10月31日(木) 2:20
扶養照会とは、生活保護を申請した人の親族に、市区町村の福祉事務所が、その親族に対して経済的支援ができるかどうかを確認するための手続きです。日本の民法第877条では、直系親族には扶養義務があると定められています。
扶養照会が行われる際、福祉事務所は扶養義務者に対して、「経済的支援が可能かどうか」という確認の連絡をします。この手続きは、生活保護を受ける前に親族からの援助が可能かどうかを確認するために行われますが、扶養義務者が必ずしも扶養しなければならないというわけではありません。
扶養照会が届いた場合、扶養義務者は自身の生活状況や経済的事情を考慮し、扶養が可能かどうかを判断します。収入が高くても、支出が多く余裕がない場合や、親族との関係性が複雑な場合など、さまざまな理由で扶養を断ることができます。
その際は、その理由を自治体に正直に報告することが求められます。扶養義務は親族間の義務ですが、強制されるわけではなく、自治体が最終的に生活保護の支給を判断します。
年収が800万円程度あっても、必ずしも扶養をしなければならないわけではありません。扶養照会が届いた際、自身の生活に影響が出る可能性があれば、扶養を拒否する正当な理由としてみなされることもあります。例えば、扶養義務者が以下のような判断基準に当てはまる場合が挙げられます。
・被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、専業主婦・主夫等、未成年者である
・70歳以上の高齢者である
・扶養義務者に借金を重ねている
・扶養義務者と相続で対立している
・10年程度音信不通で申請者と扶養義務者の間で縁が切られている
・夫の暴力から逃れてきた母子
・虐待等の経緯がある
実際の扶養義務については、収入だけでなく、扶養者自身の生活状況や申請者との関係も考慮されます。自治体は、扶養義務者の回答を基に総合的に判断し、扶養が難しいと認められた場合でも、生活保護の支給が検討されるため、「収入が高いから必ず扶養しなければならない」ということはありません。
扶養照会を受けて、対応に迷う場合は、まずは市区町村の福祉事務所に相談しましょう。また、弁護士や税理士などの専門家から、生活状況や扶養義務の法的側面・経済的側面を考慮したアドバイスをもらうことも1つの手です。
特に、「収入はあるが、自分の生活にどの程度の影響が出るのか?」といった具体的な悩みについて、個別の事情に合った解決策を提案してもらうことができます。専門家に相談することで、法律上の権利や義務を正確に理解し、無理のない選択をするための手助けが得られます。
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
法務省 家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた検討(1)
執筆者:西村りえ
2級ファイナンシャルプランナー、AFP
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