第37回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された「お父さん」が10月31日、丸の内TOEIで上映され、監督・脚本を務めたフィリップ・ユンと、俳優のディラン・ソウ、ジョー・コクが上映後にティーチインを行った。
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本作は、香港電影金像奨で7部門を受賞した実録風犯罪映画「九龍猟奇殺人事件」などを手掛けたユン監督の最新作。香港のツェンワンで母親と娘が惨殺される事件が発生し、15歳の息子が犯人であることが判明する。被害者の夫かつ父であり、また、加害者の父でもあるユンは、最悪の悲劇を招いた原因は何だったのかを究明するかのように、裁判を傍聴し、収監中の息子との対話を試みる……。
ユン監督は「この映画をコンペに選んでいただきありがとうございます。そのおかげで来日できました。初めて映画祭に参加できて光栄です」と笑顔を見せると、壮絶な設定の作品について「この作品は実話に基づいて作られた映画です」と語り、「当事者のお父さんに会って、息子さんのこと、家族のことなど取材して脚本を書きました」と説明。
取材のなかで、ユン監督は「奥さんは亡くなっているのですが、奥さんに書いた手紙や、息子さんから送られた手紙もお父さんから見せてもらいました。そのなかには印象深い話がたくさんあり、どのように映画に落とし込むのかずっと考えていました」とストーリーラインを丁寧に構築したという。
映画を鑑賞した観客から「壮絶な物語の登場人物のオファーを受けたときの気持ちは?」という質問を受けると、母親役を演じたジョーは「最初に役柄の話を聞いたときは、それほど難しくはないのかなと思ったのですが、実際はとても大変でした」と苦笑いを浮かべる。
役作りについてジョーは「とにかく自分を空っぽにして、作り込まないことを意識しました。『アクション!』という言葉を聞いた瞬間に芝居に入って役になりきりました」とアプローチ方法を明かすと「現場には信頼できるユン監督や(父親役の名優)ラウ・チンワンさんがいた。対峙すれば、何かを感じさせてくれる。演じようとしなくても大丈夫でした」と絶大な信頼を寄せていたという。
同じ質問に息子役のディランは「オファーを受けたときはとても嬉しかった。僕にとって初めての映画だったので……」とはにかむと「僕の役は精神疾患を持つ役で、何を元に演じたらいいのか分からなかったのですが、物語の本質を考えると、これは父親と息子の関係が芝居の肝になると思ったんです。そう考えると、スッと役に入ることができました」と語っていた。
ユン監督は「香港では、こういった事件は何回も起きていました。現代人が患っている病のひとつ。いわゆる統合失調症と呼ばれる病気は、時々発作が起きると自身がコントロールできなくなる。そうして悲劇が起きているんです」と語ると「この映画をラウさん、ディランさん、ジョーさんと一緒に撮ることができて嬉しい。ジョーさんとは親友なんです。ジョーさんの家族には統合失調症の患者さんがいて、そのことで親友になりました。今回一緒に映画を作ることができて光栄でした。ひとつ夢が叶ったよう。ジョー大好き」といい、ジョーと熱い抱擁を交わしていた。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。
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九龍猟奇殺人事件
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