10月29日(火) 9:30
「投資をいつから始めればよいか」と質問されることがありますが、筆者は「知識と技術があれば、いつ始めてもよい」と答えるようにしています。裏を返せば、知識と技術がないまま、よく分からずに投資を始めてしまうと、状況によっては損失を膨らます可能性があるのです。
また「投資をいつ終わりにすればよいか」という質問も受けることがありますが、これは相場の局面に従って判断するようにしましょう。なぜならば、大局観を持たずに投資を続けてしまうと、大きな下落相場に見舞われたときに損失を被る可能性があるからです。
このように言われると、「そこまで学ぶ時間がない」、「手間がかかる」といった印象を持つ人もいるかもしれません。しかしそのような印象を持つのは、単に知識と技術を身に付けていないからです。ある程度知識と技術が身に付いていれば、投資について考える時間ができ、投資判断に必要な手間を減らすことができるようになります。
例えば、料理を作ったことのない人はできあがるまでに多くの時間がかかりますが、料理を作るのに慣れてくると手間が省かれ、必要な時間を減らすことができるようになるのと同じです。
「売買のタイミングを計る」とは「投資判断を下す」という意味です。投資判断を下すのは、利益を得るためであり、損失を抑制するためでもあります。つまり、「売買のタイミングを計る」のは「リスクコントロールをする」ために行われるもので、大切な資産を管理する上では必要不可欠なことといえます。
投資判断を下すにはいくつか方法がありますが、共通していえることは「投資マネーが、今、どこからどこに向かっているか」を観察し、「今後、どこからどこに向かっていくか」を予測することです。
機関投資家(金融機関など)や大口の個人投資家などは、どの国・地域に投資すべきかを考えながら投資資金を振り分けています。そのため私たち個人投資家であっても、特に「日経平均株価指数」や「S&P500」などに連動するインデックスファンド(指数連動型投資信託)に投資する際は、お金の流れが今どうなっていて、これからどうなるか留意する必要があります。
昨年まで、中国や香港に向かっていた投資マネーが、中国経済の低迷から他の国・地域に流出し、アメリカをはじめとする先進国やインドなど、地政学的リスクの影響を受けにくい新興国に向かっていたのは、最たる例といえるでしょう。
マネーの流れが今後どうなるのかについて、大局観を持つことは、投資判断を下すに当たって重要なことといえます。
ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は、世界経済やある国・地域の経済状況が、今どうなっているのかを示すものです。
例えば、代表的な経済指標であるGDP(国内総生産)や雇用統計(失業率など)、物価(消費者物価指数など)といった統計データを用い、世界経済や各国・地域の経済状況について確認していきます。例えばアメリカ経済の場合、現在は景気の減速傾向が見られるものの、依然として消費者物価指数は目標値である2.0%/年を上回っています。
このような経済情勢をチェックすることで、長期的にアメリカの株式インデックス(NYダウやS&P500、NASDAQなど)に対する投資判断をどうすべきか、考えることができます。
投資マネーの流れとファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の状況を念頭に置きながら、実際に売買のタイミングを計っていきます。
このとき用いる「テクニカル分析」は、チャート上で行います。チャートは、インデックスや個別銘柄の状況を示すもので、過去から現在に至るまで、どのような軌道を描いてきたかを確認することができます。
このときは投資判断を下すわけですから、過去や現在の動きをもとにテクニカル分析を用い、将来の動きを予測した上で売買のタイミングを計ります。
これまで説明してきたように、投資判断を下す手順は、「投資マネーの流れを見極め、世界経済や国・地域の経済状況を確認した上で、テクニカル分析を行う」という流れになります。
投資に慣れてくると、「チャート上で投資マネーの流れを追い、インデックス(指数)などのテクニカル分析を行ってから、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を証券会社などで用意されている経済指標カレンダーでチェックする」という方法を採ることができるようになります。
これはショートカット、つまり投資の分析時間を短縮するための方法で、このような知識や技術をある程度マスターしていくことにより「投資について考える時間がない」「調べる手間がかかる」といった問題が解消されていきます。
このような意味で、このシリーズは投資初心者から投資中級者、あるいは上級者になりたい方向けの記事とはいえ、投資に興味のある方の参考になればと考えています。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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