10月26日(土) 12:00
11月にリバイバル公開されるグレッグ・アラキ監督の『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』の本編映像が公開された。
アラキ監督は、ゲイであることをオープンにし、一貫してティーンエイジャーを主人公に同性愛者のリアルライフを描いてきた。異性愛を常識とする当時の概念や、それを支えてきた映画のあり方に対抗した90年代の〈ニュー・クィア・シネマ〉ムーブメントを牽引し、インディカルチャーの旗手としても知られている。
今回上映されるのは、1995年製作の『ドゥーム・ジェネレーション』と1997年製作の『ノーウェア』のデジタルリマスター版。『ドゥーム…』は「異性愛映画を撮ったら制作予算をあげよう」というプロデューサーからの提案を受け、表向きは“異性愛映画”としつつも“史上最もクィアな異性愛映画”に挑んだ監督の反骨精神あふれる1作。監督が「最も野心的な作品」と語る『ノーウェア』は、ジェットコースターのようなスピード感で若者たちの“終末の日”の一夜を描いている。
このほど公開されたのは、『ドゥーム・ジェネレーション』のワンシーン。ジョーダンとエイミー、そしてふたりに助けられたグザヴィエは、あるトラブルに巻き込まれコンビニエンスストアの店長を殺め、あてのない旅に出る。トラブル続きの逃避行の中、モーテルの部屋でジョーダンとエイミーは重なって寝ころぶ。ジョーダンが「すごく心地いい。引き出しの中で重なるスプーンの気分だ。同時に死にたいな」とささやけば、エイミーは「ロマンチックね」と返す。しかし、なぜかジョーダンは「本気で言ってる。君を失いたくない」と告げる。ふたりの未来に忍び寄る影を感じさせる場面だ。
一方でグザヴィエは、同じ部屋の湯船に浸かりながら酒を飲んで歌っており、ジョーダンとエイミーはグザヴィエの存在を忘れたように情熱的なキスを交わす。市松模様のタイルに囲まれた奇妙な部屋、暗闇に鈍く光る人工的なネオンの光など、印象的なカットが続く映像だ。
本作を「“ドラッグの悪夢の旅“のような、突飛でシュールなものにしたかった」というアラキ監督は、デイヴィッド・リンチ作品のような悪夢的な光景を描く一方で、『理由なき反抗』や『地獄の逃避行』などのエッセンスも盛り込んだという。
それまでのアラキ作品はすべて監督自身が撮影を手がけてきたが、本作では後に『スプレンダー/恋する3ピース』でもタッグを組むジム・フィーリーが撮影を担当。全編が35ミリフィルムで撮影され、監督の目指すビジョンが鮮烈なタッチで描き出される。
『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』本編映像
<作品情報>
『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』
11月8日(金) 公開
(C)1995 UGC and the teen angst movie company
『ノーウェア デジタルリマスター版』
11月15日(金) 公開
(C)1997. all rights reserved. kill.