10月30日(水) 3:10
図表1は、改正後の育児休業給付の給付イメージを示すものです。厳密に見ると、図表1では育児休業給付金の制度が完全に描かれているわけではなく、今回の改正点がどこにあるかを強調するものとなっています。
図表1は横軸に出産後の経過期間を取り、上段を母親に対する給付率、下段を父親に対する給付率としています。
またこの図で示しているのは、「母親が産休を終えてから28日間に当たる期間と、出産後8週間が経過する前の28日間で父親が、それぞれ育休を取得した場合に、給付率が80%になる」という事例です。
図表1
出典:こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
図表1の事例について、もう少しかみ砕いて説明しましょう。
母親の場合……子どもが生まれました。8週間が経過しました。その後育休を取ると、育休開始から28日間は給付率が13%増えます。
父親の場合……子どもが生まれてから8週間のうちに、28日間仕事を休むと、給付率が13%増えます。
このような条件の下で、結果として夫婦ともに給付率が80%になる……という考え方です。
もう少し正確に、改正される内容を確認していきます。この段落では制度で用いられている説明文を、条件ごとに分けたうえで使うため、難しいと感じる場合は、図表1と合わせてイメージしてみてください。
図表2
(1)子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、
(2)被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、
(3)最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、
(4)育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げることとする。
※配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる。
出典:こども家庭庁「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要」
図表2のように文章を分解すると、この改正内容は、4つのポイントに分けることができます。図表1と合わせて、確認してみましょう。
これは「父親は子どもが生まれてから、母親は産前・産後休業(産休)期間のうち、産後休業(出産後8週間)が過ぎた後に育休を取得する」という意味になります。父親は子どもが生まれてから、母親は産休が終わってから、育休を取得する……とかみ砕いて理解してください。
図表2の文章では、「夫婦2人」について「被保険者とその配偶者」と記されています。これは例えば、夫が「雇用保険の被保険者(雇用保険に入っている人)」で、妻が「夫の配偶者」と解釈できます。つまり、夫婦ともに14日以上育休を取った場合というのが条件の一つになります。
先ほど、「夫婦ともに14日以上育休を取った場合」と書きましたが、これには期間の制限があり、最大で28日間、賃金の13%が上乗せ支給されます。つまり約1ヶ月分は、賃金の13%が育児休業給付金に上乗せされることになります。
改正後の育休制度では、条件に当てはまるような育休を取得した場合、夫婦ともに賃金の80%相当額が支給されます。これは手取りで考えた場合、社会保険料の免除なども考慮すると、実質的な手取り額は減らないということになります。
以上まとめると、父親は子どもが生まれてから、母親は産休が終わった後で、夫婦でそれぞれ育休を取っても、手取り金額は減らないということになります。
今回の改正のポイントは、「子どもが生まれた後、父親に積極的に育休を取ってもらいたい」ということでしょう。現行の制度では13%の上乗せ部分がないため、これを付け加えることで男性の育休参加を促進しよう、という意図が見えます。
確かに子どもが生まれてからの最初の1ヶ月(図表1では父親の育休期間に該当する部分)は、家計面で大変な部分もありますが、このような改正をするなら、子どもが生まれて1ヶ月を過ぎたどこかの時点でも、父親が育休を取得した場合に上乗せされるようにしたほうが、子育て世帯にとっては助かるのではないでしょうか。
育児休業給付金については、改正をしても家計管理がややこしくなると懸念されるので、あまり複雑な仕組みにしないほうが、国民にとってはよいように考えられます。
なお、今回取り上げた「育児休業給付の給付率の引き上げ」は、2025年の4月1日に施行されることが予定されています。関心のある方は詳細な内容を事前に確認しておくとよいかもしれません。
こども家庭庁 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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