年収900万円以上になると何が「損」する?高年収になるほど少なくなる「控除」と「手取り」とは

年収900万円以上になると何が「損」する?高年収になるほど少なくなる「控除」と「手取り」とは

10月31日(木) 0:00

税金の計算をする際、さまざまな所得控除や税額控除が使われます。適用される所得控除の金額は収入によって変わりますが、一定金額以上の年収になると控除される割合が減るため、計算をするときには注意が必要です。 人によっては年収が増えることで、給料から引かれる割合が増えたと感じる場合もあるでしょう。今回は、年収が900万円以上になると減少する控除の種類や、引かれる税額などについてご紹介します。

年収が900万円超えになったら変わること

所得控除は、年収の高さに応じて上限が定められていたり、控除される金額が低くなったりするケースがあります。いくら変わるのか知っておくと、引かれる税額がどれくらい増えるのかも計算しやすくなるでしょう。
 

給与所得控除が上限に達する

給与所得控除は、社会保険料や税金などが引かれる前の年収を基に計算される所得控除です。年収に応じて控除される金額は変動し、控除上限額の境目は年収850万円となっています。
 
国税庁によると、年収660万1円~850万円の範囲では給与所得控除額は「収入金額×10%+110万円」ですが、850万円を1円でも超えると一律で195万円です。そのため、900万円以上に年収が増えても控除額が変わらず、税額負担が大きく感じるケースがあります。
 

配偶者控除が低くなる

配偶者控除は、本人と生計を同じくする配偶者の合計所得金額が年間48万円以下、給料のみを受け取っているなら年収103万円以下だと適用される所得控除です。本人の合計所得金額で適用される控除額が異なります。
 
合計所得金額とは、給与所得や事業所得など総合課税の所得に、退職所得金額や山林所得金額を合計した金額です。所得税における合計所得金額ごとの控除額は以下のようになります(一般の控除対象配偶者の場合)。


・900万円以下:38万円
・900万円超950万円以下:26万円
・950万円超1000万円以下:13万円

なお、住民税における配偶者控除では一般の控除対象配偶者の控除額が最高33万円など、所得税の配偶者控除と金額が異なりますが、本人の合計所得金額が900万円を超える場合には同様に控除額が減少していきます。
 

年収800万円と年収900万円の引かれる金額の差

今回は、次の条件で年収800万円と年収900万円の税額や社会保険料額の違いを比較しましょう。


・賞与は考慮しない
・東京都在住40代
・控除対象配偶者の年齢も40代
・適用される控除は給与所得控除、社会保険料控除、配偶者控除、基礎控除のみ
・健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料は全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を参照

条件を基にした各金額は表1の通りです。
 


※筆者作成
 
年収800万円の方だと、年収から引かれる社会保険料、所得税、住民税は合計202万3248円で、年収の約25%が差し引かれている計算です。年収が900万円に増えると、年収から引かれる社会保険料、所得税、住民税の総額は234万6620円、年収に対して約26%になります。
 
なお、今回はあくまで最低限の控除が該当した場合なので、ふるさと納税やほかの控除も適用されると差は変動する可能性があります。
 

年収が900万円超えだと控除額が実質的に減る可能性がある

年収900万円台になると、給与所得控除が上限額に達しているため所得から引かれる割合が少なくなっていきます。また、合計所得金額が900万円超えになると、配偶者控除も減少するため、人によっては税額が多く引かれていると感じる方もいるでしょう。
 
年収800万円のときの税額に比べると、年収が900万円に増えた方が税額の割合は1%ほど多くなります。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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