10月29日(火) 7:00
猫4匹と家族6人で暮らすなみそさんは、ユーモアあふれる家族の日常を毎日SNSのX(エックス)で発信し、18.6万人のフォロワーをほっこり癒やしています。4匹と6人の自由な個性が集まった暮らしは小さな家にはおさまらず、空き家を買って、夫が大規模リノベーションに挑戦。「猫も子どもも大人も遊べるテーマパークのような家」を造りました。さて、どんな家ができたのでしょうか。
なみそ家の長男は切り絵クリエイター、次男は扇風機大好き少年として有名なみそさんは、夫のかずまさん、小・中学生の長男、次男、長女、次女、食べ物の名前がついた猫4匹と福岡県直方市で暮らしています。複数の猫ときょうだいのように育ってきた子どもたちは猫が大好き。長男のKENくん(小学5年生)は、小学校1年から切り絵を始めて、猫をモチーフにした切り絵やイラストなどを個展やネットで発表・販売し、企業とコラボするなど、ねこ切り絵クリエイターとして活躍しています。
次男(小学2年生)は、子どものころから扇風機に夢中で、集めた扇風機は約60台。「扇風機の開発者になりたい」夢を叶えて、企業とコラボしたねこ型扇風機をつくり発売されました。
子どもたちの個性や興味を尊重し、全力で応援する母・なみそさん。「次男は、今は歴史や漢字にもハマっています。子どもたちがそのとき一番興味があることや好きなことを好きなだけやりなさいって思っています。私たち夫婦も、面白いことをXで見つけたら、真似して自分流にアレンジしたり、人と違うことをして楽しむことが好きなんです」と、とことん面白がる派。
ただ賃貸アパートで暮らしていた頃は、生活音で隣人に迷惑をかけているのではないか気を使うことも多かったそう。家族6人、猫4匹が仲良くワチャワチャ過ごすのも楽しいですが、子どもたちそれぞれの個室が必要な年ごろになり、猫たちの部屋もほしいとマイホームを建てることにしました。
なみそさんの夫のかずまさんは電気工事士でお父さんは大工、職業柄たくさんの建築現場を見て工事に関わってきたので、セルフリノベーションは「そこそこやれるはず」と確信していたそう。「中古でいいから、広い土地付きの家を買おう」とインターネットを見たり人に聞いたりして物件を探し、築約60年の空き家と出合いました。
「遠い親戚が持ち主の大きめの平屋があって、その方が年齢を考えてそろそろ処分しようと思っていたところを紹介してもらって、不動産会社の査定価格より少し高い価格で買いました。ただ、10年間も誰も住まずに放置されていたので、外周から水回りまでシロアリに食べられていました。腐食した柱などは全部入れ替え、外壁の壁だけ活かして、中はほぼ壊してやり直しました」とかずまさん。ほぼ建て替えに近い大規模なリノベーションです。
「最初は、駐車スペースが1台もなかったので、搬入作業ができなかったんです。ブロック塀を壊して間口を広げて車が6台くらい停められるようにして、ようやく作業ができる状態に。庭は、石や岩がゴロゴロ置かれた荒れ果てた日本庭園でした。石や岩を処分して、土をすき取って地面を平たくしてからリノベーションを開始。浄化槽の交換や、大量のゴミや瓦礫を袋に詰めて、所定の場所に捨てに行くのも自分たちでやりました」
2023年の2月に空き家を購入して、仕事が終わって帰宅してからや週末に少しずつ作業を進行。設計図はなく、実物を見ながらここをこうしようと考えて頭にある設計図を形にしていきました。家族の居場所が完成した2024年4月に引越し。その後も住みながら改修や増築を進めたものの、なかなか完成しないので、知り合いに『サグラダファミリアの家』と呼ばれたそう。
「大工のお父さんや仲間にも手伝ってもらいましたが、職人さんは雇ってないので工事費用はゼロです。材料もネットやホームセンター、リサイクルショップなどで安く購入しました。さらに、空き家リフォームなどの補助金を活用、浴槽と浄化槽交換で90万円、サッシの交換で70万円ほどの補助金が出たのも大きかったです(申請、検査などが必要、限度額は自治体により異なる)」
