『月』『舟を編む』で知られる日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督の最新作『本心』が8日に全国公開される。主人公の朔也を演じる池松壮亮と、朔也の母をAIで蘇らせる技術者・野崎将人を演じる妻夫木聡は、石井監督が手掛けた2014年の映画『ぼくたちの家族』をきっかけに“兄弟役”で初共演。その後、同じく石井監督による同年公開の映画『バンクーバーの朝日』でも共演し、それ以来約10年ぶりに“石井組”に二人が集結するのが『本心』だ。今回で石井とは9作目の池松は「石井さんの持つ底知れない映画作家としての能力を実感しました」と語り、久々に石井組へ参加した妻夫木は「本当に皆で一緒に映画を作っているという実感をすごく感じました」と改めて感服。二人の言葉からは、石井組としての信頼感の強さが感じ取れる。
【写真】“朔也”池松壮亮が見せる表情の意味とは『本心』場面写真
約10年前、今の池松と同年齢の妻夫木が石井組で主演した『ぼくたちの家族』。そして、妻夫木の軌跡を追うかのように、池松がその10年後に石井組で主演する『本心』。不思議な縁で結ばれていると思わざるを得ないが、妻夫木は、私生活でも交流があるという池松について、「壮亮と一緒に芝居できたのも本当に楽しかったし、幸せな時間でした。そして、現場にいることや皆の輪の中に僕もいるというのがすごく幸せでした。表現するのが難しいのですが…それくらい一体感のある現場だったと思います」と、久々の共演と現場での様子を熱く回想した。
『本心』は、原作を読んだ池松が「今やるべき作品」「これは自分の話だ」と感じ、全幅の信頼を寄せる石井監督に自ら企画を持ち込んだ意欲作でもある。そんな渾身の作品を支える存在として力を貸した妻夫木について、池松は先日実施した完成披露舞台挨拶で“役と同化するくらい突き進む人”とリスペクトを表現している。
石井と妻夫木、信頼する人たちと共に生み出した『本心』への思いを、池松は「制作面における今作の実現も相当難しいものでしたが、資金繰りにもとても苦労がありました。そうしたなかで、この企画に心から賛同してくれる方々が集まったような気がしています。現場での体感として、出演者の誰もが“いま語るべき物語”と感じているような気がしました。共演できたこと、今作をみんなで作り上げていけたことに心から感謝しています」と感謝を述べており、作品の出来栄えにも期待が寄せられる。
互いにリスペクトがあり、信頼関係で結ばれている池松と妻夫木と石井。日々進化するテクノロジーが世界中を席巻し、生活様式が目まぐるしく変貌していく世の中で、時代の進化に置いてきぼりにされる朔也と、進化の流れを乗りこなす野崎。対照的な二人のキャラクターを果たしてどのように表現するのかにも注目が集まる。
我々がかつて想像していたようなSFの世界ではなく、“日常”に溶け込んだ、今の生活と地続きの設定である『本心』。AIや仮想空間、日々著しく進化するテクノロジーが世界中を席巻し、生活様式が目まぐるしく変貌しているいま。本作は、時代に翻弄され彷徨う人間の【心】と【本質】を描いた革新的なヒューマンミステリーとなっている。
映画『本心』は11月8日より全国公開。
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