場所をソフトバンクの本拠地・福岡に移して行なわれた日本シリーズ第3戦。DeNAは10月12日以来となる東克樹が先発。7回を投げ10安打を浴びるも、1失点に抑える好投。また打つほうでは、リードオフマンの桑原将志が決勝ホームランを含む2安打と活躍。投打がしっかりかみ合い、DeNAが4対1で勝利。日本シリーズ初勝利を挙げた。勝敗を分けたポイントはどこにあったのか。ソフトバンク時代に日本シリーズを経験している森福允彦氏に解説してもらった。
日本シリーズ第3戦で好投したDeANの東克樹photo by Kyodo News
【嫌な流れを断ち切った東克樹の粘投】
──日本シリーズ第3戦目でDeNAがようやく1勝しました。勝因はどこにあったと思いますか。
森福
先発した東投手の粘りの投球に尽きます。
──東投手は太ももの肉離れで、阪神とのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦以来の登板となりました。
森福
コンディションは万全ではなかったと思います。それでもしっかりコントロールしていましたし、7回を投げて10安打を許しましたが、先頭打者はひとりも出していません。ソフトバンクの強力打線を相手に、ある程度打たれることは想定していたと思うのですが、それでも先頭打者をしっかり打ち取ったことで、気持ちに余裕が生まれた。そこが一番大きかったですね。
──初回に1点を先制した直後、すぐに同点にされるなど、嫌な流れだったと思います。
森福
ゲッツーかなと思ったら、ショート・森敬斗選手がファンブルしてランナーを残し、近藤健介選手のタイムリーで同点。もしあそこでもう1点追加されていると、流れは一気にソフトバンクに傾いていたんじゃないかと。失点こそしましたが、よく同点でとどめたなと思います。
──DeNAは3回表、4回表と2イニング連続して無死一、二塁のチャンスをつくりながらも無得点。ピッチャーにとっては、厳しい展開だったと思います。
森福
東投手も勝ち越されると厳しくなるのはわかっていたはずです。だからといって、慎重になりすぎることなく、しっかりゾーンで勝負できていました。ランナーは背負うのですが、ストライクで勝負できているからリズムは悪くならない。「これぞエースピッチング!」だったと思います。
──ソフトバンク先発のスチュアート投手のピッチングはどうでしたか。
森福
4回を投げて、失点こそ初回の1点のみでしたが、四球でピンチを招くなど、ストライクとボールがはっきりしていました。あれだと野手はリズムに乗れないですし、攻撃にも影響を与えてしまうという判断で、小久保裕紀監督はスパッと交代したのだと思います。
──5回からスチュアート投手に代わり、大津亮介投手がマウンドに上がりました。先頭の桑原選手にいきなりホームランを浴び、さらに筒香嘉智選手の犠牲フライで2点を奪われました。
森福
大津投手にとっては初めての日本シリーズというか、CSでも投げていない。もちろんしっかり準備はしていたと思うのですが、緊張感もあったと思いますし、しかも打席には初回に二塁打を打って、守備でもダイビングキャッチのビッグプレーをしている桑原選手。勢いに飲まれた部分はあったかもしれないですね。
──大津投手はもともとリリーフとして活躍していましたが、今季は先発として投げています。久しぶりのリリーフ登板でしたが、その影響は感じましたか。
森福
リリーフで登板したことよりも、短期決戦で初めて投げることのほうが大きかったと思います。CSを経験していれば、また違った感覚で投げることができたと思うのですが、初登板が日本シリーズの、しかも同点の場面というのは、リリーフの経験があるとはいえ簡単な登板ではなかった。ただ小久保監督としては、流れを変えてほしい、勢いを持ってきてほしいという思いで大津投手を起用したはずですし、それだけの信頼があったということです。
【第4戦のカギは山川穂高】
──敗れはしましたが、ソフトバンクは大津投手をはじめ日本シリーズ初登板のピッチャーが多かった。そこに関しては、今後の戦いにつながっていきそうですか。
森福
それはあります。岩井俊介投手はひとつ四球を与えましたがしっかり押し込めていましたし、前田純投手は2イニングを無安打無失点に抑えました。この先、どんな展開になるかわかりませんが、日本シリーズを経験したというのは大きな武器になります。そこは収穫だったと思います。
──本拠地初戦に敗れましたが、対戦成績は2勝1敗でまだ勝ち越しています。ソフトバンクにとっては、そこまでダメージの残る試合ではない?
森福
ホーム初戦で負けたのは、ダメージが残るというより、嫌な感じではあると思います。ソフトバンクは第2戦に勝ちましたが、5回以降はひとりもランナーを出していない。そして第3戦は10安打を放ちましたが、得点は初回の1点だけ。流れとしては、嫌な展開ではあるんです。敵地で連勝したことで、一気にソフトバンクが押し切るんじゃないかという雰囲気がありますが、決していい流れではないことは間違いないです。だからこそ、第4戦はものすごく大事な試合になります。
──DeNAとしては、1勝したことでいい雰囲気のまま第4戦に臨めそうでしょうか。
森福
本拠地で連敗を喫しましたが、1本出ていればわからない展開に持ち込んでいましたし、DeNAらしさは十分発揮できていたと思います。第3戦にしても序盤、中盤、終盤にしっかり得点を奪っている。第4戦で勝利すれば、DeNAの流れになる可能性は大いにあると思います。
──第4戦の見どころはどこになると思いますか。
森福
ソフトバンクは4番の山川穂高選手が打てるかどうか。シーズンも彼の打棒で勝ってきたわけですから、勝負どころで山川選手に一本出ると、ソフトバンクは優位に試合を進められると思います。DeNAは細かいミスをどこまで減らせるか。守備だけでなく、走塁、バントなど、記録に表れないものも含め、結構ミスが目立っています。言い換えれば、ミスをなくせばもっと自分たちのペースで試合を進められていたかもしれません。DeNAは第4戦に勝てば、再び本拠地に戻れるわけです。モチベーションは高いと思います。
森福允彦(もりふく・まさひこ)
/1986年7月29日、愛知県生まれ。豊川高からシダックスに進み、2006年の大学・社会人ドラフトでソフトバンクから4巡目で指名され入団。10年頃から中継ぎ投手として頭角を現す。11年にはセットアッパーに定着し、チームの日本一に貢献。13年にはWBC日本代表に選出。16年オフにFAで巨人に移籍。19年に現役を引退した
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