10月27日(日) 4:40
生まれる日と死亡する日がお金に関係する理由は、税金の「扶養控除」に関係しています。扶養控除とは、所得税と住民税を計算する際に受けられる所得控除の1つで、課税対象となる所得を減らすことができます。
金額は扶養1人あたり38万円となっており、所得税率が10%(住民税は誰でも一律10%)の人の場合で7万6000円(38万円×20%)の節税につながっています。
扶養控除に該当する扶養親族は、基本的に年収103万円以下の6親等内の血族および3親等内の姻族で生計を共にしている人をいいます。つまり、扶養親族の代表例である子どもや高齢の親であればほとんどが該当するでしょう。
扶養控除を受けるための扶養親族に該当するか否かを判断する基準日は、「年末」または「死亡日」となっています。つまり、子どもは生まれた年分から、扶養していた親が死亡した場合にはその死亡した年分まで扶養控除を受けられます。つまり、年内であればいつ生まれようと、死亡しようと同額の扶養控除が受けられるということですね。
扶養控除は、誕生日、死亡日ともに、年内であれば同額です。しかし、生活費はどうでしょうか? 人は生きている間は食費をはじめとして何かしらお金がかかります。
要するに、2024年の1月1日に死亡しても、12月31日に死亡しても節税額は同じであるのに対して、生活費は約1年分違います。不謹慎な話ではありますが、お金の計算上の話だけで言えば、生活費に100万円かかったとすると、1月1日に死亡した場合より、扶養控除を差し引いた約90万円の損になるということですね。誕生の場合にはその反対です。
「遅く生まれて、早く寿命を迎えるほうがお得」というのは、そういう意味なのです。
ただ、「遅く生まれて、早く寿命を迎えるほうがお得」というのは少し古い言葉です。2024年の現在、16歳未満の子どもに対する扶養控除が、児童手当の支給開始にともなって2010年に廃止されています。そのため、現在は遅く生まれても得になりません。
税金の扶養控除は、誕生の場合は誕生日が属する年、死亡の場合には死亡日が属する年に適用されるため、その年のうちであればいつであろうと控除額は同一になります。
よって、子どもが誕生した場合であれば、まだ生活費がほとんどかかっていない年末、死亡の場合は反対に年始のほうが、扶養控除の費用対効果が大きくなります。「遅く生まれて、早く寿命を迎えるほうがお得」と言われていたゆえんです。
ただし、2010年に16歳未満の扶養控除は廃止されていることから、現在は遅く生まれても得にならないということを覚えておきましょう。
国税庁 No.1180扶養控除
国税庁 源泉所得税の改正のあらまし
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士