11月2日(土) 8:00
<JLPGA最終プロテスト最終日◇1日◇大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)◇6602ヤード・パー72>
ラウンドを終え、アテスト(スコア申告)に現れた時、六車日那乃は悔し涙をこらえることができなかった。最終18番でボギーを叩き、その時、合格圏内と認識していたトータル3オーバーからトータル4オーバーにスコアを落としたからだ。
「終わったな、って。また1年を無駄にしちゃったって感じました」
最後のパーパットを外した瞬間の気持ちについては、こう振り返る。しかし、その後、この絶望の淵から這い上がることになる。奇しくも、この六車のボギーによりボーダーラインがトータル4オーバーまで下がることに。結果的に19位タイで、長かったプロテストに終止符を打った。合格が確定すると、報道陣の前でホッとしたように心境を明かす。「よかったという気持ちと…。泣いちゃダメですよね? よかったという気持ちと、ほんとうにいろんな人にありがとうという気持ちがあります」。今度はうれし涙で、声を詰まらせた。
3日目を終え、18位タイ。合格圏内で迎えた最終日だったが「74」とスコアを落とすことになった。「絶対にやってやろうという気持ちでスタートしました。思うようにはいかなかったけど、悪い流れが続いても最後まで頑張ろうと思っていました」。そんな諦めない姿勢が、天に届いたような“逆転劇”だった。
プロテスト受験は、これが5度目。初めての挑戦は、コロナ禍で21年の開催に延期となった20年度だ。ナショナルチームメンバーの一員で、プロツアーでも優勝争いを繰り広げる注目アマのひとりだったが、63位で失敗。その後も挑戦を続けるが、合格には手が届かなかった。
「1回目のプロテストに落ちた後は、(クラブを)振るのも怖かった。そこから普通に打てるようになるまでは大変でした」。つらかった日々を思い出すと、また涙声に変わる。これまでもプロテストの会場で何度も流した涙。しかし、ようやくスタートラインに立つことができた。成長を感じる部分について聞かれると、「人に頼らなくなったところ」と答える。「自分のことなのに人に頼っていたところがありました。スイングのことはコーチに相談すればよくなるから、と思っていたり」。メンタルの成熟が、“あと一歩”を乗り越える要因にもなった。
思い描く未来は、「上田桃子さんのようなトッププロになっていきたい」。同じ辻村明志コーチの指導を受ける姉弟子が目標だ。プロとしての第一歩は“悔し涙のちうれし涙”となった。ここからはたくさんのよろこびを、プロの舞台で感じていきたい。(文・間宮輝憲)