10月26日(土) 4:30
基本的な話ではありますが、車に限らず損害保険を使う場合は保険を使う前の状態に戻す、いわゆる「原状回復」が原則となります。
これは、自損事故やもらい事故に関係なく、損害を被ったとき、時価額を上限として損害賠償を受けられるものです。そのため、車両保険を使う際はディーラーや自動車整備工場などで「事故前の状態に車を修理して戻す」ことを前提として保険を使用することになります。
前段で紹介したことは、あくまでも原則となります。今回の事例のように「200万円もらった」というのはどのようなケースなのでしょうか。筆者のディーラー勤務時代の経験も踏まえていくつか事例を紹介します。
必ずしも車を修理しなくてもいい条件の1つに、「盗難による損害」などによって車が手元からなくなってしまったケースが考えられます。車両保険では加入条件によって盗難による損害が補償されます。
その場合は車の車両保険金額を上限として、保険会社から現金を受け取ることが可能です。なお、保険金受け取り後に車が見つかった場合は、見つかった車は保険会社の所有物として扱われることになります。
筆者のディーラー勤務時代の経験談ではありますが、事故などで車が故障してしまった場合に、故障車を修理せずに車の買い替えを提案することがあります。
例えば、事故の修理費が50万円だった場合、保険会社との協定(損害額の確定)が取れれば、その金額を受け取ることができます。これと事故状態で算出した下取り価格を頭金として車を買い替えることも可能です。
大きな事故を起こしてしまって車をしばらく運転したくない、ということになると車を手放すことになります。その際に車を事故車のまま売却して、保険会社との協定が取れた保険金額を受け取ることができます。
車両盗難時の話で触れましたが、事故などで全損となった場合は保険会社に車の所有権が移る可能性があります。また、年式が新しい時に加入できる「車両新価特約」を使う際も、新車と同等額の保険金を受け取る代わりに車を保険会社に引き渡す必要があります。
車を引き渡す前に取り外しておきたいパーツなどがある場合は、保険会社と協議してから取り外す必要がありますので注意しましょう。
自損事故あるいは盗難、災害による水没などで車両保険を使用する場合、自動車保険を更新した翌年度以降の保険料が上がります。自損事故で保険を使った場合は、翌年度保険等級が3等級下がり、盗難や災害などの偶発的な損害の場合は1等級下がるため注意が必要です。
等級が下がった場合の保険料は、保険会社でシミュレーションしてもらえますので、修理費と上がる保険料を比較した上で保険を使うかどうか検討しましょう。
車に限らず、損害保険は掛け捨ての保険ではありますが、万一の時に高額な出費を抑えられる頼りになる存在です。保険料の出費を抑えることも大切ですが、高額な修理費を現金として受け取ることもできますので、しっかりと備えておきましょう。
執筆者:宇野源一
AFP