【第1話】から読む。
前回からの続き。オレはアキト。妹が2人いる、3人きょうだいの長男だ。3人ともそれぞれが自分の家庭を持っており、オレも結婚して高校生の娘が1人いる。実家の近くに住んではいるが、オレは実家と距離を置いている。というのも……親父がひとり暮らしをしているからだ。親父は昔から厳しい人間で、オレはずっと反発しながら生きてきた。妹のヒトミがときどき親父の面倒を見てやっているらしいが、オレは今さら世話をしてやる気もない。そうこうしているうちに、親父は亡くなってしまった。
ヒトミは高校のときに生徒会長をつとめたこともあるような、いわゆる優等生タイプだ。そんなヒトミを両親が溺愛するのも無理はないだろう。親は明白にきょうだい間で比較するようなことはしなかったが、やはりどこか肌で感じるものはあった。
「本当は大学に行きたいけど、高校卒業したら就職しようと思う」と話す下の妹のユイに、オレは何も言えなかった。「お父さんたちにガッカリされたくない」とも言っていたし、きっとユイにはユイなりの苦悩があったのだろう。
オレもユイも大人になってからは実家にまったく寄り付かなくなり、そうこうしているうちにお袋も親父も亡くなった。そして親父の葬儀後、ヒトミから「生命保険の保険証券が出てきた」と連絡があり、今度きょうだい3人で会うことになった。
いくらヒトミが特別可愛がられていたとはいえ、オレとユイだって親父の大切な子どものはずだ。お金がほしいわけじゃないが、親父がオレたち3人を平等に気にかけていてくれたということを実感したかったんだ。でも……。
オレが思っていたとおり、親父は遺産を三等分にはしなかった。大人になってからオレとユイは実家に寄り付きもしなかったのだから、当然の結果なのかもしれない。
しかしそれでも、「結局最後までヒトミのことが一番だったんだな」という気持ちでいっぱいになってしまった。オレは親父のいなくなったこの家で、ついアレコレと考えてしまう。
親父が幸せを願ったのは本当にヒトミだけだったのだろうか。それともオレたちのことも、少しは頭をかすめてくれたのだろうか。そのうち、この家も土地も手放すことになるだろう。まだ到底偲ぶ気になどなれないが、折り合いをつけつつ前に進もうと思う……。
【第6話】へ続く。
原案・ママスタコミュニティ脚本・motte作画・ちょもす編集・海田あと
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