11月2日(土) 4:10
年金を65歳よりも早く60歳から受け取れる制度が「繰上げ受給」です。繰上げ受給は早く収入を得られるようになる一方で、受け取れる年金額が減るデメリットもあります。
日本年金機構によると、1ヶ月繰り上げるたびに0.4%の割合で減額していきます。もし65歳から60歳まで繰り上げると、「0.4%×12ヶ月×5年」なので24%の減額です。
なお、昭和37年4月1日以前に生まれた方の場合は、月に0.5%の減額率になります。
今回は、以下の条件で繰上げ受給をした場合の年金額を計算しましょう。
・年収は500万円
・22~60歳まで勤務
・60歳で繰上げ受給
・国民年金の保険料は満額支払い済み
・賞与は考慮しない
・年収は38年間変わらない
・老齢基礎年金額は令和6年度の金額とする
・厚生年金には平成15年4月以降に加入
・報酬比例部分を老齢厚生年金額とする
まず、国民年金を満額支払っていた場合の老齢基礎年金額は、令和6年度時点で月に6万8000円、年81万6000円です。
また、老齢厚生年金の計算の基礎となる報酬比例部分は「平均標準報酬額×0.005481×加入期間月数」で求められます。条件を基にすると、月収は約41万6667円のため、平均標準報酬額は41万円です。
計算式に当てはめると、「41万円×0.005481×456ヶ月(38年間)」なので約102万4728円になります。老齢基礎年金額と合計すると、65歳で受け取ったときの年金は約184万728円、月額約15万3394円です。
一方、同条件で60歳まで繰り上げると24%減少するため、受け取れる年金額は「184万728円×76%」で約139万8953円、月額約11万6579円になります。年間約44万1775円、月額約3万6815円の減少です。
もし85歳まで年金を受給すると、65歳から受け取り始めた場合は20年間で総額約3681万4560円ですが、60歳で繰上げ受給をすると25年間で約3497万3825円になります。結果として、繰り上げると総受給額が少なくなるケースもあるので、繰上げ受給をするのかは慎重に決めましょう。
総務省統計局の「家計調査 家計収支編 単身世帯(2023年)」によると、60歳以上で単身世帯の1ヶ月の平均消費支出は15万2743円でした。もし平均消費支出が1年間続いたとすると、年間183万2916円が必要です。
なお、実際の支出には保険料や税金などの非消費支出も含まれるため、さらに増える可能性があります。
貯蓄が300万円だと60歳からは2年に満たない程度しか持ちません。しかし、55歳で働いているときであれば、貯金はできます。もし先ほどの例と同じ年収500万円、月収が約41万円であれば、毎月5万円ずつ貯金に回すと60歳までの間で300万円貯金が可能です。
無理のない範囲ではありますが、貯金をすることで繰上げ受給をしなくても生活できる可能性はあります。受給時期をできるだけ遅くするためには、今からでも貯金を始めたほうがよいでしょう。
繰上げ受給は、65歳よりも前に60歳から年金を受け取れる代わりに支給額が早めた期間に応じて減少していく制度です。もし60歳まで繰り上げると、24%減額した年金額を受け取ることになります。
短期的な目で見ると早く収入を得られますが、長期的な目で見ると65歳で受け取ったほうが総受給額は多くなる可能性があります。繰上げ受給はあとから変更できないため、選択する前によく考えて決めることが大切です。
日本年金機構 年金の繰上げ受給
e-Stat政府統計の総合窓口 総務省統計局 家計調査 家計収支編 単身世帯 詳細結果表 年次 2023年 <用途分類>1世帯当たり1か月間の収入と支出 表番号2 男女,年齢階級別
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
■関連記事
65歳以降も「月収20万円」で働くつもりです。あまり稼ぐと年金が「一部停止」になるって本当ですか?