10月28日(月) 5:40
日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満の全国民が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社員・公務員が加入する「厚生年金」から成り立っています。
公的年金制度は「賦課方式」という方式で運営されており、現役世代が支払った保険料(国民年金・厚生年金)が高齢者などの年金給付に充てられています。
したがって、少子高齢化が進行している日本では、何の対策も取られなければ公的年金制度は破綻してしまう可能性があったというわけです。
それでは、現在も公的年金制度は破綻してしまう可能性があるのでしょうか。ここでは公的年金制度を持続させるための取り組みを紹介し、公的年金制度の持続可能性を確認していきます。
現在、公的年金が高齢者世帯の収入の約6割を占めており、公的年金制度をなくすことは非現実的です。
そこで、公的年金制度を中長期的に持続させていくために、「財政検証」で年金給付と保険料負担のバランスが取れているかの確認が定期的に行われています。「財政検証」は少なくとも5年に1度行われ、保険料の引上げや年金の給付水準の調整などが検証されています。
実際、少子高齢化に伴って国民年金保険料は増加しており、公的年金制度の持続に貢献しているといえるでしょう。参考までに、過去10年間の国民年金保険料の推移は表1の通りです。
表1
保険料納付期間 | 保険料(月額) |
---|---|
平成27年4月~平成28年3月 | 1万5590円 |
平成28年4月~平成29年3月 | 1万6260円 |
平成29年4月~平成30年3月 | 1万6490円 |
平成30年4月~平成31年3月 | 1万6340円 |
平成31年4月~令和2年3月 | 1万6410円 |
令和2年4月~令和3年3月 | 1万6540円 |
令和3年4月~令和4年3月 | 1万6610円 |
令和4年4月~令和5年3月 | 1万6590円 |
令和5年4月~令和6年3月 | 1万6520円 |
令和6年4月~令和7年3月 | 1万6980円 |
出典:国民年金機構「国民年金保険料の変遷」より筆者作成
公的年金制度では、将来の年金給付を確保するために保険料の一部が「年金積立金」として積み立てられており、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理・運用を担っています。
年金積立金の運用は、長期的な観点から安全性と効率性を重視して行うことと定められており、毎年度実績が確認されています。参考までに、過去10年間の年金積立金の運用状況は表2の通りです。
表2
年度 | 運用実績 |
---|---|
平成26年度 | 15.3兆円 |
平成27年度 | -5.3兆円 |
平成28年度 | 7.9兆円 |
平成29年度 | 10.0兆円 |
平成30年度 | 2.3兆円 |
令和元年度 | -8.3兆円 |
令和2年度 | 37.7兆円 |
令和3年度 | 10.0兆円 |
令和4年度 | 2.9兆円 |
令和5年度 | 45.4兆円 |
出典:厚生労働省「年金積立金の運用実績の収益額の推移」より筆者作成
年金積立金の運用実績は比較的安定的に推移しており、令和5年度までに累積で約164.5兆円がプラスの収益になっています。財政検証や公的年金の積立金運用といった取り組みによって、公的年金制度は今後も持続可能であると考えられます。
本記事では、公的年金制度と財政検証の内容、そして公的年金制度の持続可能性をご説明しました。
年金保険料は、財政検証という収支のバランス調整によって年々増加しています。一方で、保険料の一部を積立金として運用することで財源の確保も行われています。保険料を負担する当事者としては、公的年金をなくさないように、公的年金制度に関心を持ち続けることが大切です。
厚生労働省 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況
厚生労働省 30~40代のみなさんへ
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
厚生労働省 年金積立金の運用実績の収益額の推移
厚生労働省 教えて!年金積立金運用 運用状況はどうなっているの?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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