10月29日(火) 4:30
財務省のサイトによると「令和6年度税制改正の大綱」に以下のような記述があります。
「16歳から18歳までの扶養控除について、(中略)現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税12万円)を復元し、(中略)所得階層間の支援の平準化を図ることを目指す。
扶養控除の見直しについては、(中略)令和6年10月からの児童手当の支給期間の延長が満年度化した後の令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について結論を得る。」
わかりづらい記述ですが、税制改正のポイントは以下のとおりです。
・16~18歳の子どもを1人養う場合に適用されている扶養控除額を、所得税については38万円から25万円に縮小し、住民税については33万円から12万円に縮小する
・扶養控除額縮小は、所得税は令和8年分から、住民税は令和9年度分から始まる予定である
結果として、労働者にはただちに影響はないものの、令和8年以降から扶養控除の縮小によって所得税・住民税の実質増税が行われる予定になっています。
これは子育て世代の支援のために、まさにその子育て世代に増税を行うことにほかなりませんので、筆者は子育て世代の一人として率直に疑問を感じています。
では、児童手当の増額と扶養控除の縮小で家計にどのような影響があるのか、一連の制度改正で家計に影響を受けるのは「高校生を扶養している世帯」および「多子(3人以上の子どもを扶養する)世帯」ですが、ここでは「高校生1人を扶養している、片働きの世帯」を想定してシミュレーションを行います。
今回の児童手当拡充・扶養控除削減によって家計に影響を受ける額は、図表1のとおりになります。
図表1
筆者作成
「税制改正の大綱」どおりに制度改正が行われた場合、その影響で「赤字」となる世帯はありません。すべての所得層において、プラスの影響があることが分かります。
ただ、高所得の世帯であるほど、扶養控除縮小による所得税増・住民税増の影響が大きいために児童手当拡充による恩恵は少なくなり、例えば課税所得が900万円(額面給与年収では1340万円程度)の世帯は、差し引き年間6.8万円の家計改善にとどまります。
こういった要素をふまえ、今後、将来のライフプランニング作成を考えている方は、自分の課税所得はどこに当てはまるかを確認し、正確なプランが作成できるようにしておきましょう。
今回の制度改正では、児童手当の拡充とともに高校生年代で受けられていた「扶養控除」が縮小されますが、それによって「赤字」となる世帯はありません。ただ、高所得の世帯にとっては扶養控除縮小による節税効果が薄れるために、制度改正による恩恵も少なくなります。
支給の増額・控除の縮小ともに、家計にとっては少なくない金額ですので、今後ライフプランのシミュレーションをする際などは制度改正についてきちんと理解し、反映させていきましょう。
財務省 令和6年度税制改正の大綱 II扶養控除等の見直し
政府広報オンライン 2024年10月分から児童手当が大幅拡充!対象となるかたは必ず申請を
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
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