家の主役は猫。猫が自由に動いて遊べる場とトイレ部屋をつくる「理想の家は、猫たちが自由に遊び回れるような猫ファーストの家。猫たちの家に人間が住まわせてもらっている感じです」と、なみそさん夫妻。リビング・ダイニングには、猫たちが走り回れるキャットステップやキャットウォーク、木の造作階段を組み合わせてアスレチックのような変化のあるコースをつくり、猫たちが好きなときに、好きな所に登って遊べるようにしました。
「テレビの上にある障子部分は、猫が通ると影絵のように姿が映し出されるようになっていたり、人間が肉球を眺められるように透明なアクリル板の道も設け、人も猫も楽しめるようにしました」。障子の裏に電気を仕込んだり、リビングの天井にダウンライトを2列にしつらえるなど、電気工事のプロならではの照明使いも見事です。
テレビの下の4つの穴は4匹の猫の寝床であり居場所ですが、あまり入ってくれないそう。また、テレビの脇に設けた家の形のスリット窓は玄関の靴箱の天板とつながっていて、家族が帰宅したときに猫が顔を出して出迎えてくれます。かずまさんこだわりのスリット窓は、Xでも多くの反響がありました。
リビングに隣接する広縁のような空間は、なみそさんが希望した、猫の部屋です。トイレ置き場の上に換気扇をつけて、トイレ後の臭いを解消。猫たちが好きな窓は、4匹の猫が同時に上がれます。天井には、昼は光が射し込むようにトップライトを設け、横にダウンライトをつけて夜も暗くならないように。猫目線と家族目線で、住みやすさを考えています。
ダイニングの壁は、次男が大好きで収集した扇風機を飾りながら収納する棚を造作。「壁全部を扇風機にしたい」と夫妻で話し合い、形にしました。
リビングから子ども部屋への廊下(アプローチ)は、映画館の入口をイメージした青い照明のほの暗い空間だが、何万通りにも色を変えることができるそう。
住みながらつくり、完成したばかりの子ども部屋4部屋は無垢材で囲い、子どもたちが高い所で寝たいという要望を叶えるために、ロフト風のスノコベッドを造作。下は大容量の収納スペースになっています。机代わりのカウンターも造り付けました。初めての自分の個室を手に入れて子どもたちは大喜びです。
水回りも、リサイクルショップなどで購入した商品を組み合わせてオリジナルで造作。なみそさんは、大家族分の食事やお弁当づくり、1日に4回も洗濯機を回すので、作業がしやすいよう空間も収納も十分確保しました。
お風呂は浴槽を買って造作。浴槽も洗い場も広々としたホテルライクなお風呂はかずまさんのお気に入りの場所です。
そして、なみそさん夫婦の遊び心と照明の技を活かしたのが、夫妻の寝室。「誰ともかぶらないようにと、ラブホテルをテーマにしました。シャッターを閉めると昼も真っ暗になり、そこに間接照明を仕込んで妖艶な雰囲気を演出しています」
なみそさん宅で特徴的なのは、間接照明の使い方はもちろん、玄関はオレンジ、トイレはグリーン、子ども用トイレは青空のプリント、リビングはライトグレーなど、クロスをカラフルな色使いで遊んでいること。
「仕事でたくさんの物件を見てきて、構造などのいいところは大いに参考にしました。リノベーションは大変でしたが、引越したときに子どもたちが喜んでテンションが上がったときは嬉しかったですね」とかずまさん。1年半以上かけてコツコツ進めてきたリノベーションのゴールも間近ですが、これから屋根瓦を葺き替えたり、庭や外構、バーベキュースペースなどもつくりたいそう。
1日何回もXのポストを更新しているなみそさんは「家づくりも、家の中のいろいろなことも、低コストで、自分たちで考えて、これだけ面白くできるんだよという気持ちで発信していますが、フォロワーさんに喜ばれたり、アドバイスをもらったり、アイディアを共有できたりするのが楽しい。タイミングを逃さないで写真が撮れるように、部屋を常にきれいにキープできているのも、SNSをやっているメリットです」と話す。
古い家のセルフリノベーションは、素人には敷居が高いですが、なみそさん宅の家づくりは「家族が楽しければいい」という考えをベースに、参考になるアイディアがいっぱいありました。古い空き家は、自由な発想やわがままなクリエイティブも大歓迎。自分の好きや遊び心を追求するチャレンジ精神があれば、世界にひとつの面白い家の実現も夢ではありません。
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