10月26日(土) 8:30
<ZOZOチャンピオンシップ2日目◇25日◇アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブ(千葉県)◇7079ヤード・パー70>
最終9番のグリーン横でハッとした表情で立ちすくみ、観客からの拍手に笑顔を見せたのは、2020ー21年シーズンに国内ツアーで賞金王に輝いたチャン・キム(韓国)だ。「強く打ちすぎてしまって。ラッキーだったね」とエッジからおよそ9メートルをパターで入れてバーディフィニッシュ。大歓声に包まれた。
キムは、2014年のQTで1位となり15年から国内ツアーに参戦。17年には年間3勝を挙げて賞金ランキング3位、18年は左手首骨折で1年間試合に出ることができなかったが、19年の「日本オープン」で涙の復活優勝。翌シーズンは賞金王、22年は「カシオワールドオープン」でトータル32アンダーとツアー記録を更新する勝利を挙げるなど日本ツアーで大きな存在感を見せてきた。
23年シーズンは米下部のコーン・フェリーツアーを主戦場に戦い、年間2勝を飾り年間ポイントランキングで2位に入り、PGAツアーに昇格。今年の主戦場は“念願”の舞台となった。今大会は日本で唯一開催されている米ツアーで、キムが日本で戦うのは昨年の「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」以来となった。
「このコースは大好きで、4回目。日本のコースで嫌いなところはない。グリーン、コースコンディションはいつもすばらしいし、日本でプレーするのも好き」と日本という国への愛があふれる。「きのうスタートするときも、まだみんな僕のことを覚えてくれていた。とてもうれしかったし、グッときた。そしてやっぱり食べ物がいいよね。食べることが好き(笑)」と日本のファンの声援、堪能している食事など、久しぶりの来日を満喫している。
初日がイーブンパーの「70」、2日目は1イーグル・2バーディ・1ボギーの「67」とスコアを伸ばして順位も浮上。トータル3アンダー・31位タイで週末へ進んだ。この日、パーオンを外したホールは18ホールのうち4回とショットは悪くなかったが、グリーン上ではあと一筋…の繰り返し。前半はバーディなしの1ボギーと苦しんだ。
「パットは今年ずっと苦しんでいるんだ。PGAツアーのピン位置はタフだからね。いいリズムに乗れれば、いい感じでいけると思うんだけど」。今大会のピンポジションは基本的に端に切られていることが多く、段や傾斜が目立ち高速グリーンは選手たちを苦しめている。とくにパッティングが不調だったキムは、ことごとくここでやられていた。
しかし、後半の6番パー5で流れを変える一打があった。ほぼ直角に曲がる右ドッグレッグのホールで、ティショットを右の林スレスレに「コーナーを狙ってフェード」で攻めた。「(風が)アゲンストだったので、突き抜けてラフに行かなかった」とファーストカットに残ったチャンスで、2打目はしっかりとグリーンを捉えた。
「そこまでパットが入っていなかった」というなかで、およそ10メートルのイーグルパットを沈める。「あれが入って流れがよくなったね。7番もいいショットが打てたし、8番、9番もバーディ」と上がり3ホールでさらに2つスコアを伸ばし、気持ちよく2日目を終えた。
今季は米ツアーで26試合に出場し、トップ10入りが3回。レギュラーツアーはシーズンが終了し、フェデックスカップランキング94位で終えて、来季のシード権獲得の125位以内に入っている。「スタッツを見ると、パットが全体150位台。ほかは悪くないんだ。だから、そこを改善して、もう少しいいプレーヤーになって、優勝できればいいね」と苦戦したパッティングの修正が一番の課題は承知の上。ここで一気に不安払拭といきたいところだ。
今大会はフェデックスカップランキング51位以下の選手たちが、来季の出場権をかけて順位を維持、または上げることを目的に戦うフェデックスカップ・フォールの8つの試合のうちの1つ。最終戦「ザ・RSMクラシック」が終了した時点でランキング51~60位に入った選手は、来季シグネチャー大会の2試合「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」と「ジェネシス招待」の出場権を獲得できる。
現在はフォール初戦の「プロコア選手権」から4試合を終えて同97位となっている。「今週が終わって、もし(逆転で60位内が見える)70位台に近かったら、残り3試合も出るけど、基本はこのあと親戚がいる韓国に行って、来年はソニー・オープンから出る予定」と今大会の結果によってスケジュールが変わる可能性もある。出場人数が少ないシグネチャー大会に出場を果たすためにも、まずは順位を上げるために残り3試合をどうするか。まずはジャンプアップを目指し、残りの2日間に挑んでいく。
「きょうはショッピングに行きたい。妻がドン・キホーテが好きなので、ほかの選手も誘って何人かで行こうかな」と意外な予定も明かす。「安いからお気に入りの洗顔料を買う予定だよ(笑)」とキムもそこで買い物することが楽しみ。リラックスムードで臨む大好きな日本でのラスト2日。ショットの調子が悪くないからこそ、復調の兆しを見せたパッティングでさらに順位を上げて行きたい。(文・高木彩音)