10月29日(火) 18:13
「ゴルフのスイングがどうも安定しない……」そんな悩みを抱えているなら、4スタンス理論がヒントになるかもしれません。この理論は、人それぞれに合った自然な動き方を見つけ出すもので、多くのプロアスリートも活用しています。自分の体に合った動き方を理解すれば、スイングの精度が劇的にアップする可能性もあります。いま一度「4スタンス理論とは何か」を振りかえってみましょう。
「4スタンス理論は大きな効果があった」森田理香子の2024年ドライバースイング【連続写真】
「4スタンス理論」とは、自然で、安全で、かつ効果的な動作を行うための理論で、生まれながらにして決まっている身体特性を4つのタイプに分類し、それぞれに合った動きを追求します。
この理論は、東京五輪のJOC新体操スタッフを務めたスポーツ整体師の廣戸聡一氏によって編み出され、プロ野球やゴルフ界でも採用されてきました。ゴルフでは、プロゴルファーが実際にスイングやグリップの改善に活用している理論です。
4スタンス理論では「軸」が重視されており、診断を通じて、自分にとって自然な動作や体の使い方がわかる、とされています。無理や無駄のない動きが可能になるため、以下のようなメリットが期待できます。
■ スランプやケガ、故障のリスクを減らせる
■ 効率的で合理的な練習ができる
■ 自然な動きが安定感をもたらし、集中力が向上する
これらの点から、4スタンス理論はスポーツパフォーマンスの向上に役立つとされています。ゴルフにおいても、自分に合ったスイングやグリップを見つける際に、この理論が活用されています。
さらにスポーツ指導者がこの理論を理解することで、選手に対して不自然な動作を強要することでケガや故障を招いたり、無理な指導で挫折を引き起したりするリスクも軽減できるとされています。
2023年にはテレビでも紹介され、再び話題となった4スタンス理論。ゴルフ界においては、2010年に横田真一がこの理論を活用して13年ぶりに優勝したことや、2024年にツアー復帰した森田理香子が「大きな学びになった」と語ったエピソードが特に記憶に残っています。
この理論は最新ではないものの、自分に合った動き方を見つけたいゴルファーにとって、いまだに重要なヒントになりうるかもしれません。
4スタンス理論では、体の使い方を4つのタイプに分けて診断します。
以下のセルフチェックを行い、自分が属するタイプを確認してみましょう。
次の2つの動作を試して、どちらがよりスムーズにできるかを確認しましょう。
【1】ツマ先と鼻を壁につけてまっすぐ立ち、アゴを引いた状態でゆっくりとしゃがむ。
【2】カカトと腰、背中を壁につけてまっすぐ立ち、アゴを引いた状態でゆっくりとしゃがむ。
両方の動作を試して、【1】のほうが自然にできた場合はAの前重心、【2】のほうが自然にできた場合はBの後ろ重心です。
まっすぐに立ち、勢いをつけずにカカトを浮かし、ゆっくりとツマ先立ちをしてみます。
前後に傾かず垂直にできた人はAの前重心、体が一度前に傾いてから立ち上がった人はBの後ろ重心です。
ここまでのチェックで、A1もしくはA2の前重心か、B1もしくはB2の後ろ重心か、がわかります。
椅子からの立ち上がり方を2種類試し、自然にできるほうをチェックします。
背筋を椅子の座面に垂直にして浅く腰掛け、両モモに手のひらを当てます。このとき、親指は内側、他の指は外側に向け、モモを軽く持つイメージで準備します。次に、立ち上がる際の腕の使い方を次の2通りで試します。
【1】腕をモモの「内側」に絞り込みながら立つ
【2】腕をモモの「外側」に絞り込みながら立つ
【1】で自然に立てた人は1の内側重心、【2】が自然な人は2の外側重心です。
両腕を大きく回し、体や頭のブレをチェックします。これは自分では判断しにくいため、可能なら誰かに確認してもらうといいでしょう。
足を股関節の幅に開いて立ち、腕を回します。
【1】上から下へ向けて、両腕を「内回し」に5回大きく回す
