10月29日(火) 12:00
29日から日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は最終プロテストを開始。国内最高峰ツアーの道を切り開く戦いが始まっている。すでに合格率“3%”という狭き門をくぐり合格を果たした選手たちにとっては、“プロテスト”というのは一体どんなものだったのか? 今回は5度目の挑戦で悲願を達成した政田夢乃に話を聞いた。
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よろこびで胸がいっぱいになった1年前のことを思い出すと、同時に複雑な気持ちもこみ上げてくる。プロテストは「一言では言い表せないもの」。政田夢乃にとって“あの経験”は、「受かって良かったなという気持ちと、もう受けたくないという気持ち」が入り混じるものだ。
2000年7月28日に生まれた、北海道出身の“プラチナ世代”のひとりは、アマチュア時代から注目を浴びてきた存在だった。テスト初挑戦は、同学年の西村優菜、安田祐香、吉田優利らが合格した19年。しかし政田は最終まで進みながら1打及ばずに涙をのんだ。
そしてこの年は“転換期”でもあった。JLPGAは、19年から原則、正会員以外のQT参戦を認めないことを規則に織り込むことを決定。ただし、同年については初年度ということもあり、最終プロテストで1打差落ちの選手まではQT出場が認められるという特例もあった。そこに引っかかった政田は、QTからのツアー出場を目指したが、1次で敗退。結果的にアマチュア選手として20年を迎えることになった。
前述した規定変更のみならず、新型コロナウイルスの影響で20年に開催される予定だったプロテストが21年に延期になるなど、“激動の時期”にプロテスト合格を目指すひとりになったともいえる。そのなかで1年繰り越しで行われた20年度のテストは2次で敗退。さらに21年度も右手首痛で1次予選を棄権し終わった。23年も最終まで進みながら2打差で不合格。なかなかカベを乗り越えられなかったが、ようやく昨年、入会証をつかみとった苦労人だ。
「(1次~最終まで)3回突破しないといけないし、自分の調子や体調も全て満点じゃないと合格できない。上手いのに受からないという人もたくさんいますし、すごく難しいもの。…もう受けたくないですね」
この言葉が、5年もの間、肌で感じ続けてきたプロテストの厳しさを伝えてくる。21年からは「マイナビ ネクストヒロインゴルフツアー」などで、同じくツアープロを目指す選手たちと切磋琢磨を続けた。そして、この生活のなか “大事なこと”を気づくことに。「4回目までは緊張も感じていたけど、(合格した)5回目は『楽しもう』という気持ちが大きくなっていて。それが良かったのかなと思います」。経験を積むなかで至った、いわば“境地”といえる。
この“楽しもう”という精神は今にも通じている。「まだまだルーキーなので、試合が続くことなども慣れていないし、初めてのコースも多いから大変なことが多い。でもそのなかでも、楽しみながらやったほうが上達もできるかなって思います」。現在のメルセデス・ランキングは60位。ルーキーイヤーでのシード入りを目指すが、ハイレベルな真剣勝負の場に身を置いていることも「楽しい」。入会証とともに、こんな気持ちをプロテストから得ることができた。
「緊張して自分のゴルフができない人も多い。普段通りといっても難しいけど、楽しんでプレーして、その結果、合格につながってくれたらいいなって思います」
政田自身も味わってきたつらさや苦しみを、今年も乗り越えようとする選手は多い。そういった“後輩たち”に贈るエールのなかにも、「楽しんで」という言葉がやはりしっかりと含まれていた。(文・間宮輝憲)