくなってしまった」としみじみ。入江監督は「あの当時の想いだけで作っているので、技術的にも稚拙ですし…。自分では恥ずかしくていまだに観られない」と照れ笑いでこぼしていたが、映画を楽しんだ観客からはトーク中にも何度も笑い声が上がるなど、本作を通して会場全体がひとつになっているようなひと時となった。最後には水澤が失敗しながらも生ラップを披露するひと幕もあり、会場からは温かな拍手が起こっていた。

取材・文/成田おり枝


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