11月3日(日) 2:10
差額ベッド代とは、病院の個室や少人数部屋などの「特別療養環境室」を利用した際に請求される費用のことです。
通常の入院時には、追加料金なしで利用できる一般病室が提供されます。しかし、プライバシーや快適さを求めて個室などを「患者の希望」で選ぶ場合には、差額ベッド代が請求されることがあります。
ただ、本人が希望していないにもかかわらず、病院側の都合で個室などに案内された場合は、差額ベッド代は請求されません。つまり差額ベッド代が発生するかどうかは、患者の希望によるかどうかに左右されるのです。
差額ベッド代の料金は、病院や地域によって異なります。2023年7月時点の全国平均額は次のとおりです。
●1人部屋:8437円
●2人部屋:3137円
●3人部屋:2808円
●4人部屋:2724円
例えば、患者の希望で1人部屋に7日間入院した場合、平均で、8437円×7日=5万9059円の負担になります。医療費とは別に約6万円を追加で支払うとなると、負担が大きいと感じる人もいるかもしれません。
差額ベッド代は病院が自由に設定できるため、なかには1日10万円を超える価格が設定された個室もあります。入院する病院が決まっている場合、あらかじめ料金を確認しておくと良いでしょう。
ここまでの説明を見て、「個室ではないのに差額ベッド代が発生するのはおかしいのでは? 」と思う人もいるかもしれません。しかし、4人部屋でも「特別な環境」とみなされて、差額ベッド代がかかる場合があります。差額ベッド代が発生する「特別療養環境室」の基準として以下のものがあります。
●病室のベッド数が4床以下である
●病室の面積が1人あたり6.4平方メートル以上である
●病床のプライバシーを確保するための設備がある
●特別の療養環境として適切な設備を有する
例えば、4人部屋でも各ベッドにカーテンで仕切られたスペースがある場合や、トイレやシャワーが部屋に併設されている場合などが該当します。このようなケースでは、病院側が「通常よりも快適な環境を提供している」と判断し、差額ベッド代を請求することがあります。
患者側の希望で特別療養環境室に入院する場合、差額ベッド代を全額自己負担しなければなりません。しかし、病院側の都合で「特別療養環境室」を利用する場合であっても、病院から差額ベッド代の同意書を求められることがあります。もし差額ベッド代を支払いたくない場合は、「自分は希望しない」ということを伝え、その同意書に署名しないことが大切です。
差額ベッド代は、病院の特別療養環境室を利用する際に発生する追加費用です。部屋の広さや設備が基準を満たしていれば、個室に限らず4人部屋などでも請求される場合があることに注意が必要です。
たとえ数日の入院でも、差額ベッド代がかかると請求額が数万円単位で異なる可能性があります。少しでも疑問があるときは、遠慮せずに病院に聞いて、早めに不安を解消しましょう。
厚生労働省 主な選定療養に係る報告状況
厚生労働省 「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について
執筆者:山田麻耶
FP2級
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