10月31日(木) 3:00
出産後、育休を経て職場復帰を検討する際、フルタイムで働くか、短時間勤務をするか、どうしようか悩む方は多いのではないでしょうか。短時間勤務をすると、フルタイムで働いていたときよりも収入が減ることになるため、多くの家庭ではこの点が悩みの種ではありました。
そこで国は、このような問題を少しでも和らげるために、子どもが2歳になるまでの間、新たな給付として「育児時短就業給付」という制度を創設することにしました。
簡単にいってしまうと、この制度の特徴は「短時間勤務中に支払われた賃金の10%を国が持つ」というものです。図表1はそのイメージを示したものですが、賃金の10%が給付金として上乗せされることが分かります。
図表1
出典:こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」より「育児時短就業給付の創設」
短時間勤務中に支払われた賃金の10%が支給されると聞くと、「増えるからありがたい」と思う人もいるかもしれません。
確かにそのような印象でかまわないでしょうが、制度の趣旨には労働者のキャリア形成も含まれているため、キャリアの観点からも短時間勤務の意味を捉える必要があります。
国はこの制度の位置づけを、「休業<短時間勤務、短時間勤務<これまでの働き方」というように捉えており、本音では「キャリア形成を考慮すると、フルタイムで働いてもらう方がよい」と考えているようです。
しかしながら、「子どもが小さいうちはなるべく子どもに寄り添いたい」という親の気持ちも理解しているのでしょう。
このようなことから、中間的な位置づけとして「育児時短就業給付」という制度を創設するに至ったと考える必要があります。つまり、子育てとキャリア形成のバランスに対応するための方策といえます。
人口が減っていくなかで、子どもの数を増やし、また、労働力を増やそうという目的が「育児時短就業給付」制度の背景にあるように考えられます。
私たちは、この制度について、「お金がもらえるから短時間勤務で働こう」と考えるだけではなく、「将来、何のために、どのように働きたいか」というキャリア形成の観点からも捉えていく必要があります。
このように制度の目的を理解すると、お金だけで問題を解決しようとするものではないことが分かります。何のための制度であるのかを知り、そのうえで、金銭的な問題を解決していく……。このような視点が、今後、ますます求められてくることでしょう。
こども家庭庁 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要 育児時短就業給付の創設
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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