10月29日(火) 5:10
両親が死去した、あるいは老人ホームに入居して使われなくなった空き家は、なるべく早く処分を検討する必要があります。「いつか売れば財産になるからそのままにしておこう」と考えてしまうと、さまざまなデメリットが生じます。
まず、固定資産税がかかり続けること。空き家を相続した場合、たとえ自分が住んでいなくても固定資産税が発生します。住んでもいない土地と建物の固定資産税を支払うことは、経済的に大きなダメージになります。
また、実家を適切に管理できないと行政から「特定空き家」に認定されることがあります。特定空き家は保安・衛生・景観保全などの観点から、放置するのは危険であると行政に判断された空き家のことです。
特定空き家は、固定資産税が減額される「住宅用地の特例」の対象外であり、固定資産税が最大で6倍になります。
また、特定空き家に認定されると所有者に改善命令が出されるケースがあり、無視すると50万円以下の過料が科される場合があります。無視し続けて行政代執行で建物が取り壊された場合、その費用まで請求されることになるでしょう。
見てきた通り、空き家を相続すると、さまざまな問題や管理責任が生じる可能性があります。では、相続を放棄した場合はどうでしょうか。相続放棄とは、亡くなった親などが残した財産を一切引き継がないことを指します。
相続放棄が裁判所に受理されると相続に関して一切関与できなくなり、相続していない以上、固定資産税を支払う必要はありません。
ただし、相続放棄をしても、ただちに管理義務から逃れられるわけではありません。相続放棄をしたとしても自分が相続財産を占有しているとき、次に遺産を相続する順位にある法定相続人の管理開始までは、その遺産の管理責任があります。
また、相続放棄は親が亡くなってから3ヶ月以内に行わなくてはいけないことや、相続放棄をすると実家だけでなく全ての財産を相続する権利を失うなどの注意点があります。
実家を相続すると固定資産税の支払いや空き家の管理といった問題が生じるため、相続人同士で相談のうえで実家の土地と建物の売却を検討しましょう。
平成28年4月1日から令和9年末までに空き家を売却する場合、一定の要件に当てはまれば、相続した住宅の売却で得た利益が3000万円まで非課税になる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度を利用できます。
ただし、この特例は相続の開始があった日から3年後の年末が期限になっています。譲渡所得金額から最大3000万円まで控除されるため、利益に対して課税される前にすぐに売却の検討を始めたほうが、税負担を最小限に抑えて実家を手放せるでしょう。
自宅を相続した場合、固定資産税の納税だけでなく、実家が劣化しないように管理する義務が生じます。管理が行き届かず特定空き家に認定されると固定資産税が最大6倍になったり罰金の対象になったりと、デメリットが生じることになります。
相続人同士で話し合い、3000万円の特別控除の特例を利用できる「親の死後3年以内」に実家を売却するなど、なるべく税負担なく手放すことも検討しましょう。
国土交通省 住宅:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
八幡浜市 相続放棄した空き家の管理義務について
裁判所 相続の放棄の申述
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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