10月29日(火) 4:10
退職金の支給額は、勤続年数や役職、退職理由などで決まりますが、計算方法はさまざまです。そのため、最大支給額は企業によって異なります。ただし、計算方法の例を把握しておけば、支給額の目安を立てやすくなるでしょう。
この章では、退職金の全額を「一時金」として受け取る前提で、従業員と役員の退職金上限額を予測します。
厚生労働省労働基準局監督課の「モデル就業規則」では、従業員の退職金の計算方法は次のように設定されています。
・退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。
同資料における支給率の最大は、「勤続年数41年~」の25です。この場合の退職金額は次の式で計算できます。
(退職または解雇時点の基本給)×25
「退職または解雇時点の基本給」に現在の額を入れ、勤続年数にあった支給率を乗じれば最大額の算出が可能です。
なお、この計算方法以外にも、「点数方式(職能等級、勤続年数等を点数(ポイント)に置き換えて算定する方式)」や「別テーブル方式(賃金と連動しない体系又はテーブルで算定する方式)」など複数の仕組みがあるようです。勤務先の就業規則から、どの計算方法が採用されているかを確かめるといいでしょう。
役員の退職金(役員退職金)の計算には、次の式を用いることがあるようです。
(退任時点の月額報酬)×(勤続年数)×(一定の割合)
「一定の割合」は役職に応じて決まり、以下の値が目安とされます。
したがって、最終月額を3倍した値が、役員退職金の最大額の基準となるでしょう。ただし、従業員の退職金同様、複数の計算方法があるため、厳密な額は企業ごとに異なります。
自分の退職金を予測するうえでは、平均金額を知ることも重要です。
総務省統計局が公表している人事院の「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」によれば、勤続年数38年(※)で定年退職した場合の企業規模別平均退職金額は、表1のようになります。
※大学新卒として22歳で入社し、60歳で定年を迎えた場合の勤続年数
表1
従業員数 |
平均退職給付額
(退職一時金+企業年金現価額) |
---|---|
50人以上100人未満 | 1692万3000円 |
100人以上500人未満 | 1735万2000円 |
500人以上1000人未満 | 1864万5000円 |
1000人以上 | 2663万5000円 |
出典:総務省統計局人事院「民間企業の勤務条件制度等調査/令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)/統計表」を基に筆者作成
従業員数「1000人以上」の企業では、平均2663万5000円の退職金が給付される一方、「50人以上100人未満」では平均1692万3000円と、企業規模によって1000万円近くの差があることが分かります。
退職金の最大額は企業ごとに異なりますが、基本的には、退職時点の報酬額や就業年数、退職理由などで決まるようです。また、勤務年数が同じ場合の従業員数別の平均受給額は、最少が「50人以上100人未満」の1692万3000円、最大が「1000人以上」の2663万5000円となっています。
このように、退職金の額は受給者や企業の性質によって異なります。退職金が設けられている企業であれば、厳密な算出方法は就業規則に記載されているので、そちらを確認し、シミュレーションをするといいでしょう。
厚生労働省労働基準局監督課 モデル就業規則 (74ページ)
総務省統計局 政府統計の総合窓口(e-Stat)人事院民間企業の勤務条件制度等調査/令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)/統計表 第21表 2
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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