【全日本大学駅伝】出雲敗戦の雪辱を期す青山学院大注目される原晋監督の采配とカギを握る鶴川正也

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【全日本大学駅伝】出雲敗戦の雪辱を期す青山学院大注目される原晋監督の采配とカギを握る鶴川正也

10月31日(木) 7:20

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出雲駅伝1区区間賞の鶴川正也に、原晋監督からのさらなる期待がかかるphoto by SportsPressJP/AFLO

出雲駅伝1区区間賞の鶴川正也に、原晋監督からのさらなる期待がかかるphoto by SportsPressJP/AFLO





11月3日に行なわれる全日本大学駅伝(名古屋・熱田神宮→三重県・伊勢神宮内宮宇治橋前/8区間106.8km)。全国8地区の代表25校と日本学連選抜、東海学連選抜の計27チームによる日本一をかけた熱き戦いは、どのような展開となるのか?

春先から戦力の充実ぶりを見せつけてきた青山学院大は、出雲駅伝で3位となり、三冠の目標は消滅。しかし、「負けっぱなしは、ダメ」と勝負師・原晋監督はその悔しさを晴らすべく、全日本に並々ならぬ意欲を見せる。今季好調の鶴川正也の起用法も含め、その手腕は、いかに?

【「鶴川にはもっともっと突き放してほしかった」】1月3日、大手町で笑おう。

この言葉が2024年度、青山学院大のスローガンだ。

「もちろん優勝を目指していますが、走れなかったメンバーも、笑って1月3日の大手町を迎えられるようにという意味も込めています」

そう話してくれたのは、今年度の田中悠登キャプテンだ。

このスローガンからもわかるように、青山学院にとって最大のターゲットは箱根駅伝での優勝だ。前回の箱根では、本命の駒澤大を3区で逆転してから首位を譲らずに優勝。しかも主力選手の多数が残り、トラックシーズンでも好調ぶりを見せつけたことで、「学生駅伝三冠」に対する期待が高まっていた。

しかし、出雲駅伝で敗れた。

まさかの3位。原晋監督は苦虫をかみ潰したような顔を浮かべ、レース後にこう話した。

「"たすき際"が弱いんだな。中継点近く、たすきを渡す手前でのまとめ方。1区の鶴川(正也・4年)だって区間賞を獲得したけど、日本選手権の5000m4位に入った実力があるんだから、もっともっと突き放してほしかった。それが本音」

優勝した國學院大、2位の駒澤大に対して後手を踏んだシーズン初戦となったが、全日本ではどう巻き返しを図っていくのか。出雲からメンバーを変えるといった大胆な采配が見られたりするのだろうか。原監督は、そのアイデアを否定する。

「基本的には出雲を走ったメンバーを中心にして、全日本のオーダーを考えていきます。ただ、國學院さんは強いし、駒澤さんも秋に入って状態を上げてきたのがわかりました。全日本ではウチとしても出遅れるわけにはいかないから、1区から2区、3区と頭からいい選手を並べていかないといけないでしょう」

原監督は「出雲では一度も勝ったと思った瞬間がなかった」と話していたが、その要因は前半で「主導権」を握り損ねたことにある。

主導権。

実は、昨年の全日本でも青学大は後手を踏んだ。1区から駒澤が区間賞を獲得、青学大としては早々に主導権を握られてしまった。駒大はさらに2区・佐藤圭汰、3区・篠原倖太朗とエースを惜しみなく投入してきたこともあり、青学大は3区の時点でちょうど1分差をつけられてしまった。

「あの時点で、勝負あったよね」

これはレース直後の原監督の述懐である。

今年はこの逆のパターンで仕掛けたい。それが原監督の思惑ではないか。出雲駅伝で実現できなかった先制攻撃を仕掛けていくと予想する。

今年の青学大で、相手に大きなダメージを与えられる力を持つのは次の3人だ。

鶴川正也(4年)

太田蒼生(4年)

黒田朝日(3年)

このなかでは、太田が距離の長い区間に適性があるので、勝負どころの7区か、アンカーの8区での起用が予想される。

そうなると、鶴川と黒田の起用区間がどうなるかが気になる。

参考になるのが昨年、原監督が全日本で組んだオーダーだ。

1区・若林宏樹(当時3年)→2区・黒田→3区・佐藤一世(当時4年)

1区では若林が駒大とは8秒差の区間8位。続く2区では黒田が佐藤圭汰相手に好走したものの、16秒差の2位でタスキをつなぐ展開となった。

どんな展開になったとしても、黒田なら流れを作れる。経験値も考慮して、黒田は2年連続で2区を担当するのではないか。そこで問題となってくるのが鶴川の起用区間である。

1区か、3区か。

【輝き放つ鶴川がキーマンに】昨年まで、鶴川は熊本・九州学院時代の輝きを失っていた。

東洋大に進んだ石田洸介と世代トップを争う速さ、強さがあった。しかし、青学大に入ってからは思うように結果が出せず、初めて駅伝を走ったのは去年の出雲駅伝の6区。だが、区間7位とここでも結果を出せなかった。鶴川は言う。

「自分に腹が立ってました。出雲のあと、練習で出力を大きくしたら、ケガをしてしまって......。箱根駅伝でチームが優勝したのはうれしかったですが、自分は走ることさえできず、情けなくて、情けなくて、陸上をやめようとさえ思いました。最終的には、陸上が好きなので、戻ってきたんですが」

今年は4年目にして自分に最適の練習方法にめぐり合えたこともあり(単独でポイント練習する機会が増えたのがよかったという)、トラックで結果がついてきた。関東インカレ2部5000m優勝、そして日本選手権では13分18秒51の青学大記録をマークして4位に。残すは駅伝の結果だ。

「今年は区間賞、3つ取ることが目標です」

出雲駅伝前に、鶴川はそう話していたが、出雲の1区では公約どおり区間賞を獲得した。ただ、原監督はこの鶴川の走りにはやや不満が残ったという。

「区間賞が欲しかったこともあって、仕掛けるタイミングが遅くなったんじゃないかな。残り1kmではなく、残り2kmから行っても区間賞は獲れたでしょう。全日本からは、自分のことだけでなく、チームの流れを考えた走りをしてほしいのよ、鶴川には」

さて、出雲の経験を生かして、全日本でも1区でいくのか。ただし、区間距離が9.5kmと短く、大きな差をつけるのは難しい面もある。それならば、3区で決定打を放つ戦略もあり得る。

今回、青学大の焦点は鶴川の起用区間にある。鶴川と黒田の「コンボ」が國學院、駒澤に対して主導権を握れるかどうかが序盤のポイントとなる。

中盤の4区から6区までの「つなぎ区間」とされる3区間は、青学大の誇る選手層がモノを言うはずだ。レースウィークに入って、原監督は何人かの1年生を起用することを示唆しており、5000mで日本高校歴代2位の記録(13分28秒78)の記録を持つ折田壮太らがデビューする公算が高まった。1年生が力を発揮すれば、つなぎ区間がアドバンテージに転じる可能性もある。

そして7区、8区では太田がライバルたちと、どのような争いを繰り広げるのか。鍵は、やはり序盤である。

出雲の敗戦から3週間。

「負けっぱなしは、ダメ。青学の存在感を見せないと」

鶴川というエースを、どのような「札」として使うのか。原監督の采配に注目したい。

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