11月4日(月) 7:30
<TOTOジャパンクラシック最終日◇3日◇瀬田ゴルフコース 北コース(滋賀県)◇6616ヤード・パー72>
秋晴れだった青空は真っ暗になる寸前だった。日の入りも過ぎた午後5時過ぎ。6ホール、約2時間に及ぶ戦いを竹田麗央が制した。ともにパー5の18番→18番→13番→18番→13番の順番で行われたプレーオフ。ここで決着がつかなかった場合は予備日の翌日に持ち越しが濃厚だった。“最後”の18番で1.2メートルのバーディパットを沈め、歓喜の瞬間はやって来た。
「これでQシリーズ(予選会)に行かなくていいっていうのが、頭によぎってうれしかったです。明日にもつれると気持ちを切らさないようにしないといけないので、ここで決めようと思いました」
来季の米ツアー出場資格を争う12月の最終予選会(Qシリーズ)に出場することを表明していた。5日間の長丁場の戦いが免除され、米ツアーのメンバーカードが付与される日米ツアー共催大会の優勝。9月の「ソニー 日本女子プロ選手権」で国内メジャーを初制覇し、3年シードを獲得したときに決めた米ツアー挑戦を決断した。そのときからターゲットを最短ルートのTOTOに定め、狙い通りにモノした。
中学3年の2018年に熊本からプロゴルファーの母・哲子さんと、今回と同じ瀬田で開催された、この大会を見に来た。発案者は叔母で元賞金女王の平瀬真由美だった。1996年から99年まで米ツアーを主戦場に戦った平瀬はルーキーイヤーに、この大会(当時東レ ジャパンクイーンズ)を制覇。「自分のときとは今では全然違う」と謙遜しながら、めいっ子に観戦を勧めたころを思い出した。
「日本国内と米国ではやっぱりだいぶ差がある。向こうは層も厚い。ヘッドが上から入るところを見てほしかった。見に来るならこの試合だよ、と話したと思います」
15歳だったギャラリーが6年後に選手として頂点に立った。来年の舞台は米ツアー。「アメリカでプレーできると思うとワクワクして、楽しみ。簡単にはいかないと思うけど、日本人選手も活躍している。そこについていきたい。メジャーで勝ちたいです」。米ツアーメンバーとしてのデビュー戦は過去2年間の優勝者のみが出場できる1月の開幕戦。「オフは短くなるけど、1月から出られるのはうれしい。そこに向けて調整したい」と心は来季に向かっている。そんな竹田に平瀬も「一番取りたかったと思うタイトル。それが実現できたのは幸運。ただ、まだ通用しない。イチからやり直す気持ちで」とエールを送った。
競技が中止となった前日は仲良しの小祝さくらと初体験のゲームセンターで「プロ野球チップス」が景品のクレーンゲームに興じた。7000円を投じて、14枚のカードをゲットしたが、推しの山下舜平大(オリックス)は残念ながらなし。だが、この日は一番欲しかったものを鮮やかに吊り上げた。
初の年間女王は最短で次戦の「伊藤園レディス」で決まる。シーズン獲得賞金も統合シーズンで史上最高だった2020-21年の稲見萌寧の2億5519万2049円を単年で塗り替える勢いだ。4月の初Vから積み上げた勝利は「8」。歴史に残る竹田のプロ3年目のシーズンは間もなく大団円のときを迎える。(文・臼杵孝志)