もしも「乳がん」と診断されたら? 当事者がつづるコミックエッセイ『アラサー会社員の乳がんの備忘録』著者インタビュー

『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より/(C)小野マトペ、神保健二郎

もしも「乳がん」と診断されたら? 当事者がつづるコミックエッセイ『アラサー会社員の乳がんの備忘録』著者インタビュー

10月28日(月) 21:05

『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より
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会社員として働きながらイラストレーターとして活動する小野マトペさん。20代半ばにがんと診断された経験をもとにコミックエッセイ『アラサー会社員の乳がんの備忘録』を完成させました。

ほんわかした雰囲気のイラストで描かれたその作品で小野さんは、がんを発見したきっかけや、受けた検査の内容、手術前後の様子などを克明につづっています。

現在はSNSを中心にがんについての啓蒙活動を行う小野さんに、作品についてのお話を伺いました。

■胸にしこりを発見! 疑問から検査へ

小野さんが胸にしこりがあることを発見したのは26歳のとき。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

心配になった小野さんはネットで検索してみますが、気分はモヤモヤ。仕事をしている間も何だか気になる…。そこで彼女は近所の乳腺外科で検診を受けることにしました。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

検査の結果は、胸の内部にある組織が出てきただけで、問題ないとの診断でした。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

医師からそう言われてもなお不安だった小野さんは、セカンドオピニオンを受けることに。

女性のみが入れる検診クリニックで、マンモグラフィーやエコー検査などを受けます。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

その病院での診断結果は「しこりはあるものの、確実に悪性とまでは言えないので、経過観察」というもの。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

もし気になる場合は、注射針のような器具で組織の一部を採取して調べる針生検という方法もあることを教えてもらい、その病院を後にしました。

セカンドオピニオンを聞いてから半年、しこりの大きさに変化はなかったものの、不安な気持ちはふくらんだままだった小野さんは、針生検を受ける覚悟を決めました。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

セカンドオピニオンを聞いたクリニックで針生検の申し込みをし、検査当日は麻酔をしてから、検査本番です。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

検査自体は麻酔のおかげで鈍痛を感じる程度の痛みで終了。そして検査結果を聞く日がやってきました。
『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

緊張のなか聞いた診断結果は、がんでした。医師からは「このがんは『非浸潤がん』と呼ばれるもので、手術でとってしまえば完治可能」と告げられました。
※後に非浸潤がんではなく浸潤がん(手術をしても完治できるかはわからないがん)であることが判明。

「がん」と診断を受けた小野さんは、悲しみと不安があふれて泣いてしまいましたが、手術の費用や入院の泊数の目安を聞き、手術を受けるための病院を紹介してもらって、クリニックを後にしました。



■「私のような状況の人に読んでほしい」作者インタビュー

――SNSでの投稿がきっかけとなり、電子書籍化が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

小野さん:電子書籍化が決まったときは「もっといろんな人に読んでもらえる! うれしい!」という気持ちでした。もともと、乳がんについての情報や検査の大切さを啓蒙したいと思って漫画を描き始めたので、若い世代の人たちに読んでほしい! という気持ちでいっぱいでしたね。

『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より


――登場人物を動物にしたのは、どんな理由があったのでしょうか?

小野さん:こういう話って、暗く重くなりがちですよね。そこを動物で表現することでポップな印象にして、手に取りやすくしたいなと思ったからです。正直に言うと、単純に人をずっと描くことに自分が面白みを感じなかったから…という理由もあります(笑)。

――検査内容や病院への持参品、受診の過程、手術前の準備や費用などを詳細に描かれていて、とても興味深かったです。そうした内容を盛り込むことにしたのはなぜですか? また、パーソナルな情報を描くことに、ご不安や葛藤などはありませんでしたか?

『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より


小野さん:私と同じ状況の人に参考にしてほしいと思い、細かく描くことにしました。当時は調べても何がなんだか分からない情報が多く「何が必要?」「この後の検査って何が待ってるの?」と不安ばかりでした。そんな人たちのためになるならとパーソナルな情報も描くことにしたんです。



――SNSの投稿や書籍を読んだ読者からの感想・コメントで印象に残っているものがあればお教えてください。

小野さん:印象に残っているのは、同じ乳がんの方や別の婦人科系の病気の方からのコメントですね。また、「周りにもすすめます!」というコメントをいただけたときは、特にうれしかったです。
私と同じ乳がんを患った母の知人もこの漫画を読んでくださり、「励みになった」という感想をいただきました。

『アラサー会社員の乳がんの備忘録』より

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

小野さん:ここまで読んでくださりありがとうございます。この漫画は闘病記という暗いものではなく、「がんになったからこそ気づけた大切なこと」というコンセプトで作りました。私は病気になったから気づけた家族の大切さ、仕事のありがたさ、医療従事者の皆さんの親切さなどを感じ取ることができました。

それから、10月は乳がん月間です。私のように20代でがんになる人もいます。あなたの大切な方に、乳がん検診や乳房の自己チェックを勧めてあげてください。

最後に、もしあなたが今乳がんの告知を受け、真っ暗闇の中にいるのであれば、ぜひこの漫画を読んでみてください。くすっとなる要素も盛り込んでいるので、少しでも元気づけられたら幸いです。

***

小野さんの作品から、「乳がんは早期発見が大切」とあらためて気づかされます。定期的な検診など、自分の健康を守る習慣をつけていきましょう。

取材・文=山上由利子



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