とにかく多忙な育児中。ちょっとしたスキマ時間があれば、ついスマホなどでリラックスしたいと思うお母さんも多いはず。しかし、その中で注意したいのがスマホを見ながら子どもに授乳する「スマホ授乳」の存在です。
脳科学者の黒川伊保子さんいわく「スマホ授乳を続けると、赤ちゃんの脳と歯並びに大きく悪影響が生まれる」と語ります。
そこで、黒川さんの新刊『孫のトリセツ』より、スマホ授乳の弊害についてご紹介します。
育児中は何があってもお母さんを支える覚悟を持とう
育児中のママたちは、ひたすら優しい気持ちでいられるわけがない。ひたすら疲れて、ちょっとしたことでイラつき、ときには大きくメンタルダウンするもの。これが周産期の母体なのである。
新米ママの夫に、このことを教えておいてあげるといい。特に初めてのお産では、愛らしかった新婚妻が豹変したように見えるので、たいていの新米パパは、どうしていいかわからなくなってしまう。
周産期の妻の感情の乱高下にまともに腹を立てたり反論していると、「夫婦関係」が疲弊してしまう。妻にどうしてあげたらいいかは、拙書『妻のトリセツ』(講談社)あるいは『夫婦のトリセツ決定版』(講談社)を、ぜひ参考に。
なによりもまず、彼女を支える夫と祖父母が、お産がどれだけ大変なイベントなのかを理解して、彼女を何があっても支える覚悟を決めることである。
ふたり時間にうまく介入する
授乳期は、母子ふたりの時間を楽しむときでもあるので、彼女が機嫌良くしているときは、孫に手を出さずに放っておいてあげるのも、実は大事なポイント。
里帰り出産で、久しぶりに娘(およめちゃん)がいるのが嬉しくて、ましてや生まれたての孫が一緒なら、つい、ことあるごとに部屋をのぞいて、「すいか食べる?」「今夜、何食べたい?」と声をかけたくなっちゃうけど、そこはがまんしたほうがいい。
とはいえ、赤ちゃんの泣き声が長めに続いたら、あやしに行ってあげてね。特に、疲れ切った身体に夜泣きは地獄。
私は、夜泣きにほとほと疲れ果てていたとき、母が「夜は任せて」と言って息子を連れ去ってくれたときのほっとした気持ちを今でもありありと思い出す。人類の子育てには、こういう温かい手が不可欠なのだと思う。
やってはいけない「スマホ授乳」
実は、母乳育児のママに警告したいことがある。
スマホを見ながらの授乳、やめましょう。理由は3つある。
1つ目は、先に述べたように授乳中の「顔を見合わせる行為」は、脳の発達に寄与するから。
2つ目は、母親が赤ちゃんから顔を背けると、赤ちゃんがくわえる乳首がひどく斜めになってしまうのである。このため乳腺が開きにくく、母乳が出にくいという悩みを抱えがち。乳腺炎になる確率も上がる。
3つ目は、この“斜め乳首”は、あごや歯の発達に支障があることを小児歯科が警告している。考えてみればいい、やわらかくて成長著しいあごと乳歯に、斜めに弾力のあるものが当てられるのである。ゆがんだフレームで歯科矯正しているようなもの。
「常時スマホ漬け」だけは回避を!
もちろん、スマホを持っていなくても乳首は多少斜めに入るものだけど、授乳中の乳首はやわらかくて、多少の斜めは赤ちゃんのあごに収まったときに補正される。ただ、スマホに夢中になると、補正の域を超えるのである。
母乳の場合、赤ちゃんが吸い付いてさえくれれば、ママは、わずかな自由時間をもらったようなもの。授乳歴のある私にも、ついスマホに手が伸びる気持ちは、本当によくわかる。
でもね、赤ちゃんの脳とあごと歯並びのため、どうか、その衝動に負けないで。まぁ、たまにやってしまうのは仕方ないとして、「常時スマホ漬け」だけは回避しよう。
<文/黒川伊保子構成/女子SPA!編集部>
【黒川伊保子】
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』
【関連記事】
・
65歳の脳科学者が嫁に対して“絶対にやらないこと”。不満を表明するときは
・
へその緒がついた赤ちゃん猫を拾った私が、「乳首」に悩みまくり1万円も使ったワケ<漫画>
・
子どもを見ながらのリモートワークは「想像を超える地獄」。“24時間フル体制”なママの悲鳴
・
専門家が解説する「脳を発達させる授乳のコツ」…哺乳瓶の“意外なメリット”もうれしい
・
「40代で初産は子どもがかわいそう」発言がネットで炎上。なぜ他人の出産年齢に口を出したがるのか