11月1日(金) 22:50
「予定利率」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 予定利率とは、生命保険会社が保険商品を設計する際に、あらかじめ見込んでいる(予定している)運用利回り(利率)のことです。
生命保険会社は、「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」を基に生命保険料(以下「保険料」といいます)を計算します。これらの予定率と保険料の関係は、以下のとおりです。
・予定死亡率が上がれば、保険料は上がる(予定死亡率が下がれば、保険料は下がる)
・予定利率が上がれば、保険料は下がる(予定利率が下がれば、保険料は上がる)
・予定事業費率が上がれば、保険料は上がる(予定事業費率が下がれば、保険料は下がる)
金利は、予定利率に影響を与えます。一般に、金利が上がれば予定利率は上がり、金利が下がれば予定利率は下がります。このことから、以下のことがいえます。
・金利が上がれば(予定利率が上がるため)保険料は下がる
・金利が下がれば(予定利率が下がるため)保険料は上がる
学資保険は、生命保険の一つです。したがって、学資保険の保険料と金利の関係にも、上記のことが当てはまります。
金利が保険料に影響を与えるのであれば、満期保険金にも同じような影響があるのではないかと思われるかもしれません。今回の例のように「最近金利が上がってきているけど、現在契約中の学資保険の満期保険金も上がるのではないか」と思われても不思議ではないでしょう。
しかし結論からいえば、金利が上がってきたからといっても、契約中の学資保険の満期保険金が上がることはありません。
反対に、金利が下がってきたからといっても、満期保険金が下がることもありません。同様に、金利が上がってきた(下がってきた)からといっても、契約中の学資保険の保険料が下がる(上がる)こともありません。
前章で、「予定利率とは保険商品を設計する際にあらかじめ見込んでいる運用利回りのこと」と解説しました。これが意味するのは、保険商品は特定の予定利率を基に設計されており、そこに組み込まれた予定利率は変更できないということです。つまり、すでに契約している保険は、金利変動の影響を受けないということです。
「予定利率を引き上げ」という言葉をニュースなどで耳にすることがあるかもしれませんが、新しい予定利率は新しく設計された保険にしか適用されません。もし、契約中の保険に予定利率の改定が反映されるとすれば、契約者が「金利変動リスク」を背負っている保険だと思っていただいて差し支えないでしょう。
金利は、保険料に影響を与えます。保険料は「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」を基に算出し、金利は予定利率に影響を与えるからです。金利と保険料は、金利が上がると(予定利率が上がり)保険料は下がるという関係にあります。
ただし、すでに契約した保険については、その後金利が変動しても保険料に影響を与えません。
予定利率は保険商品を設計する際に用いられる数値であり、すでに設計されている保険の予定利率が変更されることはありません。したがって、すでに契約している保険において、その後金利の変動により保険料や満期保険金が変動することはないでしょう。
近年、金利が上がってきていますので、今後加入する保険は改定された予定利率が採用されているかもしれません。その場合、これまでの保険より保険料が低くなるよう設計されている可能性があります。
金利の変動が保険の設計に影響を与えていることを理解していると、保険の説明の聞き方もこれまでとは違ってくるのではないでしょうか。本記事が保険を理解することへの一助となれば幸いです。
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役1級ファイナンシャル・プランニング技能士CFP(R)(日本FP協会認定)宅地建物取引士公認不動産コンサルティングマスター上級心理カウンセラー
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