10月30日(水) 5:40
老齢厚生年金の額は標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)を基礎として算出されますが、離婚時の年金分割では、婚姻期間中の標準報酬が多いほうから少ないほうに一部を分割する形で行われます。
法律婚の夫婦が離婚した場合、3号分割制度と合意分割制度があります。3号分割制度とは、国民年金第3号被保険者である配偶者と離婚をした場合、第3号被保険者からの請求があれば、婚姻期間中(2008年4月1日以後に限る)の第3号被保険者期間における標準報酬月額と標準賞与額を2分の1ずつ分割する制度です。
例えば、婚姻期間中の標準報酬月額が夫40万円、妻0円の場合、3号分割により婚姻期間中の標準報酬月額は夫20万円、妻20万円に変わります。
合意分割制度とは、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があり、当事者双方の合意または裁判手続きにより按分割合を定めた場合、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できる制度です。
例えば、婚姻期間中の標準報酬月額が夫40万円、妻が20万円のケースで、2分の1ずつ分割することに合意すると、合意分割によって標準報酬月額が夫30万円、妻30万円に変更されます。
事実婚の場合は、国民年金第3号被保険者(被扶養配偶者)であった期間に限定して、離婚時の年金分割が認められています。そのため、事実婚期間中に国民年金第3号被保険者期間がない事実婚夫婦は、離婚時の年金分割を請求できません。
また、年金分割の手続きにおいても、法律婚では婚姻関係を戸籍謄本などで証明可能ですが、事実婚の場合は住民票などの事実婚関係を証明する書類が必要となります。
事実婚解消による年金分割の請求期限は、法律婚と同様に事実婚関係の解消から2年以内となります。
また、事実婚関係で子どもができたなどの理由から法律婚をし、その後離婚した場合は、離婚成立から2年以内であれば、法律婚と事実婚期間の第3号被保険者であった期間も合わせて年金分割の請求ができます。
一方で、法律婚から事実婚に移行し(離婚成立後も引き続き事実婚関係にある)、その後に事実婚も解消した場合、法律婚期間と事実婚期間の年金分割は別々に請求する必要があります。
したがって、法律婚については事実婚関係が解消しているか否かにかかわらず、離婚成立から2年以内に年金分割の請求をする必要があります。事実婚関係が継続していれば言い出しにくいかもしれませんが、期限が過ぎると請求できなくなるので注意してください。
事実婚夫婦の年金分割は法律婚の場合と違い、国民年金第3号被保険者期間に限定して分割が認められているので、共働きなどで第3号被保険者期間がない事実婚夫婦は年金分割を請求できません。また、戸籍謄本などで婚姻関係の証明ができないため、事実婚やその期間を証明する書類などが必要となります。
事実婚を解消する場合は、まずは年金事務所で分割できる対象期間の有無、分割請求に必要な書類について相談をしてみてはいかがでしょうか。
内閣府 男女共同参画局令和3年度人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書
日本年金機構 離婚時の年金分割
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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