11月2日(土) 22:50
おそらく一般的には、介護施設というと「老人ホーム」が頭に浮かぶかもしれません。このときの老人ホームのイメージは、いわゆる「特別養護老人ホーム(特養)」を指すことが多いようですが、多かれ少なかれ「施設に入所して何らかの身体介助を受ける」という漠然としたイメージではないでしょうか。
このように、介護保険制度を分かりにくくしている原因の一つとして、言葉の問題が挙げられます。
先ほどのように、多くの人に「介護施設≒老人ホーム≒特養?」といったイメージがあることが多いため、自分がどのような介護サービスが受けられるか、理解する前の段階で、よく分からなくなってしまいます。
このため、まず、介護サービスを受ける場所について知る必要があります。ポイントは前回の記事でも言及したように「在宅か、施設か」の2択であり、介護保険制度を理解するに当たり、本記事ではまず「施設介護」について取り上げます(在宅介護については、このシリーズの最後に言及する予定です)。
いわゆる介護施設について理解しようとする場合、介護老人「保健」施設と介護老人「福祉」施設、という言葉の違いに着目すると、分かりやすくなります。前者には「保健」という言葉が付されており、後者には「福祉」という言葉が使われています。
簡単にいうと、ここでいう保健施設とは「施設内に医師がいて、リハビリを受けながら生活する場所」という意味です。一方、福祉施設は単に「生活する場所」を指します。
つまり、介護老人保健施設は、介護が必要な方が医師の診療に基づきリハビリを受けながら暮らす場所で、介護老人福祉施設は、介護が必要な方が生活をする場所、という意味になります。
介護老人保健施設はもともと老人保健法から創設しており、介護老人福祉施設は老人福祉法から生まれたものであるため、このような違いが生じています。また、両者は共に介護保険法に規定されるものでもあるので、介護保険サービスが受けられるようになっています。
それでは、もう少し具体的な利用の場面を例に、理解を深めていきましょう。
一般に、介護老人保健施設は在宅復帰を目指すもので、介護老人福祉施設は長期的な生活の場と考えることができます。
分かりやすい例を挙げるならば、介護老人「保健」施設は「脳梗塞などが原因で手足がまひしてしまい、リハビリを継続して受けることが必要になった患者が、退院後に入所し暮らす施設」というイメージです。
これに対し、介護老人「福祉」施設は、「身体機能が衰え、自立して生活することが難しい老人が、介助を受けながら暮らす施設」と考えれば、分かりやすいかもしれません。このようなことから、介護老人「福祉」施設のほうが、一般的な介護施設のイメージに近いといえるでしょう。
今回の話は、介護施設の種類を大別するための、非常にざっくりとした話です。細かい部分まで理解しようとすると分かりにくくなるため、詳細については言及していませんが、対象とする利用者や設置基準、入所期間、利用できるサービス内容などの違いがあります。
老後の生活設計を絡めたポイントは、「施設の違いによってどのような生活シーンを想定するか」ということです。読者のみなさんが大まかに想定するのであれば、介護老人保健施設での暮らしは医療と介護が支え、介護老人福祉施設での暮らしを支える基盤は介護である(正確には、介護を受けながら病院を受診するなど)といったイメージでよいでしょう。
このような大まかな違いが分かるだけでも、介護保険制度への理解が進むのではないでしょうか。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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