“1ミリ”の世界で奮闘米ツアー初…女性スタッフがZOZOの全ホールカップを設置

米ツアー初!女性スタッフが全ホールのホールカップ設置を行った(撮影:岩本芳弘)

“1ミリ”の世界で奮闘米ツアー初…女性スタッフがZOZOの全ホールカップを設置

10月30日(水) 12:17

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<ZOZOチャンピオンシップ最終日◇27日◇アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブ(千葉県)◇7079ヤード・パー70>

最終ターゲットである“ホールカップ”を毎日切り直すメンテナンス作業を、カップ切り(グリーンセットアップ)という。失敗が許されない“一発勝負”のプレッシャーがかかる重要な仕事だ。



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今年でPGAツアーとZOZOの契約が満了となり、最後の開催となった「ZOZOチャンピオンシップ」では、アコーディア・ゴルフの女性コース管理スタッフ3人がすべてのホールを担当。女性だけでカップ切りを行うのは米国男子ツアーでは初となった。

コース管理業務は米国、日本ともに男性の割合が圧倒的に高い。その中で、アコーディア・ゴルフはかねて女性の起用を積極的に行ってきた。昨年大会の時にはすでに女性チームの構想を描いており、今回、それが実現したかたちだ。

作業をしたのは、2019年の第1回大会から担当しており、今年で5回目の尾崎めいさん、2回目となる高橋歩美(あゆみ)さん、初めてとなった金丸綾可(かねまる・あやか)さんの3人だ。

尾崎さんは普段は千葉県のニュー南総ゴルフクラブで働いている。この業界に入った理由は「学生時代、農学部にいたので、そこで得た知識を生かしたいと思ったこと、外で体を動かすほうが合っていると思い、この仕事を選びました」。コース管理課では珍しい女性社員の一人となった。

ZOZOの前にも2017、19年に日本で開催されたPGAツアー・チャンピオンズ(米シニアツアー)「マスターカード・ジャパン選手権」でカップ切りを経験。「ZOZOチャンピオンシップが習志野で開催されるとなったタイミングのときに、その実績を見込まれて担当となりました」。米ツアーのホールカップをセッティングした経験は7回。そんな尾崎さんに“女性ならではの工夫”について聞いてみると「きちょうめんさというのは、男性よりはあるのかな、と。周囲のリアクションを見て感じます」という。

「カップの深さだったり、(カップの)フチ周りのトリミングだったり。トリミングは小さいハサミで、カップの内側に少し飛び出た芝生を切るという作業があるんですけど、そのあたりの集中力というのは“女性ならでは”と感じています。本当に短いので、眉切りハサミみたいなので切っていますよ」

カップをグリーンに入れたあと、フチの内側に短い芝生がはみ出る。その芝を小さいハサミで1本ずつ丁寧に切っている。切るときはフチに跡をつけないように、芝生が1本でも残らないようにトリミング。細かい仕上げ作業は女性の強みとも言える。

「1ミリ単位で深かったり浅かったりすると『何番のカップが浅い』など、PGAツアーのコース担当者から指摘があるんです。PGAツアーさんがそういうところを重視していることが、トーナメントを通してわかりました」。カップを設置したあと、PGAツアーのコース管理担当者が入念にチェック。わずか1ミリのズレも見逃さない。少しのミスも許されないプレッシャーのなかで、4日間をやり抜いた。

通常営業では「気にしないわけではないけど、そこまでではないんです。1~2ミリの誤差で怒られるほどではないですし、基本的にはカップを切った人のさじ加減なんです。多少、浅かろうが深かろうが、営業自体にすごく影響があるわけではない」というが、トーナメントとなると話が変わる。「通常営業のときにNGとされる範囲と、PGAツアーのときにNGになる範囲が全然違う」と世界の舞台で求められるコース管理の技術は高い。


22年大会ではバンカーの整備を行い、昨年からカップ切りの担当をしている高橋さんはこの業界に入って3年目。昨年は先輩の尾崎さんとアウトコースを二人で設置したが、今年は独り立ちとなった。「PGAツアーという大きな大会で、関わっている人の多さもケタ違い。お客さんの数も多いし、緊張のあるなかで作業することが大変でした」とプレッシャーを感じていた。

「あとで試合の動画を見たり、実際に少し見に行ったときに『ちゃんとカップに入ってくれた、良かった』と安心していました(笑)」。自身が掘ったカップに世界のトップ選手たちが次々とボールを入れていく姿を見て、安どと達成感にあふれていた。

金丸さんも入社3年目で、カップ切りを担当したのは今年が初めて。「カップ切りの作業はゴルフ上のコース管理業務のなかで一番基本となる業務なんですけど、求められる精度、方向性が違いました。そこに近づけられるようにカップを切るということは、普段とは違う感覚でした」と振り返る。

この4日間でやりがいを感じたことがある。「1ミリ単位の調整だったり、ピンが真っすぐ立てられるというところに微調整が必要になるときと、案外すんなりできるときがあるんです。すんなりとできたときは、『これがやりたかったんだ!』という達成感がすごくありました」と笑顔を見せた。

先輩として二人を指導してきた尾崎さんは、成長した姿を見て目を細める。

「いままでは自分がカップを切る立場だったんですけど、去年、今年はどちらかというと“後輩育成”というか、若手に自分が培ってきた技術だったり、そのノウハウを伝えることに重きをおいた。今回、9番、18番のカップを切っている(二人の)姿を見て、成長を感じた。うれしかったですね」と感極まった様子だった。

“働く女性”の活力が評価されるこの時代。ゴルフ界も例外ではない。(文・高木彩音)


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