亡くなった母が私と兄にそれぞれの名義で「200万円」ずつ遺してくれていました。このまま全額もらっても贈与税はかからないのでしょうか?

亡くなった母が私と兄にそれぞれの名義で「200万円」ずつ遺してくれていました。このまま全額もらっても贈与税はかからないのでしょうか?

10月31日(木) 2:10

親が亡くなってから、子どものために子ども名義で貯めていた預金通帳が見つかるケースがあります。 しかし、もし子ども名義だからとそのまま自分のものにしてしまうと、あとから税金申告が必要になる可能性があるため注意が必要です。今回は、親が遺(のこ)した子ども名義の預金通帳がなぜ親の財産なのか、また相続税の計算方法などについてご紹介します。

親が管理していたお金は親の財産

自分名義の通帳であっても、自分がその存在を知らず親が管理していたのであれば、親の財産として扱われます。被相続人名義以外の財産は、名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となるようです。
 
つまり、自分名義でも亡くなった母親が入金し、管理していた時点で通帳は自分のものではなく母親のものです。ほかの相続財産と合わせて相続税の計算をする必要があります。
 
なお、自分名義だからと通帳をこっそり持ち帰り、相続税の計算に含めなかったときは、加算税として過少申告加算税が課される可能性もあります。持ち帰らず、相続人たちと情報共有しておきましょう。
 

加算税とは

加算税は、申告をきちんと行っていない方に対して本来の税金とは別に追加で課される税金です。
 
もし、最初に申告した金額が50万円、申告できていない残額が70万円(本来の相続税額は120万円)だとすると、過少申告加算税は「50万円×10%+20万円×15%」で8万円です。
 
なお、状況に応じて適用される加算税の種類は異なるため、もし申告漏れが発生して指摘されたときはどれが該当するのか税務署に確認しましょう。
 

相続税の計算方法とは

相続税は、亡くなった方が保有していた財産すべてを合算した金額が、基礎控除額を超えていると課される税金です。基礎控除額は「3000万円+相続人数×600万円」で求められます。
 
今回は、以下の条件と仮定した場合、相続税額がいくらか計算してみましょう。


・相続財産は、子ども名義の通帳200万円を2人分と母親名義の預金500万円、2000万円の車、2000万円の家
・相続人は子ども2人のみ
・税額控除は考慮しない
・法定相続分と同じ分け方で財産を相続する

まず、相続した財産の総額は4900万円です。また、相続人が子ども2人なので基礎控除は「3000万円+600万円×2人」で4200万円になります。基礎控除額よりも相続財産が上回っているため、超えた700万円が相続税の課税対象です。計算方法については以下の通りです。
 

(1)課税総額700万円を法定相続人で分けて税額を計算

子どもA:350万×10%=35万円
子どもB:350万×10%=35万円
 

(2)それぞれの税額を合計したものが実際に発生する税額

35万円+35万円=70万円
 
なお、相続人にかかる税金は、この税金の合計額を実際に相続した割合で分割して求めます。今回の条件だと法定相続分と同じ分け方のため、半分ずつの35万円が1人当たりの税額です。
 
(1)で使用した税率は法定相続分に応ずる取得金額に応じて変動するため注意が必要です。
 

相続税を計算するときは総額を調べることが大切

先述したように、相続税は亡くなった方の財産すべてを足して求める必要があります。子ども名義の通帳を加算せずに申告したり申告しなかったりすると、過少申告や無申告として追加で課税される可能性があるため、注意しましょう。
 
特に、課税されると知らずに申告を忘れているケースがあるため、親が亡くなったときにお金を譲り受けた場合は、必ず申告しましょう。
 
国税庁が公表している「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、相続税の申告漏れなどで調査された相続財産のうち、31.5%が現金や預貯金の申告漏れでした。
 
預貯金の申告漏れになっている方は少なくないことが分かります。申告漏れを防ぐために、気づいていない親の財産がないか、調べることが大切です。
 

子ども名義でも親が管理していたら親の財産として相続税の課税対象

親が子ども名義でお金を遺していても、親が亡くなるまでその存在を知らなかった場合は親の遺産として扱われます。ほかの財産と合計して相続税の計算が必要です。相続税の基礎控除額は相続人数によって変わるため、税金の計算は相続人で内容を共有して行った方がいいでしょう。
 
なお、もし申告漏れがあると、追加で税金が課される可能性があります。あとから指摘されないためにも、見落としている相続財産がないのか、調べておきましょう。
 

出典

国税庁 令和4事務年度における相続税の調査等の状況(6ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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