10月27日(日) 4:00
農業を仕事として始めることを「就農」といいます。一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターが実施した、「新規就農者の就農実態に関する調査結果 -令和3年度-」によると、就農時の年齢の割合は、以下の通りです。
●29歳以下:14.3%
●30~39歳:47.2%
●40~49歳:31.6%
●50~59歳:5.0%
●60歳以上:2.0%
最も多い就農年齢は、30~39歳で47.2%でした。一方、最も少ない就農年齢は、60歳以上で2.0%となっています。調査結果から考察すると、定年後に就農する人は珍しいといえるでしょう。
一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターの同資料によると、農業所得の全体平均は178万4000円でした。所得階層は100万円以上300万円未満が31.0%で、最も多くなっています。
しかし、就農後の経過年数ごとに平均農業所得と、最も多い所得階層を比較すると、表1のようになります。
表1
就農からの経過年数 | 平均農業所得 | 最多農業所得階層 | 最多農業所得階層の割合 |
---|---|---|---|
就農1・2年目 | 91万2000円 | 0円 | 29.8% |
就農3・4年目 | 146万4000円 | 100万円以上300万円未満 | 33.2% |
就農5年目以上 | 241万6000円 | 100万円以上300万円未満 | 36.8% |
出典:一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果 -令和3年度-」を基に筆者作成
3年目以降は、「100万円以上300万円未満」が最も多い結果となっていますが、就農初年度や2年目は「農業所得0円」が最も多く、稼ぎが出ていないケースもあることが分かりました。新規就農をする場合、最初は「設備投資や作物を育てるためのお金がかかること」「利益が出にくいこと」を理解しておきましょう。
定年後に就農する場合は、貯金や年金で費用を賄えるか、事前にある程度算出しておくことをおすすめします。
定年退職後に就農する割合は多くありませんが、ある程度貯金に余裕があり、しっかり準備をできるのであれば可能でしょう。自治体によっては、定年後の就農をサポートしてくれるところもあります。
例えば、香川県のホームページでは、「シルバー農業指南書」として、定年後に農業を始めた人が実行した栽培計画の実例を公開中です。栽培目標や、何を作っているのか、種まきや収穫の時期についても確認できます。具体的な内容であるため、不安を感じている家族がいる場合は、こうした実例を見せて安心させるのもひとつの方法です。
また、一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターでは、「農業をはじめる.JP」というサイトで、就農に関するさまざまな情報を公表しています。こうしたサイトを活用すると、自治体や国が実施している支援情報も確認できるため、定年後の就農への手がかりとなるでしょう。
農業を始める年齢としては30代が最も多く、60代が最も少ない結果となっています。定年後に農業を始める方は、多くないといえるでしょう。また就農1年目や2年目には、農業による所得がまったくないケースもあります。貯蓄がない場合は、農業にかけられる経費が足りなくなるでしょう。
しかし、お金に余裕がある場合は、1年目・2年目に収入がなくとも年金と貯金だけで耐えられるかもしれません。自治体によっては、定年後に農業を始めた方の実例を、ホームページなどに掲載しているところもあるため、参考にしてみるのもおすすめです。
なお、農業を始める際は家族にも相談しましょう。多額の出費だけでなく、場所や時間を必要とし、家族の生活に影響を及ぼす可能性があるためです。
一般社団法人全国農業会議所 全国新規就農相談センター 新規就農者の就農実態に関する調査結果 -令和3年度- I 新規就農者の就農実態と展開方向 2.回答者の属性 2)年齢・性別・家族形態 表7 回答者の属性(就農時年齢、性別、家族形態)(13ページ)、4.現在の農業経営の概況 2)就農後の経営内容 (2)販売金額と農業所得の状況 表32 現在の農業所得階層別構成と農業所得(38ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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