10月29日(火) 2:30
まずは70歳女性が単身で生活する場合の年金受給額と支出を見ていきます。
厚生労働省の2022年の厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、70歳の厚生年金の平均受給月額は(国民年金分も含む)14万1350円です。総務省統計局の2023年の家計調査報告(家計支出編)によると65歳以上の単身無職世帯の平均支出は15万7673円と、毎月1万5000円程度足りないことが分かります。
これはあくまでも平均額同士の比較にすぎず、年金額は現役時代の年収や働き方(会社員なのか自営業なのか)などによって異なってきますが、年金収入だけで生活が成り立たない可能性はあるわけです。
ある求人サイトによると全国の清掃スタッフ(アルバイト・パート)の平均時給は1020円とのことです。ただし、2024年10月に最低賃金が引き上げられ、全国平均は時給1055円となっています。時給1055円で働いた場合を考えていきましょう。
例えば1日3時間のマンション清掃で週に3日間(月間12日間)働いた場合、月の労働収入は3万7980円です。先ほど示した平均年金受給額と合わせると17万9330円の収入となるため、平均支出である15万7673円で生活しても2万円以上の貯金ができることになります。
週3日間働くことで得られる収入の効果は決して小さくないのです。
本人が言うように「働くほうが健康にいい」というのは、あながち間違いではありません。厚生労働省の中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)特別報告において、就労が健康維持に役立っているということが示されています。
働くこと自体が、適度な運動となり、筋力や心肺機能の維持に役立つ側面は大きいでしょう。特に清掃という身体を動かす仕事であればなおさらです。
さらに、精神的な面に与える影響も無視できません。働くことが孤立を防ぎ、心の健康を保つ役割を果たしてくれます。高齢になると、社会から孤立してしまうことがあるため、働くことで自分の役割を感じることができるのは大切なことです。
もちろん、全ての高齢者にとって「働くことが健康にいい」とは限りません。体力に不安があったり、長時間労働が負担になったりする場合は、逆に健康に悪影響を与える可能性もあります。母親が「働きたい」と言っている場合でも、無理のない範囲で働けているかを見守る必要がありそうです。
母親が70歳でも働いている理由には、経済的な面もありながら「働くほうが健康にいい」と考えているという面もあるでしょう。適度な運動や社会とのつながりは、身体的・精神的な健康に良い影響を与える可能性が高いからです。
もちろん、働くことが負担になっていないか、注視することも欠かせません。母親が無理をしていないかどうかを確認しつつ、必要に応じてサポートすることが、親の健康と幸せを守るためのポイントでしょう。
厚生労働省 令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
総務省統計局 令和5年の家計調査報告(家計支出編)
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)特別報告
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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