10月29日(火) 9:10
J-FLECのホームページには、事業内容として次のように記されています。
「J-FLECは、中立的な立場から金融経済教育を広く提供していくことを通じて、誰一人取り残すことなく、みなさん一人ひとり自らが描くファイナンシャル・ウェルビーイングの実現を支援するとともに、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献していきます。」
耳慣れない言葉が1つあります。ファイナンシャル・ウェルビーイング(Financial Well-being)です。
J-FLECのホームページでは、ファイナンシャル・ウェルビーイングを「自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態」と定義しています。
これはまさにファイナンシャル・プランニング(FP)の根底にある価値観ですが、一言でいえば、「経済的な幸せ」とまとめることができるかもしれません。
しかし、社会が複雑化する中、そのように簡単に括ってしまうと、本質を見誤ることになります。なぜならば、その根底には、人々の人生における多様性が眠っているからです。
ファイナンシャル・ウェルビーイングという考え方の下では、人生で起こる経済的な課題や問題に対処し、自分らしい生き方を実現できる状態が幸せである、という価値観が表されています。このような価値観には、生存権や社会権などの基本的人権が深く根差しています。
道具である「お金」の知識を上手に活用することで、国民が一人の人間として自分らしく幸せに暮らせるよう側面支援をすることが、J-FLECの設立企図であるといえるでしょう。
また、この機構の事業内容には「中立的な立場」と記載されています。これを見ただけで、企業などの利益ではなく、国民の利益を最大限に追求することが目的であると分かります。
また、「誰一人取り残すことなく」と記されているように、政府の掲げる共生社会の実現に沿った施策の下、設立された機関であることが分かります。
そして、最後に「自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくり」と記されていますが、人間の尊厳を尊重しながら、共生社会を末永く構築していくことを目指している、と理解できます。
近年、ウェルビーイング(Well-being)という言葉を耳にする機会が増えています。横文字のため、しっくり来ないかもしれませんが、これは人権擁護を基盤とした価値観です。人間の尊厳を尊重し、人が自分らしく幸せに生きることができる状態に社会を持っていこう……という考え方です。
この価値観が金融と融合し、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という価値観が新たに生まれました。
これが今後、私たちの暮らしにどのような影響を与えるのかはまだ分からず、おそらく浸透するには10年、20年かかるかもしれません。しかし、私たちの暮らしを前向きに変えるための1つの方向性を示す、重要な価値観になるのではないでしょうか。
金融経済教育推進機構 J-FLEC ホームページ
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
■関連記事
投資信託の「分配金」とは?株の「配当金」との違いは?