10月30日(水) 2:20
定年後も賃貸で住み続けることは可能ですが、賃貸契約の審査基準が厳しくなる可能性があります。その理由として、老後の収支のバランスが関係しています。
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、定年後に働かずに生活をした場合の家計収支は、表1の通りです。
表1
65歳以上の夫婦のみの無職世帯 | 65歳以上の単身無職世帯 | |
---|---|---|
収入 | 24万4580円 | 12万6905円 |
支出 | 28万2497円 | 15万7673円 |
差額 | 3万7917円の赤字 | 3万768円の赤字 |
出典:総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」を基に筆者作成
定年後に働かず年金のみで生活する場合、毎月約3万~4万円の赤字となるため生活が厳しくなることが分かります。そのため、年金以外にもある程度の収入が見込めないと賃貸契約は難しくなるでしょう。
ここでは、定年後の収支のバランスを踏まえたうえで、賃貸契約が難しくなる具体的な理由を解説します。
高齢者は若い世代に比べて、物件内での事故や孤独死のリスクが高いと見なされることが多く、その結果、賃貸契約を敬遠される場合があります。万が一室内で亡くなった場合、新しい入居者を見つけるまでに金銭的・時間的負担が生じるため、貸主は慎重になるのです。
定年退職後は、現役時代と比べて収入が大幅に減少するため、家賃を安定して支払うことが難しい場合があります。また、健康状態が悪化する可能性があり、医療費や介護費などの支出が急増すると家賃の支払いが困難になるケースも少なくありません。このように家賃滞納のリスクが高まるため、賃貸契約を断られる可能性があります。
賃貸契約では、入居者が家賃を滞納した場合に備え、連帯保証人を立てることが一般的です。連帯保証人は、入居者が家賃を支払えなくなった場合、代わりにその債務を負う責任があります。連帯保証人がいないことで、家賃滞納トラブルのリスクが高いと判断され、入居を拒否されることもあるでしょう。
定年後に賃貸をスムーズに借りるためのコツを解説します。
まず、親族の協力を得て連帯保証人や緊急連絡先になってもらいましょう。連帯保証人がいることで、家賃滞納のリスクが低減するため賃貸契約の審査に通る可能性が高まります。加えて、家賃滞納の心配が軽減されるため貸主に安心感を与えられます。
また、近くに住む親族が緊急連絡先になり、孤独死などのトラブル時にすぐに駆けつけられる状況を作っておくと、貸主に安心感を与えかつ入居審査が通りやすくなるでしょう。
また、高齢者向けの賃貸物件を選ぶのも、賃貸を借りるためのコツです。高齢者向け賃貸住宅や一般の賃貸物件で高齢者歓迎の物件など、高齢者も借りやすい物件は複数存在します。高齢者向けの賃貸物件は、連帯保証人が不要だったり、収入や年齢の制限がなかったりと入居審査に通りやすくなっているようです。
定年後に賃貸契約することは可能ですが、審査が厳しくなる可能性があります。孤独死のリスクや収入の不安、保証人の問題などがその要因です。
しかし、親族に連帯保証人になってもらう、家賃債務保証を活用する、高齢者向けの物件を選ぶなどの対応をすることで、賃貸契約のハードルを下げられます。これらの対策を検討し、定年後も安心して賃貸生活を続けられるよう準備を整えましょう。
総務省統計局家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要(18ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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