11月1日(金) 8:20
2040年、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳になる頃が、高齢社会のピークと考えられています。そして、その親の世代である団塊世代が75歳になるのが2025年です。目の前に超高齢化の波が押し寄せてきていますが、国は2025年をめどに、地域包括ケアシステムを構築しようとしています。
地域包括ケアシステムは、簡単にいってしまうと、地域全体で高齢者を支える仕組みのことです。
図表1は地域包括ケアシステムのイメージですが、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」と記されています。
図表1
出典:厚生労働省 地域包括ケアシステム
現役世代にとっては、高齢期のライフステージをイメージすることは難しいかもしれませんが、特に75歳以上の後期高齢者になると、老化や病気などにより、それまでと同じように暮らすことが徐々にできなくなってきます。
そのようなライフステージにおいては、ひとり暮らしは難しく、家族や地域の人々といった自分以外の人の支えがどうしても必要になります。このような高齢者を地域で支える仕組みを「地域包括ケアシステム」といいます。
図表1では、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」と記されています。この文章を分解すると、以下のようになるでしょう。
(1)重度な要介護状態となっても
(2)住み慣れた地域で
(3)自分らしい暮らしを
(4)人生の最後まで続けることができるよう、
(5)住まい・医療・介護・予防・生活支援が
(6)一体的に提供される
これをもとに老後の人生設計のポイントを整理すると、「最期を迎えるまでの間、自分らしく生きるために、どこでどのように暮らせばよいか」を考えておくことが、大切であると分かります。
要するに、老後のライフステージでは上記の考え方が基本軸になるため、このような体制を整備するために地域包括ケアシステムがあるということです。そう捉えると私たち個人も、地域社会のなかでどのように暮らすかを考えておく必要があることに気づかされます。
昨今、将来への不安から「お金をためよう」という心理が強く働いているように感じられます。少子高齢化社会の下では致し方ないことかもしれませんが、「老後が不安だから」などといった理由だけではっきりとした目的がないまま、お金をためること自体が目的化しているように見受けられます。
老後のお金をためる目的がはっきりと見えにくい場合、地域包括ケアシステムという社会的な仕組みのなかで、自分がどのように暮らしたいかを考えてみると、イメージしやすくなるかもしれません。
・病気になったら、地域医療(二次医療圏)のなかで、どの病院を利用することになるのか
・退院後、どこで暮らすのか(自宅、老健、特養、有料老人ホーム、サ高住など)
・介護が必要になった場合、どのように暮らしていく必要があるのか
・自宅の改修はどのようにしたらよいか
・誰と生きるのか、誰と暮らすのか(家族、友人、同僚、地域社会、ボランティアなどの人間関係)
・葬儀はどのように執り行うのか
・お墓はどのような形態にするのか
・相続や贈与による財産の移転をどうするのか
・誰に相談すればよいのか
このようなことを包括的に考え、対策を練るためにお金を準備します。このとき、単に「老後のお金」というと、漠然としたものになってしまいます。そうではなく、具体的なイメージに落とし込んでいくことが、老後のお金をためるうえで効果的なのではないでしょうか。
時代は、かなり速いスピードで変化しています。仕事柄、国の政策などを追っているとそう感じることが間々ありますが、国が想定している10年・15年先の未来を確認しながら、人生設計(ライフプラン)を組み立てていくと、大きく間違う可能性は減るでしょう。
4月に金融経済教育推進機構(J-FLEC)が新設され、今後、金融教育が積極的に推進されるようになります。その目的は「お金とは何か、何のためにお金を使い、ためるのか」などを自分で考えられるようになることです。
今回は「地域包括ケアシステム」という言葉を扱いました。新たな社会システムが構築されようとしています。お金の使い道としては、これを視野に入れて考えることが求められるようになるのではないでしょうか。
厚生労働省 地域包括ケアシステム
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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