【2】下から上へ向けて、両腕を「外回し」に5回大きく回す
確認する人は、真横から頭や体のブレを観察しましょう。
【1】のほうがブレずに回せた人は1の内側重心、【2】のほうが安定していた人は2の外側重心です。
ここまでのチェックと、前重心か後ろ重心かのチェックを合わせて、A1の内側重心か、B1の内側重心か、A2の外側重心か、B2の外側重心か、がわかります。
体の可動域をチェックします。
背筋を椅子の座面に垂直にして浅く腰掛け、両腕を肩の高さまで上げ、体の前でまっすぐ伸ばします。
【1】手首を「下向き」に直角に近い形で曲げ、そのまま腕を左右に開く
【2】手首を「上向き」に直角に近い形で曲げ、そのまま腕を左右に開く
【1】が広く動かせる人はクロスタイプ、【2】が広く動かせる人はパラレルタイプです。
体の安定度をチェックします。
足を股関節の幅に開いて立ち、片方の腕を肩の高さまで上げ、手のひらを下に向けて体の真ん中に置きます。
【1】伸ばした腕と「反対側」の足で手のひらを狙ってキックする
【2】伸ばした腕と「同じ側」の足で手のひらを狙ってキックする
【1】が安定した人はクロスタイプ、【2】が安定した人はパラレルタイプです。
ここまでのチェックで、A1のクロスタイプか、B2のクロスタイプか、B1のパラレルタイプか、A2のパラレルタイプか、がわかります。
そしてここまでのチェックを総合して、自分が「A1」「B1」「A2」「B2」の、どのタイプに属しているのかを最終的に確認します。
4スタンス理論は、多くのスポーツに取り入れられており、ゴルフでも効果が期待されています。廣戸聡一氏の書籍にはゴルフに特化したアドバイスが掲載されており、タイプ別のスイングやグリップのポイントも具体的に解説されています。
これを参考にすれば、さらなる上達のヒントが得られるかもしれません。
多くのトップアスリートも、自分の体に合った自然な動き方を生かしてパフォーマンスを発揮しています。以下に、各タイプに属する有名な選手を紹介します。プロゴルファーもいますので、自分と同じタイプの選手のスイングを参考にしてみるのもおすすめです。
A1:前重心・内側重心・クロスタイプ
石川遼、羽生結弦、内村航平、イチロー、ダルビッシュ有など
A2:前重心・外側重心・パラレルタイプ
タイガー・ウッズ、アーノルド・パーマー、マイケル・ジョーダン、錦織圭、白鵬など
B1:後ろ重心・内側重心・パラレルタイプ
長嶋茂雄、リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、伊調馨、岡崎慎司など
B2:後ろ重心・外側重心・クロスタイプ
フィル・ミケルソン、横峯さくら、池田勇太、大谷翔平、松井秀喜など
「4スタンス理論」はあくまでも実践に基づいた理論で、学術的な論文や科学的な検証が行われていない点には、留意する必要があります。
また、ウェブ上には誤った情報が広まっていることも指摘されているため、正しい情報を得るためには、廣戸聡一氏の著書や公式トレーナーの発信を参考にしましょう。
自分のタイプをセルフチェックする際は注意が必要です。生来の自然な動きを確認するはずが、意識してしまうことで逆のタイプの動きになってしまうことがあります。長年の習慣や矯正された動きが影響して、本来の動き方が出にくいこともあります。可能であれば、他の人にみてもらいながらチェックするといいでしょう。
「4スタンス倶楽部」の公式動画では、二人一組で行う繊細な診断方法が紹介されています。さらに正確な診断を希望する場合は、まずこの動画を参考にし、次に公式トレーナーの診断を受けることを検討してみましょう。
4スタンス理論を理解することで、自分に合った自然な動きを取り戻し、スイングやショットの精度を高められる可能性があります。4スタンス理論で自分に合ったゴルフスタイルを見つめ直し、さらなる上達を目指すのも興味深い試みかもしれません。
参考:廣戸聡一・著「マンガでわかる『4スタンス理論』身体能力を最大限発揮するすごいカラダの使い方」(日本文芸社)