10月30日(水) 22:00
図表1の内閣府が発表した「令和5年版高齢社会白書」によると、2021年(令和3年)における平均寿命は、男性で81.47歳、女性で87.57歳だそうです。一方、1970年(昭和45年)の平均寿命は、男性で69.31歳、女性で74.66歳でした。
つまりこの51年間で、男性は12.16歳、女性は12.91歳、寿命が延びたわけですが、同時に男女ともに、少なくとも「約12年」という膨大な時間が、新たに生まれたことになります。
図表1
出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書」
それでは、平均寿命は今後どのように推移すると考えられているのでしょうか。
今から数えて46年後の2070年(令和52年)、男性の平均寿命は85.89歳、女性は91.94歳と推計されています。2021年(令和3年)と比較すると、男性で4.42歳、女性で4.37歳と、寿命がさらにおおむね4歳以上延びると考えられています。
現在、一般的には65歳から「老後」に入ると考えられています。
しかしながら、「65歳を過ぎたら高齢者となり、そこからが老後の始まり」という考え方は、今や現実に即しているとはいえないかもしれません。65歳を過ぎても、元気で若々しく活動的に生活を楽しんでいる高齢者は多いからです。
2021年(令和3年)4月1日、改正高年齢者雇用安定法が施行されました。これにより、65歳を定年とするのではなく、70歳を定年とする企業が出はじめています。
おそらく「70歳まで働くことが当たり前」という認識、つまり「70歳からは高齢者となり、老後が始まる」という考え方は、数年後に定着するようになるでしょう。
老後に関して、現時点では制度的にはここまで進んできていますが、同時に議論されていることとして、「年金の支給開始年齢の引き上げ」があります。
これは68歳や70歳から年金を支給するという考え方であり、かなり以前から検討課題になっています。これも含めて考えると、ひょっとしたら今後どこかの時点で、私たちは「70歳で会社を定年退職し、70歳から年金をもらう」という時代を生きることになるかもしれません。
仮に「70歳まで働く」という人生が今後待ち受けているとするならば、私たちはライフプラン(人生設計)をある程度見直す必要が出てくるでしょう。
社会に出る年齢を18歳とした場合、70歳までの52年間、私たちは何らかの形で働くことが求められます。ここでは、計算しやすいように20歳から70歳までの50年間を「働く期間」としましょう。
50年という期間は、時代が変化するには十分な時間といえます。とはいえ、新しい技術が開発され、産業構造が転換し、人々の価値観やライフスタイルが変わる……といった時代の流れが一巡するのに10年程度を要するとした場合、少なくとも50年間のうち5回ぐらいは「時代の転換点」が訪れると考えられるかもしれません。
10年前、20年前の価値観が様変わりしていることは、現在、私たちの日常生活を取り巻く環境を見渡しても、容易に想像することができるでしょう。
しかし私たちは、日常生活に何らかの変化が生じて初めて、その変化に気がつきます。この原因は、単純に「日常生活に忙殺され、周りを見渡す時間的な余裕があまりないから」だと考えることができます。
それでも、時代は長い周期で変化しつづけます。特に、働く上での環境が10年や20年といったスパンで変わることは、私たち働き手にとって非常に重要な意味を持ちます。端的にいえば、働く上で必要な知識や技術が新たに更新される、ということです。
それに伴い、私たちは知識や技術を新たに身につけたり、それらの精度を高めたりする努力が必要になります。
つまり、老後の始まりが70歳に後ずれするということは、働く期間が長くなり、その分、求められる知識や技術が新たに更新される可能性が高まり、学ぶ機会が増えることを表しています。
このような考えのもと、政府は社会人になっても学び直すことができるよう、雇用保険制度などを改正し、労働者の修学機会を支援しています。
学ぶ機会が増えることは、私たちにとって、成長するチャンスが訪れることを意味します。仮に、10年から20年のスパンで就業環境が変化するならば、私たちは新たな就業機会を得るために、10年から20年に1度のペースで新たな知識や技術を身につけ、自分自身の労働価値を高めるチャンスを得ることができます。
70歳まで働くというと、「そんなに長く働くなんてできない」と悲観的に思う方もいるかもしれません。しかし、考えようによっては「学ぶ機会が増えることでチャンスが広がる」と、前向きに受け取ることもできます。
時代は変化しつづけます。今後、超高齢社会が訪れることを前提に考えるならば、時間が増えることはある意味、よいことではあります。ますます増えると考えられる時間を有効に活用することで、自分の人生がより豊かになるよう、ライフプラン(人生設計)を見直そうとする動きも、今後は加速するのではないでしょうか。
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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